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「110万円の現金贈与」をした/された人が知っておきたい贈与のおはなし

2026年2月16日

「将来のことを考えて、今のうちから子や孫に財産を残してあげたい……」とお考えの方も多いのではないでしょうか。「年110万円までは贈与税がかからず、申告も不要」とはよく知られていますが、贈与にまつわる2つの制度を知っておくと、選択の幅がより広がります。

贈与税の申告で選択できる2つの制度「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」

相談事例

令和7年中に、私(70歳)は長男(46歳)と孫(15歳)に110万円の現金を贈与(預金口座へ振込)しました。本人たちと話をし、念のため贈与に関する書類も取り交わしてあります。今後も少しずつ贈与していきたいと考えているところです。

ところで、長男から「年110万円までの贈与だから、贈与税の申告とかは特に要らないよね」と確認されたのですが、どうですか。

回答

年間110万円以内の基礎控除の範囲内であれば贈与税の申告義務はありませんが、選択可能な2つの申告制度をご紹介します。

暦年課税制度

一般的によく知られるもので、1年間(1月1日から12月31日まで)の贈与金額に比例して累進税率(10~55%)が適用される制度です。贈与する人(贈与者)や贈与される人(受贈者)について、特段の要件等もありません。

相続が発生した時には、相続開始前7年以内に贈与により取得した財産(基礎控除の範囲内を含め、相続開始前4~7年以内の贈与財産については100万円を控除)は相続財産に加算(=「持ち戻し」)しなければなりません。

図表1 暦年課税制度のイメージ
基礎控除 年110万円以下なら贈与税申告は不要
 
相続開始前4年~7年以内に贈与された財産
→ 総額100万円まで相続財産への加算対象外
 
相続開始前3年以内に贈与された財産
→ すべて相続財産への加算対象
 
相続発生時に相続財産へ加算

※令和6年1月1日以後の贈与を加算

相続時精算課税制度

原則として、①贈与者が60歳以上②受贈者が18歳以上の子・孫等の場合に利用できる制度です(年齢はいずれもその年の1月1日で判定)。受贈者が、贈与の翌年2月1日から3月15日までに税務署長に選択届出をした場合に利用できます(一度選択したら暦年課税制度に戻れません)。

毎年110万円の基礎控除に加え、生涯で2,500万円の特別控除が設けられています。基礎控除の範囲内、かつ特別控除の範囲内であれば贈与税が発生しません。基礎控除額・特別控除額を超えた額に、一律20%の税率で計算した贈与税がかかります。

将来相続が発生した場合、相続時精算課税制度を適用した年分以降に贈与された財産を相続財産に加算するとともに、相続税額からすでに支払った贈与税額を差し引く(精算する)仕組みとなっています。なお、同制度を利用した場合には、基礎控除内の贈与財産額は将来の「持ち戻し」の対象にはなりません。

図表2 相続時精算課税制度のイメージ
基礎控除 年110万円以下なら贈与税申告は不要
 
基礎控除額の控除後、累計2,500万円までの贈与であれば贈与税は非課税
 
相続発生時に相続財産へ加算
(ただし基礎控除110万円以下の部分は加算対象外)

アドバイス

将来的にも110万円以内の贈与を続けていきたいとお考えであるならば、ご長男は「相続時精算課税制度」の選択を視野に入れると良いかもしれません。

一方、お孫さんは、推定相続人ではありませんので、「暦年課税制度」のままでいかれると良いかもしれませんね。

とはいえ、どちらの制度を利用したら良いかについては、状況によって答えは変わってきそうです。金融資産に余裕があるかどうか、財産の値上がりや値下がりの可能性など考慮すべき事項は意外にたくさんあります。慎重な検討が必要となりますので、ぜひ当事務所へご相談ください。

2つの制度の比較表

項目 暦年課税制度 相続時精算課税制度
届出の必要性(受贈者が提出) 届出は必要なし
贈与税額が発生した時は申告が必要
相続時精算課税選択届出書の提出が必要(一度提出したら暦年課税制度には戻れない)
基礎控除・特別控除 毎年110万円 基礎控除として、毎年110万円
基礎控除を超えた分は累計2,500万円の特別控除
税率 10%〜55%の累進税率 一律20%
贈与の適用可能者 誰から誰でも可能 60歳以上の父母・祖父母等から18歳以上の子・孫等(直系卑属)に限る
相続発生時の贈与財産の取り扱い 相続開始前7年以内の贈与財産を相続財産に加算(基礎控除額以下であっても加算)。ただし相続開始前4~7年の間の贈与財産については、100万円を控除 制度を選択した年分以降すべての贈与財産を相続財産に加算。ただし各年110万円の基礎控除額以下であれば加算の必要なし
相続税の計算における贈与税額の取り扱い 加算対象期間分の贈与税額は相続税額から控除(ただし還付にはならない) 支払った贈与税の全額を相続税額から控除(還付もあり得る)

※令和6年1月1日以後の贈与を加算