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貸借対照表(B/S)の「資産の部」に表示される固定資産。このうち、長期的な保有を目的とした資産は「投資その他の資産」に区分されます。ここに表示されるものはすぐに現金化しにくいため、資金繰りや事業承継に影響を及ぼすことも。年1~2回は中身をチェックしましょう。
貸借対照表(B/S)の「固定資産」は、目に見える「有形固定資産」(建物、機械、土地など)、目に見えない「無形固定資産」(ソフトウェア、借地権、特許権など)、そして「投資その他の資産」に区分されます。
「投資その他の資産」は、長期間の保有を目的とした資産をまとめたもので、具体的には、次のようなものが該当します。
「投資その他の資産」の例
- 投資有価証券(長期の資産運用を目的として保有する株式、国債、社債、投資信託等)
- 子会社・関係会社株式
- 出資金
- 敷金・保証金
- 長期貸付金
- 長期前払費用
- 保険積立金
- 投資不動産
- リゾート会員権・ゴルフ会員権
- 破産債権・更生債権
これらの資産は、会社の本来の業務とは直接には関係しない資産であり、将来のために保有している資産といえます。そのため、「資産」とはいえ、「すぐに現金化するのが難しい(=流動性が低い)」という特徴があります。
資金繰りのことを考えれば、「すぐに現金化して使うことのできる(=流動性が高い)」資産、例えば「現金」「預金」「売掛金」などが多い状態が理想です。
ところが、「投資その他の資産」に区分される資産が多いと、いざというときに現金化できず、資金繰りが苦しくなってしまういわゆる「凝り固まった」B/Sになっているといえます。
「投資その他の資産」は、原則として取得価額で計上します(名義変更料や登録料も含まれます)。株式や不動産等を長い間保有している間にその価値(市場価値)が下がってしまい、多額の「含み損」が発生していることがあります。
特に、バブル期に取得した投資用の不動産やゴルフ会員権がある場合などは注意が必要です。経営上、大きな影響がない資産であれば損失の計上を見込んで売却することも検討しましょう。
一方で、保有している間に価値が上がった資産がある場合、「含み益」が発生します。含み益がある資産を保有していることは経営上の安心材料の1つであり、含み益を有する資産の評価をもとに金融機関から融資を受けられるなどのメリットもあります。
ただし、あくまで未実現の利益であり、結局、売却しない限り現金にはなりません。時価が常に変動する株式等は、含み益が一転して含み損になることもあります。現金化するタイミングを逃してしまい、資金繰りが苦しくなってしまうケースもあるのです。
また、相続の際には、取得価額から時価に評価し直して自社株式を評価するため、自社株式の評価額が高く計算され、その結果、後継者(相続人)の税負担が多額になる可能性があります。自社株式の評価を定期的に行い、計画的な贈与や譲渡、「特例事業承継税制」の適用も検討してみると良いでしょう。
「投資その他の資産」に区分されるものは頻繁に取引されるものではないため、見落としがちなところでもあります。自社のB/Sの「投資その他の資産」の状況を、次の視点からチェックしてみましょう。
「投資その他の資産」をチェック!
□経理処理は適切か?
→資産計上すべき金額は税法にも規定されているので注意しましょう。□本当に必要な資産か?
→価値が大きく下落した資産や過大な投資は、整理・売却を検討しましょう。□すぐに現金化できるか?
→いざというときに売却等ができるかが重要です。□含み損が出ていないか?
→放置せず、処分等も検討しましょう。含み益を過信していないか?
→価値が下がるリスクも考慮しましょう。□回収可能性はあるか?
→債権は、実際に回収できるか確認を。
企業が保険契約をする際、契約内容や支払方法に応じて、経費になる部分は「保険料」または「厚生費」、経費にならない部分は「保険積立金」または「長期前払費用」で処理します。保険契約の内容によって、税務上の取扱いが異なあるので注意が必要です。
①保険積立金
養老保険終身保険など貯蓄性のある保険の場合、契約時に支払った保険料のうち、貯蓄性のある部分を「保険積立金」として資産計上し、特約など損金算入できる部分は「保険料」「厚生費」として処理します。
②長期前払費用
長期契約で一括して保険料を支払う損害保険(火災保険など)の契約時に支払った保険料は「長期前払費用」として資産計上し、期間ごとに費用配分して、「保険料」として処理します。また、保障が長期にわたって続く定期保険の生命保険料は、その契約期間や加入者の年齢等によって損金になるかどうかが変わります。損金にならない場合は「長期前払費用」として処理します。