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貸借対照表(B/S)の「純資産の部」は、普段の経営であまり意識することは少ないかもしれませんが、会社の健全性・安定性が分かるため定期的な確認が必要です。「資本金」と「利益剰余金」、そして、「自己資本比率」についてあらためて確認してみましょう。
貸借対照表(B/S)の「純資産の部」には、「創業から今までの、会社のあゆみ」が数字として表れています。いわば、会社の「年輪」のようなもの。その積み重ねた年輪が、「自己資本」です。自己資本は、同じ貸方の「負債の部」で示されている他人資本(借入金等)とは異なり、返済が不要な資金で、主に「資本「金」と「利益剰余金」とで構成されます。自己資本がどれくらいあるか、その構成はどうなっているか、定期的にチェックしましょう。
「資本金」は、会社の資産の基礎となるものです。会社を設立した時の、株主による金銭出資と現物出資で構成されます。
資本金については、会社に株主名簿が備えられているかどうかを確認しましょう。また、増資や減資によって資本金の金額が変動した場合や、自社株式の贈与・譲渡によって株主および持株比率に変動があった場合などは、その都度、株主名簿を最新にしておきます。
この株主名簿は、法人税の確定申告書の別表2「同族会社等の判定に関する明細書」に株主等の株式数の明細として記載し、毎年、税務当局に提出することになっています。そのため、決算前に確認する習慣をつけましょう。
社歴の長い会社の場合、かつての発起人がそのまま株主名簿に載り、いわゆる「名義株」として残っている場合があります。株主名簿に名義株の記載がある場合には、まず、その経緯を確認するとともに、名義人の合意を得た上で、本来の出資者へ株を異動させるなどの対応が必要になります。
「利益剰余金」は、創業から現在までの「税「引後の当期利益」の累計額を表します。「その会社の利益を稼ぎ出す力の累積」と見ることもできます。この利益剰余金を「期数」で割ると、その会社の平均的な年間利益創出額を確認できます。
例えば、創立20年目の会社で利益剰余金が6,000万円だった場合、その会社の平均的な年間利益創出額は300万円となります。今期の税引後当期利益が200万円だった場合、今期は平均を下回る利益だったというように、「平均年間利益創出額との対比」をすることで、今期がどんな年だったかを振り返ることができます。
赤字が続けば、利益剰余金はマイナスとなり、そのマイナス分が資本金の額よりも多くなった場合、いわゆる債務超過の状態となります。債務超過に陥ると、金融機関等からの資金調達が難しくなってしまいます。
総資本に占める自己資本の割合を示したものが「自己資本比率」です。自己資本比率は、「財務の健全性」「経営の自由度」をはかる、重要な指標の1つです。自己資本比率が高いことは、他人資本(借入金等)に頼らずに事業を運営できていることを表します。景気や金利上昇、災害など、予期せぬ経営環境の変化にも対応できることから、突然の倒産リスクもぐっと低くなります。また、借入金の返済に右往左往しなくて済む状態なので、生み出した利益(資金)を設備投資や事業に回すなど、新たなチャレンジに活用することも可能です。業種や企業規模等によって異なりますが、自己資本比率の一般的な目安は次の通りです。
50%以上:非常に安定
30%以上:健全
10%未満:経営改善が必要
中小企業の場合、自己資本比率を高めていくには、何よりも、黒字決算を実現し、税金を納めて、利益剰余金を積み上げていくこと一が王道です。
特に社歴の長い会社の場合、「赤字でも金融機関は融資してくれる」として、不動産や有価証券の含み益に頼っているケースも少なくありません。ただし、そのような「含み益頼「みの経営」では、いずれ、それらの資産を売却しなければ借入金の元本返済の目途が立たなくなってしまいます。
「含み益があるから」と安心せずに、早いうちから、自己資本比率を高める経営にシフトすることが重要です。