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経理の「?」を「!」に ― 支払時に「一括費用計上」できるものは?

2025年7月21日

日々の業務の中で生じる、経理処理にまつわる迷いやギモン、誤解についてあらためて確認していくシリーズです。今回のテーマは「短期前払費用の特例」。一定のルールのもと、支払時に一括して費用計上が認められるものを「短期前払費用」といいます。

「支払いから1年以内のサービス提供」なら一括して費用計上が可能

費用計上のルールは、「今期の費用は今期に、来期の費用は来期に」が原則です。
そのため、翌年分の地代家賃や火災保険料、保守点検料の前払いのように、期末においてまだ提供を受けていないサービスに対する支払いについては、原則として、支払った期の費用とせずに「前払費用」として計上し、翌期以降、サービスの提供を受けた時に費用計上します。
ただし、例外として、支払った日から1年以内にサービスの提供を受ける費用(短期前払費用)については、支払った期に一括して費用計上することができる「短期前払費用の特例」があります。
本特例の適用には、以下の要件をすべて満たす必要があります。

法人が、
①前払費用の額で、
②その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、
③その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているとき

※一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当期期末においてまだ提供を受けていない役務に対応するもの

税務上この制度は、企業会計において重要性が乏しいものは簡便な経理処理が許容される「重要性の原則」と同様の考えとされています。

したがって、その法人の事業に必要な、「重要な費用」は対象とはなりません。また、定の契約に基づき毎期継続して適用する必要がありますので、「利益が出たので、当期だけまとめて1年分のみ支払い、継続はしない」といった、利益調整とみられるような支払いには適用できません。
国税庁タックスアンサー「No.5380短期前払費用として損金算入ができる場合」(令和7年5月1日現在)

事例で確認!「短期前払費用の特例」を適用できる・できないケース

実務では、「短期前払費用の特例」の適用可否について注意すべきケースがありますので、事例で確認しておきましょう。

Case①自動車のリース料(1年分)の前払い

【設例】
・7月決算法人(中小企業)
・5年契約の営業用自動車のリース(オペレーティング・リース)について向こう1年分(7月から翌年6月)のリース料48万円を7月下旬に前払いして、「リース料」として処理した。

【キホンの考え方】
継続的に1年以内に受けるサー考え方!ビスのための支払いであるといったことから、翌期以降の継続適用を条件として、「短期前払費用の特例」を適用して、支払った期(当期)に一括で費用処理することが可能です。

Case②毎月の事務所家賃の処理

【設例】
・3月決算法人
・事務所家賃は毎月、月末に翌月分を支払っており、支払時に、「地代家賃」として処理している。3月末に支払った翌月分(4月分)の家賃についても、当期の「地代家賃」として費用処理した。

【キホンの考え方】
原則として、3月に支払った翌考え方!月分の家賃は、翌期の費用であるため「前払費用」とする処理が求められます。ただし、支払時に「地代家賃」とする処理を継続して適用しているのであれば、当期に費用処理することが認められています。

Case③事務所の火災保険料(3年分)の前払い

【設例】
・5月決算法人
・事務所の建物について、5月から3年間の火災保険契約を結び、3年分の火災保険料30万円を5月に前払いし、全額を当期の「支払保険料」として処理した。

【キホンの考え方】
1年を超えた期間である3年分考え方!の火災保険料を全額前払いしているので、支払時に全額を費用処理することはできません。
その火災保険料は3年間にわたって費用処理する必要があり、当期は1か月分だけ「支「払保険料」として費用処理します。

Case④複合機の保守点検料(年額)の前払い

【設例】
・7月決算法人
・事務所の複合機(事務機器)の保守点検契約(3年間)を結び、翌期の8月から翌年7月までの保守点検料6万円を6月に前払いして、当期の「修繕費」として処理した。

【キホンの考え方】
決算月でない6月に前払いした保守点検料は、8月から翌年7月までの1年間分のものであり、支払った日から1年を超えて提供されるサービスとなるため、「短期前払費用の特例」を適用することができません。当期は「前払費用」として処理し、翌期に費用処理することが求められます。

Case⑤経営セーフティ共済の掛金の1年分前納

【設例】
・7月決算法人
・5月に経営セーフティ共済に加入し当期分の掛金30万円を支払い、決算月に翌期分(8月から翌年7月分)の掛金120万円を支払い、全額を当期の「支払保険料」として費用処理した。

【キホンの考え方】
経営セーフティ共済の掛金は、考え方!「短期前払費用の特例」規定とは別に、掛金を支払時に費用計上できる特例措置があります。ただし前納期間が1年以内の場合に限り認められています。そのためこの設例では、全額費用処理が認められます。

※(独)中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業の基金に充てるための共済契約に係る掛金。