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経理の「?」を「!」に―請求書があれば「費用」にできる?

2025年6月16日

自社の経営状況を適切に把握するために重要な、日々の記帳。でも、毎日の業務の中で、処理の仕方を迷ったり、疑問を抱いたり、中には誤解していたりすることもあるのでは?「適時正確な
記帳」のためにいま一度確認してみましょう。今回のテーマは「費用」です。

費用計上のルールは「今期の費用は今期に、翌期の費用は翌期に」

請求書が届いた時に、「今期の日付だから、今期の費用だ」と考えて、すべて今期の費用として処理してしまったことはありませんか?

実は、費用計上には一定のルールがあります。もう一度確認してみましょう。
そもそも「費用」とは、収益を得るために発生する支出のことを指します。そのため、一定期間の収益とその費用は必ず対応させること、また、発生した期間に正しく割り当てられるように処理することが求められます(費用収益対応の原則)。つまり、「今期の費用は今期に、翌期の費用は翌期に」が費用計上の大原則なのです。
加えて、「いつ費用にできるか」というタイミングには、税務においても一定のルールがあります。これは、「課税の公平性」の観点から、「利益が出たから今期だけまとめて1年分支払う」といった利益操作のための支出や収益との対応期間のズレがないようにするためです。

税務上の費用は「損金」といい、例えば、売上高を得るために直接要する費用(売上原価)は、売上に対応する分だけが損金として計上できます。
そのため、仕入の額から期末の棚卸高を除いた額が売上原価になります。販売費や一般管理費その他の費用は、減価償却費や引当金繰入額等を除き、「当期中に債務が確定しているもの」が損金に計上できます。

「当期中に債務が確定しているもの」とは、決算日までに、次のすべての要件を満たしているものをいいます。

1.その費用に係る債務が成立していること(注文や申込等を行っていること)
2.具体的な給付をすべき原因事実が発生していること(役務の提供を受けていること
3.金額が合理的に算定できること(請求書等で金額が分かること)

例えば修繕費の場合、建物等の修繕を発注し、修理業者による修繕が完了し、かつその金額が客観的に確認でき得る状況にあれば、上記の3つの要件を満たしているため、代金を支払っていなくても「未払金」等として計上することが可能です。

事例で確認!誤りやすい「費用」の処理

「費用」を認識するタイミング等で、誤りやすいケースを確認してみましょう。

Case1.社員向け通信講座の支払処理

【設例】
・3月決算法人
・4月に入社する新入社員向けの通信講座を3月に申し込み、支払も行った。支払処理をする際、全額を支払時(3月)の「教育費」とした。

―キホンの考え方
3月中に「役務の提供」を受け考え方!ていないので、当期中の費用とすることはできません。したがって、当期は「前「払費用」等として処理する必要があります。

Case2.決算月に購入したタブレットPCの処理

【設例】
・3月決算法人
・決算対策の一環として、決算月である3月に新しいタブレットPC(8万円)を10台購入し、「消耗品費」として処理した

―キホンの考え方
「少額の減価償却資産」に該当す考え方!る取得価額10万円未満の資産の購入は、原則として、その取得価額の全額を「消耗品費」として費用計上することが可能です。ただし、そのタブレットPCを、当期において「事業の用に供した」、つまり実際に業務に使用していなければなりません。
梱包されたままの未使用の状態で、実際に業務に使用したのが4月以降の場合には、「貯蔵品」として翌期に繰り越す(当期の費用としない)ことが必要になります。

Case3.機械を購入した際の運賃の処理

【設例】
・6月決算法人
・中古の機械を同業者から100万円で購入し、代金は同業者に振り込んだ。現物が搬入された際、運送会社から「6月25日」付の引取運賃として15万円の請求書を受領した。この運賃について、「(借方)運賃/(貸方)未払金」で処理した。

―キホンの考え方
固定資産の購入に伴う引取運賃考え方!等の付随費用は、固定資産の取得価額に加えなければなりません。そのため、この設例では「(借方)機械装置/(貸方)未払金」が正しい仕訳です。
なお、購入した機械の実際の稼働が翌事業年度の場合、減価償却費の計算は「事業の用に供した日」からとなります。

【参考】現金主義と発生主義―経営の「いま」を知るために

費用計上の原則の1つに、「発生主義」があります。発生主義とは、商品の受取・購入などモノの動き(取引)を基に計上記帳)する考え方です。一方で、現金の動き(入出金)を基に計上する考え方が「現金主義」です。

現金主義のほうが一見分かりやすいように見えますが、現金主義の場合には、現金の動きがあって初めて記帳すあるため、支払が済むまでどの収益に対応した費用なのかが分からない(適正な損益が把握できない)というデメリットがあります。その点、発生主義では取引事実に基づいて費用計上するため、その収益に対して「いつ・何にどれだけの費用がかかったか」を正しくつかむことが容易になります。
経営の「いま」をきちんと把握するためには、発生主義で費用計上することが重要です。

1.現金主義では、現金を支払った時点で記帳。
2.発生主義では、取引事実が発生した時点または請求書到着時点()で記帳。支払等の完了時点であらためて記帳。