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「健康」な会社の貸借対照表(B/S)は、資金が潤沢で自己資本が充実しており、人の身体に例えるど筋肉質」といえます。黒字経営によって利益を内部留保し、筋肉質の会社をめざしましょう。
事業を円滑に進めるため、あるいは設備投資を行うためには資金が必要です。資金を増加させる方法は次の3つです。
①資本金を増やす(増資する)
②金融機関等から借り入れる
③黒字決算によって利益を内部留保する
①資本金を増やす方法は、自社への出資者がいなければならず、出資者からは出資の見返りとして配当を求められることになります。
多くの中小企業は、②金融機関等から借り入れる、③黒字決算によって利益を内部留保するの方法によって資金を増やすことになります。
ただし、②については、利息を含めた元本返済が必要なため、月々の返済額が多ければ資金繰りが苦しくなります。また、金融機関は返済能力を重視しており、返済が約定通りにできる(=信用のおける)会社でなければ、融資を受けることすら難しくなっています。役員個人からの借入れも考えられますが、その財源には限度があります。
こうしたことから、③黒字決算によって利益を内部留保する方法が、もっとも確実に資金を増やす方法になるといえるのです。
経営者の中には、「税金を払いたくない」との理由で、接待交際費や役員報酬を増やして収支トントン」としたり、「利益(黒字)=法人税等の納税あり」「赤字=法人税等の納税なし」と安易に捉えて「赤字のほうが得」と考えたりする方もいることでしょう。しかし、赤字経営は、確実に赤字分の資金を社外に流出させ、資金繰りに追われる経営に陥ります。
中小企業の法人実効税率は約30%ですから、利益の中から3割を納税しても、残った7割を資金として残すことができます。そのため、「収支トントン」よりも、「利益を出して納税できる経営」をめざすことが重要です。
黒字決算によって利益を計上し、法人税等の納税を行ったあとの利益部分が内部留保となり、返済不要な自己資本(BIS上の純資産)として、蓄えられることになります。黒字決算を続けて内部留保を増やすことで会社の資金は潤沢になります。
自己資本が充実すれば、借入金への依存度が小さくなり、会社の財務が安定します。経済の急激な変化や、パンデミック・災害のような危機への対応力も向上します。借入れによる資金調達をせずに設備や新事業への投資のほか、昇給など従業員の処遇改善に使うことも可能になります。
総資本(負債+純資産)に占める純資産の割合を示す自己資本比率は、30%以上が理想です。『令和6年版TKC経営指標(BAST)』によれば、全産業における黒字企業平均は45.5%になっています。
「筋肉質」の会社のBISは、流動資産(特に現金預金)や自己資本が大きく、自己資本の範囲内で固定資産を保有できており、資金繰りも安定してバランスの良い状態といえます。資産の中にも不良債権、不良在庫、不要な機械設備、含み損を抱える資産等がなければ、いわば「健康体」です。
一方で、固定資産が固定負債(長期借入金等)と純資産(自己資本)の合計を超えて大きく膨らみ、それに伴って流動負債が流動資産を大幅に上回っているような状態であれば、「不健康」な会社といえます。資金繰りが不安定で、自己資本の割合も小さいため借入金に頼らざるを得ない経営となっています。加えて、滞留売掛金等の不良債権、不良在庫、遊休設備、含み損を抱える資産等の不良資産を抱えていると、実質的な債務超過になりがちです。そうなると金融機関からの信頼度は低下し、新たな借入れも難しくなってしまいます。
まずは自社のB/Sをチェックし、課題があれば改善しましょう。その上で、自己資本が充実した「筋肉質」の会社をめざしましょう!