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5月から6月にかけては、季節の変わり目とも相まって、メンタルヘルスの不調を訴える人が多くなるシーズンです。1人ひとりの従業員に本来の力を発揮してもらうには、企業におけるメンタル面での健康を守る取り組み(メンタルヘルスケア)が大切です。
メンタルヘルスケアとは、すべての働く人が健やかに、いきいきと働けるような気配りと援助をすることと、その活動が円滑に実践される仕組みづくりのことをいいます。厚生労働省が行った「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、直近1年間にメンタルヘルス不調による従業員の退職または1か月以上の休職があった企業等は13.3%。
仕事や職業生活に関することでストレスを感じている労働者の割合は82.2%でした。特に小規模の事業場ではノウハウの不足等を理由としてメンタルヘルスケアの実施が進んでおらず、労災防止の観点からも重要な課題の1つとなっています。
メンタルヘルスの不調がきっかけで従業員が離脱すると、その他の従業員に負担がかかります。負担がかかった従業員がストレスで仕事を続けられなくなり、連鎖的に退職や休職が続けば、結果的には売上の減少にもつながります。従業員の定着率にまで影響するようになると、会社の評判が下がり、採用が難しくなってしまう可能性もあります。
メンタルヘルスケアの第一歩は、従業員自身にメンタル面のセルフケアに取り組んでもらうことです。従業員がメンタルヘルスの変化に気づき、セルフケアに取り組むきっかけの1つとして「ストレスチェック」があります。Webで受けられる簡易なものが、厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」で公開されています。
「職場の雰囲気は友好的か」など57個の質問に対して「そうだ」「ややちがう」などの選択肢から回答する方式で、5分程度で終了します。チェックが終わると、自身が感じているストレスの原因や、心身にどんな影響が出ているか(イライラが募っている、疲労感が高まっている等)が表示されます。
ストレスチェックは、従業員数が常時50人以上の事業場の場合、年1回の実施が義務付けられています。また、その他の事業場でも、年1回の実施が努力義務になっています。
ストレスチェックについて、詳しくは次の二次元コードから厚生労働省のWebサイトをご参照ください。
なお、ストレスチェックは、結果を分析することで、職場環境の改善にも活かせます。
作業方法や職場のレイアウト等に、思いがけない改善点が見つかるかもしれません。積極的な活用を検討しましょう。
従業員のストレスを緩和するためには、社内の体制づくりも大切です。
メンタルヘルスの異変を自覚した従業員をケアできるよう、次のような取り組みを行いましょう。
(1)相談しやすい環境を整える
社長や部門長等、管理職にある人は、部下からの自発的な相談に対応できるよう、相談しやすい環境や雰囲気を整えるよう努めましょう。積極的に部下の話を聴くように心がけるとともに話を聴く技術(傾聴)を身につけることも大切です。
東京都のあるソフトウェア開発会社では、「部長は毎日朝と夕方に新入社員と会話をすること」と社長が指示を出しました。また、入社1年間は毎月、総務部と新入社員の面談を実施。コミュニケーションの機会を増やすことに力を入れました。
日頃から職階や部署を超えて交流する機会をつくったことで新入社員へのメンタル面でのフォローがうまく行えるようになり、離職率が大幅に低下したーといいます。
(2)専門家を活用する
ストレスチェックを取り入れたために業務や検討事項が増え、担当者や社長が負担を感じるようになっては本末転倒です。必要に応じて専門家の活用を検討しましょう。
沖縄県のある工事会社では、ストレスチェックで「高ストレス」と判定された従業員に、「健康経営エキスパートアドバイザー」の資格がある看護師との面談を案内しています。
その特徴は、高ストレス者が誰か、社長は把握していないこと。看護師との面談も業務時間外に会社とは別の場所で行われ、「社長に何と思われるか……」という不安を従業員に感じさせない制度にしているのです。また、従業員の希望に応じて、看護師から医師や必要な相談窓口の紹介も受けられるという、万全のサポート体制が整えられています。
【参考】従業員の健康維持に「地さんぽ」を活用しよう
独立行政法人労働者健康安全機構が運営する「地域産業保健センター(地さんぼ)」では、従業員数50人未満の小規模事業者やそこで働く従業員に対して、次のようなサービスを原則無料で提供しています。
- 長時間労働者への医師による面接指導の相談
- 個別訪問による産業保健指導の実施
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