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他人事じゃない!「物流の2024年問題」と荷主にできること

2023年9月25日

製造から小売まで、さまざまな企業の大切なパートナーである運送会社。私たちの荷物を運んでくれるトラックドライバーヘの残業規制が適用され、業界が大きく変わるとされる「物流の2024年問題」は、物流業界のみならず、荷主であるさまざまな事業者に影響を与えます。

トラックドライバーへの残業規制適用「物流の2024年問題」

大企業では2019年から、中小企業では2020年から適用されている「時間外労働の上限規制」ですが、適用が猶予されている業種がありました。そのうちの1つがトラックドライバーです。
その猶予期限も、2024年3月末まで。2024年4月1日からトラックドライバーヘの残業規制の適用が始まり、時間外労働の上限が年960時間となります。このまま対策を講じなければ、2024年にはトラックドライバー14万人相当の輸送能力が不足するとされています。
そこで物流業界では、物流網の安定に向けたドライバー確保のため、労働時間の短縮や労働環境の改善に向けた取り組みを検討しています。
例えば、
①長距離輸送について、2人で乗務して交代で運転する
②倉庫などを利用して貨物を一度集約し、ドライバーの移動距離を短くする
③高速道路・有料道路の活用を増やす
④賃金水準の向上、休憩・休日の確保
一などの対応が考えられます。

運送業以外の事業者の対応ポイント

物流業界のこれらの取り組みは、裏を返せば、荷主となる企業にとっては運賃の値上げゃ、輸送にかかる日数の増加などの形で影響を受け、「今まで通りの配達・輸送」が難しくなることを意味します。「物流の2024年問題」はさまざまな事業者が影響を受ける出来事であり、「自分事」と捉えて対応策を検討する必要があります。

顧客に運賃改定による値上げの合意を得る

運賃の上昇分を全て自社で吸収すると、大きな負担になります。そのため、顧客に価格転嫁する必要が出てきます。改正貨物自動車運送事業法に基づく「標準的な運賃」が告示されていますので、そちらも参考に、運賃改定に伴う価格の上昇について顧客から理解を得るようにしましょう。

自社で直接届ける

運賃の改定や輸送にかかる日数の増加への対策を考える前に、一旦立ち止まって「そもそも、これを自社で届けることはできないだろうか」ということを考えてみましょう。

●定期的に送付しているカタログ・書類・贈答品等を、営業担当者などが直接持参するようにする

●近隣の得意先への、見本や小ロット品などの納品は、自社で行う

このように輸送の機会を得意先との接触の機会に置き換え、直接近況を伺ったり自社の情報を伝えたりすることで、得意先との関係の維持や発展に役立てることができます。この数年、新型コロナウイルス感染症の影響で対面での接触を減らす流れになっていましたが、その位置づけも変わってきました。「物流の2024年問題」への対応を得意先との交流の活発化につなげてみてください。

コストと輸送日数の増加を見据え荷主側も協力体制を整えよう

次のような例を参考にして、自社で協力可能なことがないか検討してみましょう。

業務をお願いする際の協力

短納期または急な配達・集荷依頼や、再配達等の複数回にわたる依頼は、できる限り避けましょう。手荷役(荷物の積み下ろし作業)等も、荷主側の協力体制を整えましょう。

●トラック予約システムの利用
●発送スケジュールの前倒し
●鉄道輸送や海上輸送への転換
●パレットの利用による手荷役作業の削減
●不要な翌日便の廃止
●置き配や着日指定の利用

自社の職場改善

自社の職場改善で荷待ち・荷役時間を短縮することも必要になります。政府発表資料「物流革新に向けた政策パッケージ」(令和5年6月2日公表)によれば、荷待ち・荷役時間が平均4分短くなると、トラックドライバー1万人分の輸送能力を補うことができるとされています。

●5Sの推進や動線の見直し等による荷揃え作業の効率化
●搬入先となる倉庫等の整理整頓による荷おろし作業の効率化

なお、厚生労働省からは「荷主のための物流改善パンフレット運送事業者の事業環境改善に向けて」等が公表されています。対応策を検討する際の参考としてください。

【参考】「送料無料」表示に注意!政府が見直しを検討
「物流革新に向けた政策パッケージ」の中では、商品の「送料無料」表示の見直しについても触れられています。
運送業者がコストに見合った運賃を受け取りにくい取引環
境を適正化するため、消費者向けの送料にも適切な価格転換がでいるようにと、荷主・事業者・一般消費者が一体となって物流を支える環境整備がスタートしています。