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「変動損益計算書」は、すべての費用を、売上高に伴って増減するかどうかで「変動費」と「固定費」に分けて表示した損益計算書です。経営上何が起きているのかを簡単に読み取ることができ、社長の意思決定の結果が表れる「社長の成績表」とも言えます。(全6回連載)
※本稿では、わかりやすくするため、数値を単純化して解説しています。
「見込んでいた儲けが決算書の粗利(売上総利益)と違う」「損益計算書に表示される粗利率(売上総利益率)が、いつも自分の考えている数字より低い」一一。決算書や月次試算表の損益計算書に表示される「売上総利益」の額が、自分の計算している儲けと差があると感じることはないでしょうか。このような場合、「変動損益計算書」を利用すると、社長が考えていた利益構造と一致させることができ、業績の変化への打ち手も素早く検討できます。
通常の損益計算書では、売上原価の中に、売上高の増減に伴って変わる材料費等と、売上高が増減しても変わらない製造部門にかかる人件費等が一緒に入っています。そうすると、どのような問題が起きるのでしょうか。例えば何かの理由で売上高が半分になったとします。この時、材料費は半分になりますが、製造部門の人件費は変わりません。その結果、売上高に占める製造部門の人件費の割合が上がり、売上総利益率は下がります。このように売上高が変わるたびに売上総利益率が変化してしまうのです。変動損益計算書は、すべての経費を売上に伴って増減するか否かで「変動費」と「固定費」とに分けて表示した損益計算書で、次のような特長があります。
①変動費が売上高の増減に伴って変わるため、売値や仕入値が変わらない限り限界利益率は一定であり、限界利益は売上高に比例する
②限界利益が売上高に比例するため、売上高の増減によって限界利益がどれだけ増減するか、すぐにわかる
③製品・商品をいくつ販売すると、限界利益をいくら稼げて、固定費を賄えるか、などの数量ベースでの試算が簡単にできる
変動損益計算書を使えば、固定費+目標経常利益を上回る限界利益を確保するための販売計画を立てる、利益確保のための売上目標を設定するなど、経営に役立つ情報を得ることができます。
変動損益計算書は、限界利益から上(上段)に、自社の製品やサービスが顧客や市場に評価された結果が表れます。そして限界利益から下(下段)には、儲けの範囲内で経費をどのように使ったかが表れます。社長の意思決定の結果が表れる、いわば「社長の成績表」と言えるでしょう。本連載では、黒字経営への道しるべとして、次のようなポイントを順次解説していきます。
・売上高は確保できているか
・限界利益率を上げられないか
・固定費の伸びを抑えられているか
・労働分配率は適切か
・経常利益の目標達成は可能か
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