MENU

福耳通信

miyachannel

HOME > 福耳通信 >  めざせ!付加価値経営<その1>付加価値を増やす経営をしてみませんか?

めざせ!付加価値経営<その1>付加価値を増やす経営をしてみませんか?

2022年10月 3日

フランス菓子店を経営する山田社長は、原材料の高騰などで採算性が悪化するものの、社員の待遇改善をしなければと考えていました。そんなとき、経営者の会合で出会った方から「付加価値」という言葉を聞いたので、会計事務所の巡回監査士にたずねてみました。

1.「付加価値」ってなに?

山田:この前、経営者の会合で出会った方が、これからは「付加価値」が大事といってたけど、それはどういうことですか?

巡回監査士:「付加価値」とは、簡単にいうと「限界利益」(粗利)のことで、売上高から「変動費」を引いた金額、いわば会社が創造した価値をいいます。

山田:会計用語はなじみがないので、今ひとっピンときませんが・・・。

巡回監査士:それでは、当店の売れ筋商品のモンブランを例にとり説明します。モンブランを作って売るためにかかる費用はどれくらいですか?

山田:栗と生クリーム、タルト生地などが主な材料費ですね。

巡回監査士:パティシエや店員の人件費、店舗の家賃や光熱費もモンブランを作って売るためにかかる費用ですね。
仮に1日の店の売上がすべて単価500円のモンブランの販売によるものだとしましょう。1日の販売数量が100個だと売上は5万円、200個であれば10万円になります。
材料費はどれくらいになりますか?

山田:モンブラン1個あたり、栗が40円、生クリームとタルト生地などで100円だから合わせて1個あたり140円として100個だと14,000円、200個だと28,000円になりますね。

巡回監査士:つまり、販売数量(生産数量)が増加すると材料費も増加するし、販売数量が減少すると材料費も減少します。
このように、売上や生産数量の増減に応じて変動する費用のことを「変動費」というのです。
売上からこの変動費を差し引いたものが付加価値(限界利益)となりますので、他に変動費がないとすれば、付加価値は
100個売った場合は36,000円、
200個の場合は72,000円
になります。

山田:人件費や家賃などの費用はどう考えればいいのですか?

巡回監査士:パティシエや店員の人件費、家賃は、販売数量が増減したとしても変わりません。

山田:そうすると、仮に1日あたりの人件費や家賃などを4万円とした場合、1日の販売数量が100個でも200個でも、1日4万円は変わらないわけですね。

巡回監査士:そうです。人件費や家賃などのように、売上や生産数量の増減に関係なく固定的に発生する費用のことを「固定費」といいます。たとえ売上がゼロでも固定費は4万円かかりますし、固定費が付加価値(限界利益)の範囲を超えると赤字になるので注意が必要です。

2.なぜ、付加価値を増やさなければならないの?

山田:付加価値と固定費・変動費の関係は重要ですね。今後、材料費などが高騰しても新商品開発や販路拡大などの経営努力によって、なんとか給与を増やし続けられる企業になり社員に夢や希望を与えられる職場にしたいと考えています。

巡回監査士:すばらしいお考えですね。社長の方針にそって人件費を増やすためには、付加価値を増加させる必要があります。付加価値の増加の範囲内で人件費を増やせば、労働分配率※の上昇は抑えられます。
付加価値をたくさん稼ぎ出し、社員の給与水準も高く、結果として労働分配率が低く抑えられた会社にしていきたいですね。
※労働分配率:付加価値(限界利益)の中から人件費に配分した割合のこと。

山田:そのためにどのようなことに気をつけていけばいいのでしょうか。

巡回監査士:この「変動損益計算書」(変動P/L)を積極的に活用して、付加価値を増大させるために必要な販売価格や販売数量を検討したり、経費をコントロールするなど、自社の業績管理に役立てるところから始めてはいかがでしょうか。