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役員と会社の取引~貸し借りを軽く考えていませんか?~

2022年8月22日

中小企業では、役員と会社との間で、金銭や不動産の貸し借り、資産の売買などが行われることがよくあります。役員と会社は、法律上、別人格であるため、外部との取引と同様の手続きを踏んでおかないと、会社法上や法人税法上の問題が生じるおそれがあります。

金銭の消費貸借には必す契約書を作成しよう

役員が会社に金銭を貸したり、反対に、役員が会社から金銭を借りるときは、たとえ同族会社やオーナー企業であっても、役員と会社は別人格のため、「金銭消費貸借契約書」を作成し、貸借金額、貸借期間、利息、返済条件などの民法上の権利関係も明らかにしておきます。
また、取引の内容によっては、会社に損害が生じることを防止するため、株主総会や取締役会の承認決議を経て、議事録を作成しておきましょう。

金銭の貸し借りでの注意点

(1) 役員から会社への金銭の貸付け

役員が会社から利息を受け取らなくても、法人税法上は問題ありません。利息を受け取る場合は、役員の雑所得として所得税の課税対象となります。
会社が役員に支払った適正な利息は、損金として処理することになります。

適正な利息とは、
①金融機関など他者から借り入れた金銭を貸す場合は、その借入金の利率を基に算定、
あるいは、
②貸付けを行った日の属する年に応じて法令の定める利率を基に算定します。
役員が受け取る利息が過大とならないようにすることが大切です。

<役員が会社から利患を受け取る場合>
●無利息のとき
→原則として問題なし
●適正な利息より低いとき
→原則として問題なし
●適正な利息より高いとき
→高い部分が役員給与

なお、役員から会社への金銭の貸付けは、その役員に相続が発生すると、相続財産となることに注意しましょう。

(2) 役員による会社からの金銭の借入れ

通常、役員が会社から金銭を借り入れることはそれほど多くないでしょう。よくあるケースとして、会社の預金から現金を引き出して、その使途が不明のまま引出額が多額になってしまった場合、役員への貸付金と認定されるため注意が必要です。
例えば、役員への20 万円の仮払いがあり、そのうち10 万円しか精算されていないなどが積み重なって、未精算額が多額になるケースなどがあります。

不動産の賃貸借での注意点

役員と会社の間での事務所や住宅などの賃貸借については、「不動産賃貸借契約書」や株主総会等の議事録を作成し、家賃についても記載しておきましょう。

(1) 役員が会社に不動産を貸すとき

役員が所有する不動産を会社に貸すときは、その不動産が、実際に会社の業務のために使用されていなければなりません。
「不動産賃貸借契約書」や株主総会等の議事録には、事務所用、倉胴用などの用途や賃貸借の目的を明らかにしておきましょう。
会社が役員に支払う家賃が相場等よりも低い金額や無償であっても、法人税法上は、原則として問題ありません。反対に、相場等よりも高いと、その高い部分は役員給与とされます。

役員に支払う家賃の消費税について
会社が役員に支払った事務所家賃の消費税は、現状、仕入税額控除が可能ですが、令和5年10月からインボイス制度が始まると、免税事業者である役員への事務所家賃の支払いについては、消費税の仕入税額控除ができなくなります。
ただし、令和11年9月30日までは、免税事業者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合(80%または50%) を仕入税額とみなして控除できる経過措置があります。

 

(2) 役員が会社から不動産を借りるとき

役員が会社所有の住宅を借りる場合、法人税法上は、役員社宅の家賃として、住宅の規模に応じた適正な家賃の基準があります。
法人税法上の適正な家賃と比べて、役員の支払う家賃が低すぎる、あるいは無償である場合は、適正な家賃との差額が役員給与とされます。

資産を売買するときは特有の規定に注意

役員と会社との間で不動産の売買を行う場合は、株主総会等の決議や議事録作成などの手続きが必要です。
税務調査においても、疑念を持たれやすいため、「不動産売買契約書」を作成し、登記等も忘れないようにしましょう。
同族会社の場合は、法人税法上、特有の規定があり、売買の目的が明確でないと、取引そのものが否認されることもあります。
売買価格についても注意が必要です。適正な価格よりも著しく低い価格での売買であれば、取引に合理性が認められないとされる可能性もあります。

(1) 役員が会社から低額で購入したとき

時価との差額が役員給与とされます。また、定期同額給与に該当しないため、会社は、損金処理ができない上、差額分は譲渡益として法人税が課税されることになります。

(2) 役員が会社へ低額で譲渡したとき

役員は、譲渡価格が時価の1/2未満であれば、時価で譲渡したものとみなされ、所得税の問題が生じます。会社は、時価との差額が受贈益として法人税が課税されるため注意しましょう。