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逆風下での黒字化のヒントを考える

2022年7月18日

新型コロナの影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻による経済への悪影響、エネルギーや原材料の価格高騰、急速な円安など、企業はかつてない逆風に見舞われています。そのような環境下において、いかに黒字化を圏るか、そのヒントを探してみましょう。

危機を乗り越えた経営者の手法からヒントを探す

経営者の誰もが、売上を伸ばし、利益を上げたいと願っています。利益を上げることで資金を獲得し、それが新たな設備投資や新製品・新サービスの開発に活用され、売上や利益をさらに増やすことになります。
しかし、経営環境は順風とは限りません。
長期化するコロナ禍、エネルギー・原材料価格の高騰、急速な円安、ウクライナ情勢などの逆風下において、売上を伸ばす、利益を上げることは容易ではありません。
しかし、逆風下においても、その苦境を乗り越えて会社を成長させた経営者も多くいます。そのような経営者の手法から、黒字化のヒントを探してみてはどうでしょうか。
例えば、倒産の危機を乗り越え、今や世界的な大企業となった日本電産の創業者・永守重信氏は、自著『永守流経営とお金の原則」(日経BP・2022年)において、「永守3大経営手法」として、①井戸掘り経営、②家計簿経営、③千切り経営を紹介しています。
この3つの経営手法は、刻一刻と変化する経営環境において、着実に成果を出していくために、永守氏自らの体験から生み出されたものです。
日本電産は、創業以来、この経営手法を継続して実践したことで、成功を収めてきたといいます。

①井戸掘り経営

「井戸の水というのは、汲めば汲むほど湧いてくる」と永守氏は言い、知恵やアイデアも考えれば考えるほど湧いてくるという考え方です。経営改善やコスト削減のためのアイデアも、社員と一緒に考え続けることで、生まれてくるでしょう。

②家計簿経営

収入の減った家計は、小さな節約を積み重ねてやり繰りをします。それと同じように、会社も危機に際しては支出の一つひとつを見直すことによって、経営を改善するという考え方です。

③千切り経営

大根やキャベツを1~2ミリの千切りにするように、大きな課題や難しい課題も小さな課題に分解することで必ず解決策が見つかるという考え方です。

自社の窮状を開示し83の改善項目を抽出したA社

ある製造業A社は、「このままでは赤字になる」という危機感を抱いたことから、製品原価などを半分に下げる「コストハーフ」に全社一丸で取り組みます。
A社では、日頃から無駄を一つひとつ排除する改善に取り組んでいましたが、さらなる体質改善のためにより大胆な改革が必要となったのです。
最初に取り組んだことは、全社員に、財務情報を開示して、会社の現状と今後の見通しを正確に知らせることでした。これは「家計簿経営」に通ずるといえるでしょう。
社員は、会社の状況が厳しいことを何となく理解はしているものです。しかし、「実際にはどうなのか」を知らされなければ、「大変なことになる、頑張ろう」と言われても頑張る意欲は生まれません。
「家計の実情」を知れば、家族が協力してくれるように、社員の大半は「一緒に頑張ろう。自分たちも知恵を出そう」となるものです。全社で正しい情報を共有できれば、そこからコストダウンや販管費削減などのアイデアも生まれるでしょう。
社貝の理解を得たA社は、財務数値を参考にしながら、「コストハーフ」という大きな目標達成のために、83項目にも及ぶ課題を抽出しました。そこから、生産性・効率性の向上を図るべく「エ程内不良・手待ち時間・機器の稼働停止時間ゼロ」「スペース効率2倍」という目標を掲げました。
さらに、コスト面の改善として、原材料費はもちろんのこと、購入部品、受給部品、外注加工費、エネルギー費、さらには販管費などを例外なく見直しました。生産性・効率性の向上と徹底したコストダウンによって「コストハーフ」を実現しようとしたのです。
まさに、大きな課題を細かく分解して改善する「千切り経営」の手法といえます。

課題が明確になれば知恵やアイデアが生まれる

「知恵もアイデアもそう簡単に出ないよ」という方もいらっしゃるでしょう。知恵が出ないのは知恵がないからではなく、問題が見えないからです。目の前の課題が見えれば、知恵やアイデアは生まれてくるものです。
A社のように「コストハーフ」という大きな目標を掲げたときに、「汲めども枯れない井戸水」のように知恵やアイデアが生まれ、最終的に大きな成果につながっていくのです。
危機を乗り切るためには社員の協力を欠くことはできません。大変なときだけ、社員に「協力しろ」と言ってもそれは無理な話です。
日頃から社員の知恵を信じ、問題を隠すことなく見えるようにしておくことが、危機にあっても会社が利益を上げ、資金を確保する最善の方法の一つなのです。
逆風下の大変な時代だからこそ、社員の知恵や力を信じてみてはいかがでしょうか。