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酒好きの間でよく知られる芋焼酎の銘酒「森伊蔵」は創業1885年、現在は5代目の当主森覚志氏が率いています。バトンを受け継いだ当時、両親が細々と造つていた昔ながらの芋焼酎を取り扱う酒販店は数軒になり、蔵を閉めるか、商売替えかというところまで追い込まれていました。この時、森氏の頭に浮かんだのは考え方を180度変えてはどうか、という発想でした。
宣伝費も販促費もかけられない、満足に営業も行けない、ならばお客さんのほうから買いに来てくれる酒を造ればいいのではないか。
いまでも売れていないのに、お客さんが買いに来る酒を造ればいいというのは、ど素人の考えです。
でも大胆にやってみるしかなかった。森氏は原料選定から酒造りの工程ことの手法や設備について主流になっていることを過剰書きにしました。
そして、それと正反対のことも書き出してみたといいます。
●原料は安い方がいい⇒価格が高くても質のいい低農薬のサッマイモを契約農家に作ってもらう
●仕込むタンクの主流はステンレス吟甕壺を使い続け微生物の活性化を促すなど。
つまり効率化や低コスト化を促進する合理的な判断や手法を反転させた「逆転の発想」です。
2年後できあがった酒は森氏の理想の形になりました。「森伊蔵」とは実は森氏の父、先代の名前です。
「人の口に入るものには手間と暇をかけよ」と常に言っていた尊敬する父の名前です。その人気は1988年の発売以来30年以上継続しています。
その理由は何か。「去年より今年、今年より来年とさらにおいしい酒を造ろうとしています。おいしい酒を造り続けるには今の生産体制が精一杯。これ以上造ったらおいしい酒は造れないと考えています。足もとを見つめてゆっくり歩き、おいしい焼酎を長く提供したいです」売れたら投資して事業拡大を。そんな経営常識に対しても森氏は逆転の発想で挑んでいるのかもしれません。
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