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中小企業の賃上げ税制はこうなる!

2022年4月11日

企業の積極的な賃上げを促すため、令和4年度税制改正では、賃上げ税制の強化として税額控除率(最大40%)の拡充が行われます。また、赤字など税優遇の恩恵が受けられない事業者には、ものづくり補助金や持続化補助金に特別枠が設けられます。

1.なぜ今、賃上げなのか?

政府が、賃上げ税制を強化する背景には、企業の内部留保が 9年連続で過去最高を更新する一方で、賃金がほぼ横ばいの状態が続いているという現状があります。
賃上げにより、 GDP(国内総生産)の半分以上を占める個人消費を伸ばすことで、企業の利益が拡大し、それがまた賃金として還元される「成長と分配の好循環を生み出す」という狙いがあります。

2.中小企業の賃上げ税制のポイント

適用期限が 1年延長され、次のように、これまでの賃上げ要件である前年度比1.5%以上増加(①)をそのままに、新たに前年度比2.5%以上増加させた場合に税額控除率が30%となる要件(②)が追加されました。

①雇用者全体の給与総額(雇用者給与等支給額)を前年度比で1.5%以上増加
→給与増加額の15%を税額控除

②雇用者全体の給与総額(雇用者給与等支給額)を前年度比で2.5%以上増加
→給与増加額の30%を税額控除

雇用者には、既存の従業員(パート・アルバイト等を含む)だけでなく、新規採用の従業員も含まれます。
給与増加額(賞与含む)は、制度を適用する年度の雇用者給与等支給額から前年度の雇用者給与等支給額を控除した額になります。
①②の賃上げ要件に加えて、教育訓練費の増加等による上乗せ要件(③)があります。

③教育訓練費を前年度比で10%以上増加
→税額控除率を10%上乗せ

これにより、前年度比2.5%以上の賃上げと教育訓練費の前年度比10%以上増加で、税額控除率は最大の40%になります。
上記の改正は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

3.税制の恩恵を受けられない企業には?

赤字など業況が厳しい中でも、賃上げ等に取り組む中小企業向けに、補助金の特別枠等が創設されます。

(1)ものづくり補助金の特別枠の設定
「ものづくり補助金」に、賃上げ等に取り組む赤字事業者を対象とした「回復型賃上げ・雇用拡大枠」が設けられます。

【回復型賃上げ・雇用拡大枠】
次の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定する必要があります。
①事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させること
②雇用者全体の給与総額を年率平均1.5%以上増加させること
③事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上引き上げること

申請類型 補助上限額 補助率
通常枠 750万円
1,000万円
1,250万円
1/2
回復型賃上げ・雇用拡大枠 2/3
デジタル枠
グリーン枠 1,000万円
1,500万円
2,000万円

※1.従業員規模により異なる
※2.小規模事業者・再生事業者は2/3

(2)持続化補助金の特別枠の設定
小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓や生産性向上に要する経費の一部を支援する「持続化補助金」に、「成長・分配強化枠」が設けられます。

【成長・分配強化枠】
事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上引き上げる事業者や事業規模を拡大させた事業者が対象です。

申請類型 補助上限額 補助率
通常枠 50万円 2/3
成長・分配強化枠 200万円 2/3
新陳代謝枠 200万円 2/3
インボイス枠 100万円

※1.創業や後継ぎ候補者の新たな取り組み
※2.インボイス発行事業者への転換
※3.一部の類型において赤字事業者は3/4

<参考情報>
相続税・贈与税の今後の改正動向
令和4年度税制改正における相続関連の主な改正としては、既存の税制の一部見直しや適用期限の延長などがあります。これらは、相続のあり方に大きな影響を及ぼすようなものではなく、昨年度から注目されていた生前贈与における、相続税と贈与税の一体化や暦年贈与の廃止などの抜本的な改正は行われませんでした。
ただし、与党の「令和4年度税制改正大綱」では、「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す、贈与税の非課税措置について不断の見直しを行う」として、今後、相続税・贈与税のあり方について、見直しを進めることに言及しています。