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中小企業の資金調達というと、金融機関からの借入れや社債発行、経営者からの借入れなどが一般的です。しかし、それ以外にも、前払いや運転資金の改善、クラウドファンデイングなどといった資金調達もあります。
身近にある商品提供前に代金を受け取る方法
商品を掛売りしている場合や、製造業であれば、原材料を仕入れて製造した製品を販売し、その代金を回収(現金化)するまでの期間は、運転資金が必要になります。
運転資金の大半を金融機関からの借入れ等に頼ると、資金繰りが苦しくなります。 しかし、私たちの身近には、商品(製品) ・サービスを提供する前に代金を受け取るさまざまな方法があります。
(1)商品等の提供前に代金を受け取る
前金•前売券、手付金など事前に代金を受け取る方法としては、前払い、前金、予約金、内金、手付金などが一般的でしょう 。
長期の請負工事など、完成 ・引き渡しまでの期間が長いケースでは、代金の一部を前払いで受け取ることで、 事業者はその資金を原材料や人件費の支払いに充てることができます。
前払いは、販売側にとっては、一部または全部の代金の入金が確実にあるためメリットが大きい方法です。
しかし、支払う側の代金支払いが前倒しになるため、割引などの特典を付けることも必要でしょう。
前払いには、業界・業種の慣習によるものもありますが、たとえば、以下のようなものがあります。
@代金の前払いの例
●不動産売買における手付金や内金
●映画、演劇、コンサートなどの前売券
●請負工事や業務委託契約における前払い
●旅行代金の予約金や申込金
●商品券・ギフト券、コーヒーチケット
※名称の違いや商慣習、契約成立の有無や債務不履行時の弁済責任などに違いはありますが、ここでは資金調達の面からのみ説明しています。
(2)一定期間に一定額を受け取る定額制やサブスクリプション
定額制とは、一定の期間 (年、月など)に一定の金額を支払い、商品・サービスを受け取ることができるものです。
定額制は、事前に収入が得られるうえ、利用者の継続的な利用が見込めるといったメリットがあります。
最近は、定額制と同様の方法に「サブスクリプション」があります。期間中は決められた商品・サービスの使い放題など、料金プランやオプションメニューが多様で、顧客満足度を意識したビジネスモデルです。
このような定額サービスも事前に代金を回収するものです。
@定額制の例
●保守・点検サービス、管理料など
●通勤定期券
●テーマパークの年間パスポート
@サブスクリプションの例
●定額制動画配信サービス
●食品や食材の定期宅配
●車の定額貸出サービス
(3)新商品開発に利用できるクラウドファンディング
近年、中小企業においても、インターネットを介して不特定多数の人々から資金調達する「クラウドファンデイング」が増えています。これは、「寄附型」「商品・サービス購入型」「貸付(融資)型」「投資型」などに大別されます。中小企業の事例としては、「商品・サービス購入型」が多いようです。これは、提供する商品・サービスを明示して、資金を調達し、その商品・サービスを開発して出資者に提供するもので、「商品の予約販売」に近い方法といえます。
クラウドファンデイングには、資金調達以外のメリットもあります。
①出資の多寡によって、新商品や新事業の成否を推測できる。
②出資者から提案やアドバイスが寄せられたり、商品の色や仕様、生産計画を決めるためのデータや情報の収集ができる。
③ウェブサイトを通じて、資金提供はなくても、関心を持つ顧客が現れる。
@クラウドファンディングを利用した事業の例
●海中で熟成させるワイン
●東京都内に酒蔵をつくる
●一時預かり専門の託児所
●一人暮らしの高齢者を見守るサービス
●新型コロナで経営悪化に苦しむ医療機関を支援する寄附
(4)体験もできる農作物などのオーナー制度
消費者から事前に代金を受け取って、農作物などのオーナーになってもらい、収穫した作物や加工品を届ける制度です。
生産者がオーナーに代わって作物を育てるものや、苗植えや収穫を実際に体験できるものもあります。また、海産物、酒、真珠などのオーナー制度もあります。
オーナー制度の例
・おいも株オーナー(さつまいもの苗植えから収穫を体験)
・みかんオーナー(1本の木の実るみかんを収穫できる権利)
このような商品提供前に資金調達する方法は、どのような事業でも活用できるものではありませんが、新しい商品やサービスの開発、新たな販売方法を考える際に、検討してみてはいかがでしょうか。
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