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雇用を守り、事業を継続する手段を考える

2021年2月27日

コロナ禍において、事業の縮小を余儀なくされたり、売上回復が遅れるなかで、従業員の雇用を守りつつ、いかに事業を継続させるかが課題になっています。また、令和3年4月以降、新たな経営課題となるような労務関連の制度改正が次々と予定されています。

休業・時短営業には、まず雇用調整助成金の活用を!
新型コロナの収束が見えないなか、今後も休業や時短営業を余俄なくされる企業もあるでしょう。雇用維持と人件費を考えた場合、まずは雇用調整助成金を活用しましょう。
雇用調整助成金は、新型コロナの影響を受ける事業主(全業種)を対象に、売上要件の緩和、助成率および上限額を引き上げた特例措置(緊急対応期間)が 2月末 日まで延長されています。

●特例措置のポイント
売上要件 :1か月で5%以上の売上減少
助 成 率 :10/1O (解雇を実施しない場合)
上限額 :1人日額 15,000円
計画届の提出 :不要

(1)休業計画に基づき休ませること
雇用調整助成金は、売上減少によって、従業員を休業させ る必要がある場合に、あらかじめ立てた休業予定(計画)に基づいて、従業員を計画的に休業 (1日又は一定の時間)させなければなりません。

休業計画において決めておく内容
●休業期間、休業日数
●休業する時間 (l日中または一部の時間)
●休業させる対象従業員 (一部または全員)
●休業手当の額(平均賃金の60%以上)

「今日は、仕事が2時間早く終わったから2時間早く帰らせる。仕事がないので明日は休みにする」というケースは、「計画的な休業」とはならないので注意しましょう。

(2)従業員に休業手当を支払うこと
休業計画に基づいて、従業員を休ませる際には、休業手当 (平均賃金の60%以上)を支払う必要があります。雇用調 整助 成金 は、支払った休業手当に対して支給されます。 従業員ごとに休業日数や時間をタイムカードや出勤簿に、休業手当の額を給与明細や賃金台帳に記載しておきます。これらは支給申請時に必要です。

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労働時間や働き方の見直しで雇用を維持する
コロナ禍において、企業によっては、労働時間や業務内容、社員の働き方が大きく変わったところもあるでしょう。

(1) 1日の労働時間を減らす
1週間の労働時間が、1日8時間・週5日の場合、新たな働き方として、1日7時間にすることも考えられます。

注意すべきことは、労働時間の削減に伴って給与を引き下げた場合、後述する労働条件の不利益変更にあたるため、従業員への適切な説明と個別合意が必要になります。

(2)変形労働時間制の導入
一方、 1週間の所定労働時間はそのままで、1日の労働時間を増やすことも考えられます。
この場合は、所定労働時間が法定の 1日8時間を超えてしまいますが、変形労働時間制を導入すれば、不利益変更にはなりません。


不利益変更をせざるを得ないときの注意点
新型コロナの影響が長期化し、売上回復が見込めないなかで、会社の存続と従業員の雇用維持を図るため、給与の見直しなど、労働条件の不利益変更をせざるを得ない事態も想定されます。
そのような場合は、まず、経費の削減、役員給与の減額、公的助成金の活用など、会社としてできる限りの手を尽くしましょう 。その上で従業員に対して「適切に説明し、その妥協点を探り、個別合意を得る(合意書に署名捺印をもらう )」 ことが必要です。時短の実施にあたっては、それが新型コロナ収束までの時限的な制度(半年や 1年など)か、持続的な制度にするかについての説明も必要でしょう 。

中小企業への適用が予定されている労務関連の制度改正
令和 3年以降、中小企業にも影響がある労務に関する制度改正が予定されています。

施行年月 施行される制度
令和3年4月

●同一労働同一賃金制の中小企業への導入
※正社員と非正規社員(パートタイマー、契約社員、派遣社員など)との間での不合理な待遇差と差別的な取扱いが禁止される

●高年齢者 用安定法の改正
※65歳から70歳までの就業機会を確保するための措置を講する努力義務が求められる

令和4年4月 ●「パワハラ防止関連法」の中小企業への適用
※パワーハラスメントの防止措置が事業主に義務付けられる
令和4年10月 ●パートタイマーヘの厚生年金の適用拡大
※現在、「従業員501人以上の企業に勤める」「月額賃金88,000円」など一定の要件を満たすパートタイマー等にのみ適用される社会保険料の支払義務(l06万円の壁)について、従業員101人以上の企業に勤める人まで適用範囲が拡大される。
※令和6年10月からは、対象が従業員51人以上の企業に勤める人まで拡大される。
令和5年4月 ●月60時間超の残業に50%超の割増賃金を適用
※1か月について、 60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、50%以上の割増賃金率で計算した割増賃金を支払う必要があるる。