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歴史からひも解く、コロナ危機に負けない経営者マインドとは

2020年9月14日

カテゴリ: 経営

わが国は創業100年超の老舗企業が3万社を超える、まれにみる長寿企業大国であり、それらは当然、恐慌も大戦も痰災も乗り越えてきて今があるのです。そこで、自社がコロナ禍を乗り越え、盤石な経営基盤を確立するためのヒントを、歴史上の教訓からひも解いてみることにしましょう。

今年の倒産・廃業・解散件数は東京商工リサーチの推計で5万件にのぼるとの記事が報道されました(日本経済新聞、2020年5月31日)。この5万件という数字は多いように感じますが、わが国の企業数からすれば1%台にすぎません。しかし、ある程度の規模の企業が破綻し、連鎖的な影響を及ぼすとなると話は違ってきます。今回のコロナ禍による影響はリーマンショックを超え、世界大恐慌に匹敵するのではないかとの見方も出ています。

今一度原点に戻る
「歴史は繰り返す」と言われるように、歴史を学ぶことで、法則性を見いだし、今後の方向性を見極めることができます。しかし、大切なことは、歴史は繰り返すが、「形を変えて繰り返す」ということです。倒産は資金が不足した場合に起こる、と言われますが、実はその真因は目的意識が希薄になることから生じます。元禄時代までの成長期に多数の商人たちが興隆しましたが、その後の大デフレ政策と言われた享保の改革で、大多数が没落していきました。これはすさまじいもので、10軒のうち、7、8軒は潰れたと言われています。先の1%台の数字とは桁違いの倒産ラッシュが起きたのです。このときに、生き残った商人たちは次のような行動に出ました。
「新興商人の創業者たちは、この事態をみて、自己の責任で決断し、己を律し、行動し、財を蓄えて不時に備えなければ、瞬時に企業が倒産するという新しい時代の自立の厳しさを痛感した。...この時期に家訓をつくり、商家の経営のあるべき姿を書きとめ、その実行を子々孫々にまで伝えたその功績は大きい」
これは、企業目的の再確認であり、経営理念の確立です。心が折れないためには、崇高な理想が必要であり、これが困難に当たっても経営者自身の心を奮い立たせるのです。

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資華は何のために必要なのか
次に平時に備えることの重要性です。今回も様々な緊急資金繰り支援策が導入・活用されていますが、本来は平時にある程度の財務的基盤の確立をしておくことが必要なのです。倒産の直接的原因は資金繰り破綻ですので、それが起きないよう、平時から純資産と現金預金を十分に蓄えておくことが必要です。歴史的にみれば10年に1回程度は不況が、数十年に一度は大規模な自然災害も発生しています。それらの有事の備えは平時にしかできないことです。儒教の根本経典である四書五経の一つの「礼記」王制第五編には、「国に9年の蓄え無きを不足と言い、6年の蓄え無きを急と言う。3年の蓄え無きを、国、その国に非ずという」という言葉が残されています。当時の中国は農業国家だったのでしょう。当然数十年に一度は大規模な自然災害が発生します。今Bの食べ物も無くなり、民が明Hへの希望も持てず、苦しんでいるときに、国家はその蔵の扉を開いて、民に食糧を与え安んずることが重要だと説いているのです。この言葉は建国30年の国家を想定し、9年分の蓄えしかなければ不足であり、6年分の蓄えしかなければ、今までのやり方が間違っていたのだから、急いで旧弊を改革しなければならない。3年分以下の蓄えしかなければ、それは国ではない、と言っているのです。そのように資金は有事に備えるため蓄積するものなのです。備前岡山藩の池田光政の命により、承応3年(1654年)の旱魃・大洪水という自然災害に対処した、陽明学者熊沢蕃山の施策の一つに次のようなものがあります。「まず藩庫を開放して1粒の米も残さず放e 出しただけでなく、なお不足する分は他国米を買入れ、また大坂蔵屋敷の蔵米を取りもどし、これらを合わせて飢えにあえぐ人々の救恤に当てるよう藩役人を督励している」これは、まさにこの礼記の精神を体現した施策に他なりません。

時代は変わる、大きく変わる
アフターコロナの時代は、今まで常識とされていた、面談・移動・捺印等々が本当に必要かと問われています。システムでできることはどんどんシステムに任せて、人間にしかできないことを仕事としてやっていこう、という方向に変わっていっているのです。もうこの流れは後戻りできないでしょう。これが、「歴史は形を変えて繰り返す」ということなのです。これは、1995年から始まっている生産年齢人口の減少と相まって、生産性向上にはIT等の活用により、生活スタイルや就業スタイルを変えていかなければならないことを多くの人々が実感しはじめています。

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このような進化の時代には、今までの商品やサービスの多くが無効・無用になる反面、その時代に必要とされる新たな商品・サービスが誕生し成長していきます。老舗は不断の革新から生まれると言われているように、素直に心を澄ませば社会が何を求めているかが自ずから理解できるでしょう。社会がなければ会社は存在できません。ならば、会社とは社会に有用な価値を提供し続けることでのみ存在を許されている、と謙虚に受け止めるべきです。このようなときこそ経営者は社会との対話の中から自社の存在意義を今一度再構築し、一層の社会へのお役立ちにまい進したいものです。