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4月1日から不動産賃貸契約のルールが見直されます

2020年3月16日

令和2年4月1日から「改正民法(債権法)」が施行されます。制定以来120年ぶりの大改正では、契約のルールが大きく見直されます。今月号では、不動産オーナーに影響のある不動産賃貸における原状回復義務や敷金のルールについて解説します。

通常損耗は借り手に原状回復義務なし
不動産賃貸の契約終了時に、借り手が貸主に物件を返還する際、旧民法では、原状回復の範囲について明文化された規定がなかったことから、トラブル発生時には、判例の積み重ねによって法的な解決が図られてきました。
改正民法では、これまでの判例の考え方に基づき、原状回復義務の範囲等について、「借り手に原状回復義務があるとしたうえで、通常の使用によって生じた損耗や経年変化については、借り手の原状回復義務の範囲ではない」といいうことが明文化されました。
通常損耗・経年変化に当たる例と当たらない例は、図の通りです。
また、貸主と借り手が合意すれば、賃貸借契約において「通常損耗や経年変化の場合についても借り手が原状回復の義務を負う」という「補修特約」を設けることが認められています。
「補修特約」によって原状回復義務の範囲を明確に定めておくことで、後日のトラブル防止になります。
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「敷金」は原則として返還する
契約時に借り手が貸主に支払った敷金についても旧民法では明文規定がありませんでしたが、改正民法では、敷金について「保証金などその名称にかかわらず、借り手が家賃の不払いに備えて担保として貸主に交付する金銭」と明確にされました。
つまり、不動産賃貸の契約終了後には、貸主は敷金を返還しなければなりませんが、以下の費用等については敷金がから差し引くことができます。

・借り手の未払いの家賃
・損害賠償金
・原状回復費用(補修特約の有無・内容で額が変わります)

借り手に家賃の未払いがあるときは、敷金から未払い額を充当できるたえ、貸主にとって、敷金は非常に重要です。


「債務の保証」のルールの見直し
家賃の不払いなどに備えて、借り手に保証人を求める場合、旧民法では、例えば、借り手の落ち度で貸家が焼失した際に、保証人に予想外の巨額な損害賠償請求がされることがありました。改正民法では、以下のような保証人保護の規定が定められました。
①個人の根保証契約では極度額の定めのないものは無効とされます。
②主債務者の死亡、保証人の破産・死亡等があった場合は、個人根保証契約における主債務の元本は確定します。
以上により、賃貸借契約で保証人を求める場合は、書面で明確に「極度額を定める」必要があります。

駐車場、資材置き場などの土地の賃貸借期間が最長50年になる
例えば、ゴルフ場、駐車場、資材置き場、太陽光発電事業用地など、借地借家法の適用のない「建物の所有を目的としない土地の賃貸借」について、改正民法では、契約期間の存続期間が現行の20年から最長50年に延長されます。
借地借家法が適用される「建物の所有を目的とする土地の賃貸借」については、従来通り上限はありません。

新ルールはいつから適用されるのか?
施行日前に締結された契約には旧民法が適用され、施行日以降に締結された契約には改正民法が適用されます。
また、施行日後、借り手と貸主の合意によって契約を更新した場合は、改正民法が適用されます。
保証人を設ける場合、賃貸借契約の中に保証人の条項を設けることが通例ですが、この場合でも保証契約は賃貸借契約とは別々の契約になるため、それぞれについて改正民法の適用を考える必要があります。

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