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「金融検査マニュアル」廃止で中小企業の融資環境が変わる!

2020年2月17日

金融庁が銀行を指導する際の手引書「金融検査マニュアル」が廃止されます。これによって、中小企業の融資環境が、これまでの企業格付け(債務者区分)重視から、個々の企業の事業内容や将来性重視へと変わることが期待されています。

Q1.これまで金融機関は、なぜ、融資判断において企業格付けを重視してきたのですか?
A.バブル経済崩壊後、多額の不良債権を抱えた金融機関の財務内容に懸念がもたれ、いわゆる金融危機が起こりました。対策として、1999年、金融庁は「金融検査マニュアル」をもとに、融資先企業の決算書の数値による企業格付けを重視した検査を行いました。その結果、金融機関の融資姿勢が企業格付けを重視するようになったわけです。

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Q2.金融機関が企業格付けを重視した結果、どのようになったのでしょうか?
A.以下のような融資環境が生まれてしまいました。
①融資先企業の事業内容(取引関係、ビジネスモデルなど)よりも、担保や保証が必要以上に重視されるようになり、特に運転資金などの「短期継続融資」(元本返済を要せず利息のみを支払う)が受けにくくなってしまった(形式重視=客観性)。

②事業の将来性よりも、バランスシート(過去の経営結果)の健全性が重視されるようになり、地域に必要な企業の再生支援や将来性のある事業への融資が難しくなってしまった(過去数値の重視=透明性)

③金融機関が、融資先企業との対話よりも、個別の資産査定(格付けなど)に集中してしまい、企業の育成・発展を通じて地域経済の活性化に貢献するといった金融機関本来の役割が弱くなってしまった(部分重視=財務情報分析)。
そのため、その要因となった「金融検査マニュアル」を廃止し、これまでの融資姿勢を改めることになりました。

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Q3.金融検査マニュアル廃止によって、何が変わるのでしょうか?
A.従来の「形式・過去・部分」を重視した融資から「実態・未来・全体」を重視した融資へと変わることになります。
「実態重視」とは、個々の企業の事業内容を評価することです。「未来重視」とは、過去数値ではなく、将来の見通しや経営計画を重視していくことです。「全体重視」とは、財務情報の分析だけでなく、ビジネスモデルや取引関係、技術力や販売力、社長の経営姿勢、ビジョンなど決算書には表れない非財務情報も評価していくことです。
言い換えると、融資において、融資先企業の事業内容や将来性を評価した「事業性評価融資」や本来支援をはじめ、担保・保証にとらわれない融資に積極的に取り組むことで、特に運転資金などの「短期継続融資」の増加が期待されています。

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Q4.今後、中小企業が融資を受ける際、金融機関に対してどのような説明が必要になりますか?
A.次の4点について説明が必要になります。
①いくら資金が必要なのか?(必要性)
②その資金を何に使うのか?(資金使途)
③どうやって返済するのか?(返済原資)
④なぜ返済できるのか?(実現可能性)
特に重要なのが、返済原資と実現可能性であり、これは、将来キャッシュ・フローと中期経営計画書で説明します。
「将来キャッシュ・フロー」とは、返済原資であり、それを生み出すための計画が「中期経営計画」になりますので、この計画によって「なぜ返済できるのか」を説明することになります。
経営計画の策定にあたっては、決算書が重要になります。決算書は、中期経営計画の策定の基(スタート台)になるものであり、融資後に金融機関が企業の業績をチェックするものであります。その情報開示には、会計事務所の支援が欠かせません。

Q5.今後、中小企業は金融機関にどのように対応すればよいのでしょうか?
A.金融機関への積極的な情報開示が必要になります。金融機関は、融資先企業への訪問や経営相談などを通じて情報を収集し、事業内容(取引関係、ビジネスモデル)や将来性などを適切に評価することになります。
そのため、日頃から、社長自身が金融機関と対話し、自社の財政状態、事業内容の現状と課題、今後の経営の方向性などを正しく伝えることが必要です。
具体的には、毎年、決算書を提出することはもちろん、毎月、試算表を提出しましょう。そのたえには、月次決算体制を整える必要があります。
また、売上や利益、事業の状況、その月のトピックスなどを交えて、社長自身が自社の状況を金融機関に説明しましょう。特に、自社のビジネスモデル、商流(受注から販売までの流れ)と得意先の状況など、試算表に表れない情報は正しく伝えましょう。