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ヒト、モノ、カネに限りのある中小企業が企業活動の源である粗利益を生み出す唯一の手段である商品やサービスを、効率的、効果的に販売するためには、中心的に販売する営業地域を決めることが重要です。
卸売業のように、仕入価格と売値がほぼ決まっていて、自社の都合によって粗利益率を高くすることが難しい業種や、製造業でも1回当たりの取引高が小口になる業種、さらに包装資材やコンクリート二次製品(電柱、ブロック、U字構など)のように、価格に対して配送コストが割高になる業種では、営業地域の決め方が特に重要になります。
【弱者の戦略7】
弱者は、市場規模が小さな地域に力を入れよ
営業地域を決める目的は、特定地域において同業者より多くの顧客を獲得し、市場占有率1位の地域(重点地域)をつくることにあります。
市場占有率1位で26%以上を確保すると、粗利益の65%近くを占める営業経費が割安になり、従業員1人当たりの経常利益が業界平均の2倍から3倍になります。
大企業と比べて経営力に限りのある中小企業であっても市場占有率1位になれる、都合の良い地域を探さなければなりません。
(1)地方にある企業の場合
例えば、離島、港町、盆地、山すそ、川べりなど、海、山、川など自然の障害物によって地域が分断され、独立性が強くなっている市場規模が小さな地域があります。
このような地域は、大企業では営業経費が割高になることから積極的に進出しないため、中小企業が力を入れれば、地域1位になれる可能性が高くなります。
損害保険の代理店、自動車整備など比較的小規模な会社が多い業種において、市場占有率26%以上を押さえて地域1位になっている会社は、このような地域に多く見られます。
もし、このような地域に本社がある場合は、地域1位を目指しましょう。
(2)都市部にある企業の場合
一つは、会社から近い地域です。もう一つは、都市の周辺で山がせり出している所、川、高速道路、鉄道などで地域から分断されている所があります。このよう地域は、盲点になりやすく、販売に力を入れると1位になれる可能性が高くなります。
このような地域で成功した例に、福岡県の地方スーパーのM社があります。同社は、県内の分断された地域に駐車場のないワンフロアの小さな店舗を出し、高い業績を上げています。
【弱者の戦略8】
弱者は、営業地域の範囲を狭くせよ
(1)最大範囲を狭くする
重点地域が決まれば、次に最大範囲を決める必要があります。経営者の多くは、営業地域を広げれば、売上が増加して利益も増加すると考え、売上が増加して利益も増加すると考え、経営力の3~5倍以上も営業地域を広げてしまっています。これでは、移動時間が増えて販売効率を悪くし、むしろ赤字経営に陥ってしまいます。経営力に限りがある中小企業は、営業地域の範囲を思い切って狭くし、重点地域を絞り、そこに1位になれるだけの販売力を投入します。
(2)仕事時間を調査する
営業地域の範囲を考えるときに欠かせないのが、営業マンが営業に費やす時間で、その内容を点検することも必要です。
①移動時間
移動は経費を使うばかりで、1円の粗利益も生みません。移動時間が仕事時間の45%を超えていたり、同業者より2割多くなっていれば、経常利益が生まれなくなります。
②社内業務時間
日々の計画をはじめ、日報の記入、会議、書類整理は必要ですが、ここから粗利益は生まれません。建築材料など、見積作業が多くなる業種は別として、通常の製造会社や卸会社では、社内業務に充てる時間が30%を超えていたら過剰投入です。
③顧客への活動時間
顧客への活動時間には、顧客との面談・コミュニケーションの他、顧客への電話、FAX、メールの時間が含まれます。
顧客への活動時間だけが、唯一、粗利益を生み出す可能性があるため、業績を良くするには顧客への活動時間の割合を、同業者よりも10%以上多くしてみましょう。
販売生産性を高めて業績を良くするには、1年に2回は営業マンの時間調査をしてみましょう。さらに、地域ごとの損益データを検討すると、営業範囲の決め方が正しいかどうかの判断ができるようになります。
【事例】営業地域を片道1時間以内に絞り込む
スズキ機工株式会社(千葉県)は、食品メーカー向けの自動機械装置や検査装置を設計・製作する従業員17名ほどの企業です。
同社は10年ほど前に、顧客の規模や業種に関係なく、営業地域を「車で片道1時間以内」に絞って業績を向上させました。
転機は、ある取引先とのトラブルです。その取引先は、車で片道2時間半以上の距離にあったことで訪問機会が少なく、信頼関係を築けなかったことがトラブルの要因と考え、営業地域を絞ることを決断しました。
営業地域が狭くなったことで、故障などにもすぐに駆け付けられるようになり、1社当たりの受注案件も増え、売上・利益が大幅に増加したのです。
顧客との関係が密接になり、顧客の困り事などの情報を得る機会も増え、"御用聞き型"の営業から"提案型"の営業ができるようになりました。また、顧客の声から新しい自社開発の製品も生まれました。
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