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企業活動の源である粗利益を生み出す唯一の手段は、商品や有料のサービスです。これが決まれば、営業手法、人の採用、資金調達なども自ずと決まってきます。中心となる商品・サービス(重点商品)を何に決めるかはとても重要です。
重点商品の決め方
自社の重点商品を決定するにあたって、多くの経営者は誤解をしています。誤解したままでは、大きく戦略を誤ります。
(1)市場規模の大きな商品を扱わない
多くの経営者は、市場規模が大きな商品を取り扱えば、売上が多くなり、利益も多くなると考えています。
しかし、市場規模が大きな商品には、経営規模の大きな会社が必ず参入しています。先月号でも説明したように、真の経営力は「商品に投入される経営力(営業マンの数、資金など)の2乗に比例する」ため、小さな会社は大きな会社から圧迫を受けて必ず苦戦します。
(2)誰でも作れる商品には手を出さない
資金を使わないか、使ってもごくわずかであり、特別な技術を必要としない、誰にでも作れる商品に力を入れてはいけません。
その理由は、経営活動の源泉である粗利益は「資金の力戦略知識戦術技能仕事時間」で決まるからです。粗利益に及ぼすウエイトは、「資金の力」が4に対して、「戦略知識」「戦術技能」「仕事時間」といった「人の力」は6の割合になります。
「戦略知識」とは、経営目標を効果的に達成するための経営手法やその知恵であり、社長の術によるものです。
「戦術技能」とは、従業員の技量、技術、実行力など、従業員の術になります。
資金をほとんど使わず、戦略知識や従業員の技能に特別高いものが必要のない、誰にでも作れる商品の場合、経験則では従業員1人当たりの年間粗利益額は450万円以下になる場合が多くなります。
この金額では、わずかな経営利益しか生み出せず、従業員に支払える給料が低くなるため、人手不足の時代においては、人の採用がますます難しくなります。
<弱者の戦略5>
弱者は、市場規模が小さな商品に力を入れよ
これまでも説明したように、商品戦略の目的は、小規模や部分など小さな市場において市場占有率1位の商品を作ることにあります。
限りある経営力で1位の商品を作るには、「社長の性格」「社長の経験」「自社の規模」「競争相手」の4つを踏まえて、1位を目指す重点商品を明確に決める必要があります。具体的には、次のような商品を探しましょう。
1番目は、特徴がある商品になります。特徴がある商品は社長の性格や社風に合っており、さらに顧客からも支持されているものです。「特徴がある商品をより強くする」ことで1位になる可能性が高くなります。
2番目は、市場規模が小さな商品です。これには大企業が手を出さないため、中小企業にとって都合の良い商品になります。
3番目は、強い競争相手がいない商品です。
4番目は、同業者が見落としていて誰も手掛けていない商品です。すき間商品やニッチと呼ばれるものがそうです。すき間商品やニッチと呼ばれるものがそうです。
5番目は、世の中に必要なものだが大企業が手を出さない商品・サービスです。典型例として、葬儀関連の業種があります。
これらの条件をもとに重点商品を決めれば、1位づくりが早くなります。
【事例】境界標識で日本一
株式会社カクマル(福岡市)は、土地の境界を示す杭やプレートなど「境界標識」のメーカーです。従業員30名程の小さな会社ですが、境界標識の全国シェアは6割を誇り、境界標識業界1位の企業です。
同社は、もとは従業員5人の小さな材木会社でした。2代目である現社長が事業を引き継いだ頃、土地の境界を測量するときに「仮の杭」として使う木製の杭がときどき売れていることに気が付きました。詳しく調べると、この杭は粗利益率が高い上に、強い競争相手がいないことがわかりました。市場規模は小さいが、測量には欠かせない商品であるため、境界測量用の杭の販売に力を入れたところ売上が順調に伸びて、九州で1位にまで成長しました。
その後、市街地で公道と私有地の境界を示す「真ちゅう製の境界標識」にも進出しました。
この製品には競争相手が数社いましたが、兼業が多かったことから、ここに販売を集中したところ、十数年後には全国1位になりました。今や同社の製品は、日本全国200万ヶ所以上に設置されています。
<弱者の戦略6>
弱者は、商品の範囲を狭くし、経営力の分散を避けよ
経営者の多くは、商品の範囲を広げたり、複数の業種を経営すれば、売上が増加して利益も増加すると考えています。
競争条件が不利な会社にとって1位づくりの妨げになるのが、商品・業種の範囲、営業地域、業界や客層を広げすぎることです。
例えば、商品・業種の範囲を広げすぎると、経営力が分散して、それぞれの商品・業種が弱くなり、かえって業績を悪くしてしまいます。
かつてのダイエーは98の業種にまで範囲を広げたことで、一時は年商で小売業界1位になりました。しかし、強い商品・サービスがなかったため、やがて商品・サービスが衰退し、社名が消える結果となりました。
ダイエーの失敗から学ぶことは、赤字の商品やライフサイクルが衰退期に入っている商品からは早く撤退すべきであり、中でも本業と関係がない「非関連の商品」に多角化しているときは、急いで撤退を決断すべきです。
撤退によって浮いた経営力を重点商品に集中投入すれば、1位の商品づくりが早く実現するでしょう。
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