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小さな会社の「必勝の経営術」③社長は1位づくりに強い願望を持て!

2019年7月29日

今月号から、競争条件の不利な会社が実行すべき「弱者の戦略」を6回にわたって説明します。
弱者という表現に抵抗を感じるかもしれませんが、この戦略は、いうなれば、1位の商品や地域をつくる方法であり、積極的な中小企業の戦略といえます。

中小企業は「弱者の戦略」で勝つ!
弱者の戦略は、競争条件の不利な会社が業績を良くするための全社的な経営のやり方であり、ランチェスターの第1法則を応用して目標を定め、運営することになります。

●ランチェスターの第1法則
攻撃力=兵力数(量)武器性能(質)
武器性能が変わらなければ、攻撃力は兵力数に比例するという法則で、刀や槍など戦闘範囲が狭い兵器を使い、敵に接近し、一対一で戦ったときに成立する。

弱者の戦略① 弱者の社長は1位づくりに強い願望を持て
(1)小規模1位、部分1位を目標にする
経営を続けていくためには利益の確保が欠かせません。しかし、利益の追求に走ると、本業とまったく関係のない業種であっても一見儲かりそうに見えると簡単に手を出してしまうことがあります。
かつてバブル経済のときは、土地、株式、商品相場、外国為替など事業に関係ないものに手を出したために、30万人もの社長が経営に失敗し、大事な人生を棒に振ったといわれています。
利益を生み出すために、最も重要なのは「顧客をつくる」ことです。中小企業は、顧客をつくるときに直接の対象となる「商品」「営業地域」「顧客層」において、将来1位になれそうな市場規模が小さなもの(小規模1位)、市場規模が大きいときは、その中の特定部分(部分1位)を目標にしましょう。

【事例】半径500mの営業地域に特化して1位を目指す
福一不動産(福岡市)は、社長の古川隆氏が大手マンション販売会社を退職後、福岡で創業しました。はじめは、大手住宅会社の代理店として、距離や地域を問わない営業活動を続けていました。しかし、大手がやるような営業スタイルでは、町の小さな不動産屋にはあまりにも効率が悪く、顧客との継続的なつながりや自社の知名度アップを図ることができませんでした。
そんなとき「弱者の戦略」を知り、「商品、営業地域、顧客層を限定し、そこで1位を目指す」ことに活路を見出しました。事務所を中州の一角に移して、そこから半径500m以内に営業地域を限定し、開・廃業の激しいスナックやバー、クラブの新規開店や店舗の移転に絞った営業を展開しまいた。
店舗の稼働率を上げる為に、顧客が借りやすいように手数料や経費を見直すとともに、店の繁盛のための勉強会を開催するなど顧客に密着した営業を展開し、現在は中州の約2,300店舗の3分の1ほどが同社の仲介物件になりました。同社の営業地域はかつての100分の1ほどですが、年商は3倍にまで拡大しました。

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ランチェスター法則の応用から導き出された市場占有率の原則によれば「市場占有率1位になって26%以上を押さえ、かつ2位との間に10対6以上の差をつける」と、従業員1人当たりの経営利益は業界平均の2~4倍多くなります。
中小企業でも、特定の商品や市場等において市場占有率1位の会社となれば、従業員1日当たり経営利益が高くなります。

(2)1位づくりの意欲を持続させるには
商品、営業地域、顧客層において1位になるには、会社のリーダーである社長が「何としても競争力がある強い商品をつくる。何としても同業者より多くの顧客を獲得した1位の営業地域をつくる」という、強い願望や熱意がなければなりません。
社長の熱意は、1位づくりに必要な情報を呼び込むとともに、従業員にも良い影響を与え、1位づくりの達成により弾みがつきます。
もちろん1位づくりには、7年や10年といった年月を要することは珍しくなく、いつの間にか、社長の意欲が薄れて、他に関心が移ってしまう恐れがあります。意欲を維持するには、1位を持っている中小企業の社長を探して、その人と交流することです。薄れかけた意欲が再び強くなります。

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弱者の戦略② 弱者は自社より大きな会社を攻撃しない
(1)かつての日産は攻撃目標を誤った
経営に競争は付き物です。大きな会社を攻撃目標にすると、勇ましく、格好も良く見えます。しかし、ランチェスターの法則が示すように「会社と会社の真の力関係は、ある局面に投入される経営力の2乗に比例する」ことから、経営規模の小さな会社が大きな会社を攻撃目標にした場合、大概ひどい結果になります。
かつて日産自動車はトヨタを攻撃目標にしていました。しかし、当時の日産自動車の市場占有率はトヨタの半分しかなく、1対0.5でした。
その結果、従業員1人当たりの経営利益はこの2乗で1対0.25になっていました。やがてバブル経済の崩壊とともに、日産は赤字に転落し、フランスのルノーに資金援助を求めたのでした。
強気な性格の社長、かつては1位だったが今は2位以下に落ちている会社の社長は、大きな相手を攻撃目標にする傾向が強いため、くれぐれも用心してください。

(2)"ダメな会社"を攻撃目標にせよ
どのような会社を攻撃目標にすればよいのでしょうか。一例を挙げると、社長の出勤が遅く、経営に本気で取り組んでいないような会社の顧客を狙います。
このような会社の顧客は、商品の品質が悪い、納期が遅いなど、取引に不満を持っている場合が多く、そこを正攻法で開拓すれば取引できる可能性が高くなります。