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「ランチェスター法則」には、「強者の戦略」と「弱者の戦略」の2つがあり、多くの中小企業は、弱者の戦略で経営すべきですが、まずは、敵を知る意味で「強者の戦略」の特徴を理解しましょう。
強者の戦略とは、次の3条件を満たした会社だけが実行できる「社長の経営術」です。
1.市場占有率(業界)が1位である。
2.市場占有率が26%以上ある。
3.2位と10対6以上の差をつけている。
強者の戦略は、商品、営業地域、客層、営業方法など経営を構成する要因に対し、ランチェスターの第2法則をもとに目標を定めて、運営することになります。
◎ランチェスターの第2法則
攻撃力=兵力数の2乗武器性能(質)
武器性能(質)が変わらなければ、攻撃力は兵力数の2乗に比例するという法則で、機関銃や戦車、戦闘機などの射程距離が長い兵器を使い、敵と離れて戦ったときに成立する。
強者の戦略① 強者は、総合で1位になることを目指す
ある商品又はある地域で戦略的に1位になれば、従業員1人当たりの経営利益が業界平均の2~4倍は多くなります。この力を利用して、強者は1位の商品や地域を増やし、総合1位になることを目指します。
強者の戦略② 強者は、市場規模の大きなものに力を入れる
強者は、数ある商品の中から市場規模が大きなものに力を注いで1位を守ります。
また、営業地域や市場を広げ、人工の多い大都市に特に力を入れます。支店や営業所をいくつも置いて、多数の販売担当者を配置して1位の地位を守ります。
強者の戦略③ 強者は、市場の範囲を広くする
商品であれば、商品の幅を広くして、商品市場全体に盲点を作らないようにします。トヨタ自動車も、数多くの車種を作ることで、市場の範囲を広くしています。
営業地域であれば、範囲を広げて、多数の支店や営業所、販売担当者を配置して、地域市場全体を押さえようとします。これにより売上が多くなるばかりか、弱者が大きくなることを防いでいます。
強者の戦略④ 強者は、新製品開発に力を入れる
1位の商品地位を確立しても、年月とともに陳腐化します。その隙を突いて、弱者が新製品を発売すると逆転される恐れがあるため、資金力を活かして新製品開発に力を入れます。
この原則を守らず失敗したのがソニーです。ソニーは、ウォークマンで世界的に1位になったあと、携帯用CDプレイヤーを発売しましたが、そこで立ち止まってしまいました。その後、アップルがiPodを発売すると、短期間で市場を奪われる結果になりました。
強者の戦略⑤ 強者は、卸会社を使った間接販売をする
卸会社は長年の営業活動によって、何社もの販売店や小売店との取引があります。強者は、複数の卸会社を利用して地域市場のカバー率を高くします。すると売上が増えるだけでなく、弱者が大きくなるのを未然に防ぐことにつながります。
強者の戦略⑥ 強者は、テレビや新聞などのマス広告を利用する
強者のメーカーが卸会社を利用して間接販売をすると、販売店や最終利用者との人間関係が弱くなります。これをカバーするために、テレビや新聞、ネットを使ったマス広告を利用します。あるいは、駅や空港など人が大勢集まる場所に、大きな広告を出して、会社の認知度を高めます。
強者の戦略⑦ 強者は、弱者が新製品を出せば、直ちに同じ商品を発売する
弱者が業績向上を狙って新製品を発売したとき、それを放置すると、弱者が勢いづき、やがて強者の地位を脅かし始めます。
そのような事態を防ぐため、強者は直ちに弱者と同じ商品を発売して、弱者の売上が伸びないようにします。それには多くの経費が必要になりますが、これは1位の地位を守るためのいわば"損害保険"であり、手抜きはできません。
かつてキリンビールは、アサヒビールが「スーパードライ」を発売したとき、「お手並み拝見」と手をこまねいているうちに地位を逆転されてしまいました。
強者の戦略⑧ 強者は、資金力を活かして関連会社に出資する
強者は、市場の範囲を広くする(強者の戦略③)過程で、都合の良い会社があれば、それをM&A(出資や買収)することで、弱者を包囲します。M&Aは、強者の戦略です。
弱者が「良い会社が売り出されているから」という理由で、本業と関係ない会社をM&Aしてはいけません。
弱者の戦略⑨ 強者は、重装備な経営をして弱点を作らないようにする
弱者は、生産に必要な機械、土地や工場に大胆に資金投資して、重装備な運営をすることで、弱点を少なくして弱者がつけ入る隙を与えません。
以上が強者の戦略の中心部分になります。
強者の戦略が実行できる会社は、わずか0.5%しか存在しませんので、強者の条件を満たさない会社が、この戦略のマネをすることは思い止まるべきです。
※次月からは「弱者の戦略」を6回に分けて解説します。
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