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セールスでは「コーヒー1杯分の料金で~できます」といったトークがよく使われます。これは「1つの身近なもの」に置き換えることでイメージがしやすくなるからです。この発想と同じで、「1日あたり・1人あたり・1時間あたり」などに細分化していくことで、一見、難しい数値目標であっても、対策が考えやすくなります。
大きな数値は「1」の単位に細分化してみよう
「市乃庵」は、そば粉と汁にこだわったそばと、旬の素材を使った天ぷらが評判のそば屋で、昨年、銀行からの借入れで店舗を改装したばかりです。座席数は30席と中規模で、1日の来客数は120人程度です。
当期の売上は、3,600万円となりそうですが、経営計画の策定にあたり、来期の売上目標について、顧問会計事務所の所長からアドバイスを受けました。
◎そば屋「市乃庵」の概要
年間売上:3,600万円
1ヵ月の営業日数:25日
顧客1人あたりの売上:1,000円
1日の来客数:120人
所長:当期の売上は3,600万円になりそうですが、借入金返済や社長の役員報酬を踏まえて、来期は4,000万円を目標にしないと、資金繰りがきつくなります。
社長:400万円もアップするのは、とても無理ですよ...。そう簡単にお客様を増やすことはできません。
所長:はじめから無理と言わずに、一緒にいろいろ考えてみましょう。400万円というと漠然とした数字ですが、これを月や営業日、来客数などで割り算して、1ヵ月あたりや1日あたり、顧客1人あたり、などの数字に置き換えてみると考えやすくなります。
保険のセールスなどで「1日あたりコーヒー1杯分の保険料になります」といったトークがよくありますね。あれも、コーヒー1杯という小さな単位に落とし込むことで、わかりやすくしているのです。
年間の売上目標を顧客1人あたりに落とし込む
所長:まずは、現在の売上を1ヵ月あたり、1日あたり、顧客1人あたりに、小さくして見てみましょう。
社長:売上(年間3,600万円)は、1ヵ月平均300万円です。営業日は月25日なので、1日あたりだと12万円の売上になります。1日の来客数は120人です。
所長:すると、顧客1人あたりの売上(客単価)は、1,000円ということですね。では、仮に客単価を1,000円から1,100円に上げることができれば、1日の売上は、13万2千円(1,100円1日の来客数120人)になります。
社長:1ヵ月だと330万円(13万2,000円25日)。1年間だと、3,960万円(330万円12ヵ月)になりますから、目標の4,000万円にあと少しで届きそうですね。
「顧客1人あたり100円」を増やせばよいと考えると、そんなに難しい目標でもないような気がしてきました。
小さな数字に置き換えれば具体的な行動が見えてくる
社長:先ほど、顧客1人あたりの売上でしたが、例えば、1日の来客数で考えることもできるわけですね。
◎1日の来客数が何人になれば、売上目標4,000万円を達成できるか?
4,000万円(12ヵ月25日)1,000円≒134人
所長:1日の来客数が134人になれば、つまり、あと14人増やせば目標達成ですね。
実際に、客単価を上げたり、来客数を増やしたりすることは、そうたやすいことではありませんが、小さな単位に置き換えれば、現場レベルで実践できることが見えてくるはずです。
例えば、メニューの見直しや工夫、価格の見直し、自慢の逸品メニューの強化、関散日の来客数の増加策など、考えるテーマはたくさんあります。
社長:客単価のアップ策であばれ、そばや丼物の単品よりも、そばとミニ丼のセットメニューを増やすことで単価を上げる、高齢者やお子様向けのメニューを増やして、家族客の来店を増やす、といった方法が考えられますね。
所長:消費税率10%を見据えてメニューの充実と価格の改定、表示の仕方を早急に検討しましょう。
出前の場合、軽減税率8%が適用されことから、出前のニーズにも対応しましょう。
目標設定は、経営者の役目。行動を考えるのは従業員の役目。
社長:客単価を上げる、来客数を増やすにはどうすればいいか、どんな方法があるのか、これらを早速、従業員と話し合って、思いつく方法を考えてみます。私よりも、良いアイデアを持っているかもしれませんから。
所長:それがいいですね。目標を立てるのは、経営者の役目であり、目標達成のための具体的な方法やアイデアを考えるのは、従業員の役目といってもいいでしょう。
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