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外部環境の変化を分析して、自社の新しい戦略を考えよう

2019年1月14日

「AI技術の進展」「人口減少」「外国人労働者の受け入れ」など、外部環境の変化が従来にも増したスピードで到来しています。これらの変化が自社にどのような影響を及ぼすのかを考え、そこから、自社の経営改善の方向性を探っていくことが重要になってきます。

1.マクロ的な外部環境の変化を知る
社内で「価格改定」や「コスト削減」などに関する検討を行う場合、企業内部からの発想によることが少なくありません。しかし、AI技術の進展や人口減少など外部環境が大きく変化する昨今では、自社の足下に、従来とは異なった脅威が迫っている可能性があります。外部環境の変化が経営に及ぼす影響には次のようなことが考えられます。

<経営に影響を及ぼす外部環境の変化>

  • 人口減少によるマーケットの縮小
  • 技術革新により自社の商品や技術力が陳腐化してしまい売上が大幅に減少
  • 人手不足が要因で新たな仕事の依頼がきても断らざるを得ない
  • 環境などの規制が強化された結果、原材料の価格が高騰し、生産コストが増加した
  • デフレによる消費者の低価格志向が進む



2.自社の周りのミクロ的な環境変化を分析する
外部環境には、人口減少、デフレ、技術革新、制度改正などのマクロ的な環境だけでなく、自社や自店舗の商圏・周辺事情の変化、取引先や競合他社、顧客の動向などの身近なミクロ的な環境もあります。このようなミクロ的な要因まで落とし込んで活かす必要があります。
外部環境をしっかり把握し、その対応策を検討する際に用いられるのがSWOT分析です。

<ミクロ的な要因を探ってみる>

  • 自社や自店舗がある地域や商圏に絞った場合の周辺人口や労働力人口の動向
  • 周辺の主な世帯層(高齢世帯、ファミリー層、単身層など)はどれか
  • 飲食業などで、こだわりの食材を使う場合は、天候不順による価格の高騰や供給不足の影響を受けやすくないか
  • 近隣に大手資本のチェーン店が出店する予定はないか
  • 人材不足による人材確保のため、今後も賃金が上昇しないか



3.4つの視点から自社を分析する
SWOT分析とは、「市場の機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」を可視化して把握し、経営方針の検討材料を明らかにするための手法です。
市場の変化を知ることが現状分析の出発点となります。まず、機会(O)と脅威(T)の外部環境の洗い出しから始め、抽出した外部環境を見ながら、自社の強み(S)、弱み(W)の内部要因を洗い出します。

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1.機会...市場・消費の動向、商品の需要を整理し、様々なビジネスチャンスを検討する
2.脅威...自社の努力ではどうにもできない外部環境マイナス要因を整理する
3.強み...同業他社と比較したときに、具体的に「機会」に活かせる強みを考える
4.弱み...成長発展や改革を進めるうえでのネックとなっているポイントを整理する


過去の成功体験を自社の強みと思いこみがちですが、ここからは新しい戦略は出てきません。自らでは変えることのできない外部環境への対応に活路を見出しましょう。

4.「機会」と「強み」を組み合わせる
下図は、顧客の低価格化志向が進むなかで、客数アップのためのSWOT分析を活用したイタリアンレストランの事例です。
この事例では、外部環境の機会と内部要因の強みを分析して「女子大学が近くにあるので、認知度が上がれば稼働率は上がる」という機会に、「すべて手作りで味に自信がある」という強みを組み合わせて「学生向けのランチメニューに加えてアイドルタイムに客席を女子大生のサークルに開放するファン化戦略を検討しました。また、「ワンコインメニューのニーズはある」という機会に、「十五穀米、豆乳、オリジナル野菜ジュースで健康志向を意識したメニューを提供している」という強みを組み合わせて「健康志向のワンコインのテイクアウトランチの開発」に取り組み、さらに、学生がいない土・日の稼働率を上げるため女子会などに気軽に利用できる工夫を検討し、経営改善への一歩を踏み出しました。

このように、SWOT分析を活用すれば、外部環境の機会と、内部環境の強みを組み合わせて経営改善に結びつけた戦略の検討が可能になります。
これまで成立していたビジネスが成り立たなくなる前に外部環境をきちんと捉え、自社の経営を再確認してはいかがでしょうか。

<事例:稼働率アップを模索するイタリアンレストラン>
月商300万円、従業員数4人のイタリアンレストランCは、地域の中でやや高級感がある店として定着していました。しかし、外食業界の低価格化が進み、ファミレスのパスタやピザが脅威となり、毎年5~7%程売上が減少し赤字が常態化していました。営業からすればするほど、赤字が続く悪循環を何とかして止めたいのですが、コスト削減といっても単店舗では効果が出にくく、ましてや原価を落とすことは品質の劣化につながることから、オーナーも望んでいません。そこで、下図のように"顧客志向の「機会」の徹底検証"を目的としたSWOT分析を行い、現状を打破するための戦略を検討しました。

 (目的に対して)ポジティブ(目的に対して)ネガティブ
内部環境

強み(S)

  • すべて手作りで味に自信がある
  • 十五穀米、豆乳、自家製野菜ジュースで健康志向を意識したメニューを提供している
  • 飽きがこないようメニューを毎月変えている

弱み(W)

  • 喫茶メニューが少なく、喫茶目的の客は近隣のハンバーガーショップ、ドーナッツ店に奪われている
  • 人手が足りず、営業時間内は手一杯である
外部環境

機会(O)

  • 女子大学が近くにあり、学部が新設され、学生数が増える
  • ワンコインメニューのニーズはある
  • 商品提供の工夫次第でテイクアウト市場はまだまだ伸びる

脅威(T)

  • 客の財布の紐が堅くなるので、外食は高級志向から削っていく
  • ファミレスの強みに低価格、ドリンクバー、24時間長居できる等があり、客を奪われている