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企業存続のために最も大切な「利益」の考え方とは?

2018年12月10日

「企業は存続しなければならない。そして、そのためには何をすべきか?」
2019年の年頭にあたって、経営学者P.F.ドラッカーが企業存続のための絶対条件としてあげている「利益」について考えてみましょう。

利益は幻想、存在するのはコストだけ?
事業経営においては、目標とする売上を獲得すると同時に、しっかりと利益を確保することが重要です。
しかし、ドラッカーは「利益は幻想、存在するのはコストだけだ」と述べています。
それはなぜなのでしょうか?
(1)利益=キャッシュではない
私たちは企業の決算書(損益計算書)に表示されている「利益」を見て「儲かった」と思いがちですが、この「利益」を見て「儲かった」と思いがちですが、この「利益」は計算上、売上(収益)から費用を差し引いた金額がプラスであるという意味で「キャッシュ」(現金)が増えているという意味ではありません。

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例えば、下図のA社のように、売上も費用も全て現金で取引されれば、利益とキャッシュ・フロー(現金の収入・支出)は一致するのですが、実際の取引では、売上や仕入が掛けで取引されることが多いため、利益とキャッシュ・フローが一致するとは限りません。B社やC社の場合、売上時点で利益が出ているように計算されても、実際に現金が預金口座に貯まってはいません。

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利益に関係なく、会社の血液ともいえる現金が不足すれば会社は破綻することになります。
※現金の他、普通預金・当座預金・現金同等物も含まれる。

(2)会社はコストの塊
ドラッカーは、「およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのはコストセンターである。技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させることだけは確実である。しかし成果に貢献するかはわからない」と企業活動の本質をついています。
利益は企業の外部からしか獲得することはできません。営業活動を通じてお客様から商品の注文をいただき、その代金が回収できたときに、はじめての利益を獲得したことになるのです。それまでは、単にコストを消費しているにすぎません。
したがって、社員が意識して利益を生み出す活動に力を注がなければ、社員はただ忙しいだけで、その活動に要したコストは、利益として回収されないことになってしまいがちです。


利益とは何か?
ドラッカーは、「未来のリスクを賄うための利益、事業の存続を可能とし、富を生み出す資源の能力を維持するための最低限度の利益をあげることは、企業にとって絶対の条件である」として、利益には次の3つの役割があると述べています。

(1)事業の妥当性のモノサシ
第1は、事業の妥当性を評価する役割です。
「自社の商品やサービスが、本当に顧客から喜ばれているのか?」その自分たちの仕事ぶりを評価するための一つの指標が利益だととらえることもできるでしょう。

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(2)様々な事業リスクに対する備え
第2は、事業活動における様々なリスクをカバーする役割です。
そもそも経済活動は未来に焦点を合わせているため、不確実性、すなわちリスクは避けられないものです。しかも、経済活動は長期間にわたるため、そのリスクに備えるには、毎年、利益を出し、キャッシュを増やし続けるように、経営努力をすることが必要です。

(3)資金調達の手段
第3は、資金調達の手段としての役割です。
設備投資のための資金調達の手段として見た場合、利益は投資資金の源泉となり、また、金融機関から借り入れを行う際の定量的な評価の一因ともなります。利益が、外部資金導入の際に有利な条件を引き出す要因となることで、経営革新と事業の拡大に必要な資金調達を可能にします。

これまで利益の考え方について述べてきましたが、会社は、目指す目標を実現するためにコスト(お金)を使い、そのコストを十分に賄えるだけの利益を生み出す活動に力を入れなければなりません。今年を財務体質強化の年にしていきましょう。