MENU

福耳通信

miyachannel

HOME > 福耳通信 > 被災したとき・被災地を支援したときの税制上の支援

被災したとき・被災地を支援したときの税制上の支援

2018年9月17日

近年、日本では、地震、風水害などの思わぬ自然災害が増えています。会社や個人が被災した場合の復旧費用や、取引先の復旧支援や被災とへの援助にかかった費用については、税制上の特例によって損金算入などが認められます。

1.法人が被災したとき
(1)被災した商品、建物等の損害額は損金になる
商品、店舗、事務所、工事等の資産(たな卸資産、固定資産)の損害額は損金になります。被害を受けた店舗・事務所など、建物の取壊しや撤去のための費用も損金にすることができます。

(2)被災資産の復旧費用を修繕費にできる特例がある
建物、機械、車両、備品等の復旧費用について、次のような場合には、修繕費として損金にすることができます。

1.現状を回復するための費用
2.二次災害を防ぐため、被災した固定資産の耐久性を高めるための補強工事、排水又は土砂崩れ防止等のための工事費用
3.上記①②以外で、例えば、修理代金の明細書に「修理工事一式」としか記載されていないなど、修繕費か資本的支出かを区別することが難しいときは、かかった費用の30%が修繕費になる
4.会社が借りている土地、建物、機械装置等が被災したため、修理義務はないものの、復旧のために会社が補修した場合の費用

(3)新たな資産の取得は資産として計上
被災した資産の修繕に代えて新たに資産を取得した場合は、その費用は修繕費ではなく、資産の取得価額として資産計上します。

(4)災害により生じた損失による欠損金額
青色申告法人でなくても、災害により生じた損失による欠損金額については、欠損金の繰越控除と繰戻しによる還付の制度が設けられています。

(5)地域指定による申告、納付期限の延長
自然災害が都道府県の全部又は一部の地域にわたり広範囲にわたった場合に、国税庁長官が、地域及び期日を指定して、申告、納付等の期限の延長が行われます(申請手続きは不要)。
miyake10-4.jpg

2.個人が被災したとき
(1)個人の住宅や家財等の損害は雑損控除などが受けられる
サラリーマンなど個人が、住宅や家財等の被災によって損害を受けた場合は、次のいずれかの方法によって、所得税の軽減をはかることができます。

①所得税法の雑損控除
住宅・家財等の被害額の一部を雑損控除として所得金額から控除することができます。
控除できる金額は、次の2つのうち金額が多いほうになります。
●差引損失額―総所得金額等10%
●差引損失額のうち災害関連支出の金額―5万円

②災害減免法による所得税の軽減免除
住宅・家財の2分の1以上が被害を受けたときに、その年の合計所得金額が1,000万円以下であれば、所得金額に応じて所得税の軽減、又は免除が受けられます。

(2)特定非常災害に指定された場合の相続税・贈与税の課税価格の特例
災害が「特定非常災害」に指定された場合、相続税・贈与税の申告において特定土地等及び特定株式等の評価額を特定非常災害発生直後の価額とすることができます。

(3)その他の特例
災害時には次のような特例もあります。

1.住宅ローン減税の適用の特例
2.財形住宅・年金貯蓄の非課税措置の特例
3.住宅取得等資金の贈与税の特例措置に係る贈与税の特例

3.法人が被災地や被災した取引先等を支援したとき
被災した取引先等を支援するためにかかった次のような費用は、税務上、損金にすることができます。

(1)災害見舞金を贈る
被災し、通常の営業ができなくなった取引先に、取引関係の維持や復旧支援のために贈った災害見舞金は、金額が損金になり、消費税においては不課税取引となります。

(2)事業用資産や救援物資を贈る
法人が製造した製品や他から購入した物品が、取引先の事業用や従業員の福利厚生のために使われるのであれば、損金になります。
自社の製品等を取り扱っている小売業者等に対して、被害にあった製品の無償交換や補填も、損金になります。
例えば、衣料品や食品メーカーが、自社製品を救援物資とそして被災地へ贈った場合も全額を損金にすることができます。なお、無償での提供は消費税では不課税取引になります。

miyake10-5.jpg

(3)その他、損金にできる費用等
取引先の復旧過程において、その復旧支援を目的として行われる次のようなケースも、その費用等を損金にすることができます。

1.売掛金等の免除
2.低利や無利息で融資を行った場合に、通常受け取るべき利息分との差額

4.個人で被災地へ寄附したとき
義援金は、被災された方の生活支援や再建のために、被災の程度に応じて、被災された方に直接お金が届けられるものですが、被災した自治体が行う復興対策に活用してもらいたい場合、その自治体へ直接寄附する方法か、ふるさと納税を活用する方法があります。
なお、税務申告のために、以下のいずれかの書類を保存しておきます。

寄附先の自治体等の受領書
郵便振替の受領書や銀行振込票の控
募金団体の預かり証

※災害時には、様々な税制の特例がありますので、事前に会計事務所にご相談ください。