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国が進めるデジタル・ファーストで税務はどう変わる?

2018年8月13日

あらゆる分野でAIやITの導入が進んでいます。政府の「経済財政運営と改革の基本方針2018」では、アナログ行政から決別し、行政手続きを原則としてデジタルで完結させる「デジタル・ファースト」の推進を掲げています。税務行政においても、デジタル化に向けた税制改正や仕組みづくりが進められており、紙からデジタルへの流れが加速しそうです。

10年後の税務はデジタルが主流になる
国税庁は、AIやITを活用する納税環境を構築し、納税者の利便性向上(スムーズ・スピーディ)と、納税環境の効率化・高度化(インテリジェント)を概ね10年を目途に段階的に取り組むとしています。
平成30年度税制改正では、納税環境の電子化を促進する改正が行われ、「『税務行政の将来像』に関する最近の取組状況」(6月20日公表)には、納税手続きのデジタル化のイメージなどが紹介されています。

消費税改正、軽減税率を控え帳簿書類のデジタル化が進む
税法では、仕分帳・元帳などの国税関係帳簿書類は、紙での保存が原則です。会計ソフトに入力した電子データは、紙に出力して初めて税法上の帳簿書類になりますが、電子帳簿保存方法に基づき、所轄税務署長への申請・承認によって電子帳簿(電子データ)での保存が可能になっています。
今後、消費税における「請求書・帳簿書類の記載事項の増加」や「軽減税率導入による消費税率の複数管理」による事務負担の増加が見込まれ、電子データによる保存や帳簿と証憑間のデータ連携が重要になってきます。
税制では、電子帳簿や電子申告を行えば、個人事業者の青色申告特別控除の控除額を10万円優遇するなど、デジタル化を後押ししています(2020年分以後の所得税から)。
帳簿だけでなく、書類についてもデジタル化が進みそうです。前途の電子帳簿保存法では、会計ソフト等で作成した電子データ等による保存のほか、取引先から受け取った請求書や自社で作成した請求書等の写しなどをスキャナやスマートフォンによって電子データにして保存することが認められています。

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●電子帳簿・スキャナ保存のメリット
紙の帳簿や書類が電子データになることで、保存にかかるコストやスペースを削減(倉庫、キャビネット、家賃など)することができます。
また、過去の帳簿を確認できるうえ、スキャナ保存した証憑と帳簿を紐づけることで、伝票と証憑を同時に確認できるなど経理業務の効率化をはかることができます。
※TKCのFX2等の自計化システム、電子帳簿やスキャナ保存は、電子帳簿保存法に完全準拠しています。

控除証明書のデジタル化で年末調整の事務負担を軽減
年末調整事務では、従業員の生命保険料控除、地震保険料控除、住宅ローン控除の申告書の提出が必要ですが、これらの手続きがデジタル化されます(2020年10月1日以後に提出する保険料控除等申告書から導入予定)。
従来は、保険会社や銀行から従業員の元に郵送された各種の控除証明書と申告書を経理担当者が受け取り、内容の確認と保管が必要でした。
この手続きがデジタル化されれば、保険会社等から控除証明書を電子データで受け取った従業員がオンラインによって簡便、正確に勤務先へ提出できるようになります。
企業にとっては、控除証明関係の書類を確認・保管する事務負担の軽減につながります。

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電子申告のさらなる推進、中小企業の普及率85%超へ
平成30年度税制改正では、大企業(資本金1億円以上)について、電子申告(法人税、消費税、地方法人税、法人住民税、法人事業税)が義務化されました(2020年4月1日以後に開始する事業年度から)
中小企業は、税務申告の手続きを会計事務所に委託している場合が多く、すでに電子申告の普及率が75%を超えていますが、将来の100%化に向けて、当面、普及率85%超を目指すとしています。

個人の還付申告はスマホで完了
サラリーマンなど一般の利用者が多い医療費控除やふるさと納税等の還付申告を対象にスマートフォン、タブレットでの申告が可能になります(2019年1月導入予定)。

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QRコードを使ってコンビニで納税ができる
電子納税には、ダイレクト納付、インターネットバンキング等による方法がありますが、これらの方法に加えて、QRコードを利用したコンビニ納付が可能になります。
例えば、自宅等において、国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」等から納付に必要な情報をQRコードとして出力することで、コンビニでの納付ができるようになります(2019年1月導入予定)。
※ダイレクト納付について、税金の種類別に異なる預貯金口座を使用してダイレクト納付ができるようになりました。