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労務トラブルを防ぐためのルールブックはありますか?

2018年7月16日

労働基準法の改正をはじめとする「働き方改革関連法」が国会で審議されています。この改正は、経営者側から見ると、労働規制の強化といえます。しかし、中小企業では、労働法規の理解が不十分で、就業規則が未整備、あるいは労働条件を明示していないなどの例があります。

就業規則の作成義務がなくても労働条件の明示が必要
従業員(パートタイマー、アルバイトを含む)が常時10人未満の会社には、就業規則を作成する義務はありません。
そのため、労働条件等が不明確なまま雇用して、後で、トラブルに発展するケースが少なくありません。

<事例>
定年退職を拒否されてしまった
IT企業A社は、従業員8人ほどのため、就業規則を作成していませんでした。
創業間もない頃、中堅企業を定年退職したばかりのB氏を総務・経理担当として雇用していましたが、その後、後任者の目途がついたため、雇用義務年齢の63歳になったB氏に定年退職を打診しました。ところが、「採用時にそのような雇用契約もしていないし、定年を定めた就業規則もない」との理由で、退職を拒否されてしまいました。
その後、話し合いを重ね、結局、退職金を支払うことを条件に退職を納得してもらいました。
※定年は、雇用契約や就業規則に定めがなければ、その効力がありません。

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就業規則の作成義務のない会社であっても、従業員を1人でも雇用する場合は、労働時間や賃金、退職について最低限の事項(労働契約)を定めなくてはなりません。
従業員を雇用する際には、労働条件について雇用契約書を交わすか、「労働条件通知書(雇入れ通知書)」を交付する必要があります。

<労働契約とは?>
労働契約とは、労働者が労務を提供し、それに対し使用者が対価(賃金)を支払うことを約束した契約のことをいいます。
口頭による契約であっても労働者・使用者の両者がその契約内容に合意していれば労働契約自体は成立しますが、「言った・言わない」のトラブルなどを避けるためにも書面にする必要があります。


自社のルールブックとしてトラブル防止に役立つ

近年、従業員の労働法への意識が高まっています。在職中は何事もなくても、退職後に、賃金未払いや不当解雇で訴えを起こされるトラブルも決して他人事ではありません。
就業規則は、作成義務の有無に関わらず、トラブルの防止や従業員が安心して働くために重要なものです。そのため、作成義務のない会社でも作成している例が多くあります。

(1)労務トラブルの防止に役立つ
就業規則がない、あるいは内容が不備なために、例えば、不良社員への対応ができないといった例もあります。
就業規則によって、労働条件や会社のルールが明確であれば、従業員のルール違反が一目瞭然になり、ルールに基づいた対応や処分を行うことができます。

(2)社員が安心して働ける
就業規則によって、労働条件や給与、退職金、有給休暇、育児・介護休業などが明確にされていれば、従業員は安心して働くことができ、定着率向上や人材採用にも良い効果が得られます。

就業規則は実態に見合っていますか?
従業員が常時10人以上の会社は、就業規則の作成が義務づけられています。
就業規則には、労働時間、賃金、退職についての事項を必ず記載する必要があります。

労働時間 始業・終業時刻、休憩時間、休日・休暇など
賃金 賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切・支払時期、昇給など
退職 解雇事由など

また、退職手当、臨時の賃金(賞与)、安全衛生、災害補償・業務外の疾病扶助、労働者に負担をさせる食費、作業用品その他に関する事項がある場合は、それらも記載しなければなりません。
すでに作成している企業は、その内容に不備がないか、実態に見合っているかを確認しましょう。作成や見直しをする際は、現実の労働時間、賃金等の労働条件、現場規律の制度や慣行を整理し、改善点を含めて内容を検討します。
市販の「モデル就業規則」を参考にする場合は安易に流用してしまうと、後でトラブルになることもあるため、注意しましょう。

<参考:労働条件通知書に定める主な事項>

  • 労働契約(雇用)の期間の有無
    ※期間の定めがある場合は、期間(〇年〇月〇日~△年△月△日)を明示する。
  • 就業の場所・従事する業務の内容
  • 始業(〇時〇分)と終業(△時△分)の時刻
  • 所得労働時間を超える労働の有無
    ※ある場合は、1週〇時間、1ヵ月〇時間、1年〇時間を明示する。
  • 休憩時間( 分)
  • 休日(定例日:毎週〇・〇曜日、国民の祝日)
  • 休暇(年次有給休暇・6ヵ月継続勤務で〇日など)
  • 休日労働(有:1ヵ月〇日、1年〇日)
  • 賃金(基本賃金 月給〇円)/諸手当(〇手当/〇円)
  • 退職に関する事項(解雇の事由や定年の有無など)
    ※定年制がある場合は(満〇歳)を明示する
    ※解雇事由の例「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき」など
  • 昇給について(口頭でも可)