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特例事業継承税制を活用しよう

2018年6月 4日

カテゴリ: 税務

今後10年間に、70歳を超える中小企業等の経営者は約245万人になりますが、その半数以上は事業継承の準備ができていないと言われています。後継者への引継ぎを支援するために、平成30年度税制改正では、「特例事業継承税制」が10年間の期間限定の措置として創設されました。


後継者の自社株の税負担がゼロに
先代経営者が後継者に非上場株式等を贈与・相続した場合に、その納税の猶予を受けることができる従来(現行)の事業継承税制(以下、現行税制)では、納税猶予の対象となる株式数、評価額の割合、雇用要件の確保などに様々なリスクや不便さがあり、適用を見合わせる例もありました。
新たに創設された「特例事業継承税制」(以下、特例税制)では、現行税制の要件を大幅に見直して、不便さの解消を図り、大変利用しやすくなっています。

特に、対象株式数の上限撤廃(現行税制は3分の2まで)と、猶予対象の評価割合が100%(現行税制は贈与:100%、相続:80%)になったことで、後継者が取得する自社株式への贈与税・相続税の負担がゼロにできることが、大きなメリットになりました。

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【要件等が大幅に緩和され利用しやすくなった特例税制】

 現行税制特例税制
対象株式 発行済議決権株式総数の3分の2 発行済議決権株式総数のすべて
評価割合 贈与:100%、相続:80% 100%
贈与者 【改正前】先代経営者のみ
【改正後】複数の株主
複数の株主
後継者 後継経営者1人のみ 後継経営者3名まで(10%以上の持株要件あり)
雇用確保要件 5年平均で80%を維持 雇用確保要件を実質的に撤廃
※雇用確保要件を満たさなくなった場合、認定支援機関の意見(経営悪化の場合は、指導・助言)があれば猶予が継続
相続時精算課税 子・孫のみ 子・孫以外の親族や第三者まで適用可能
承継期間後の減免 民事再生・会社更生時にその時点の評価額で相続税を再計算し、超過部分の猶予税額を免除 譲渡・合併による消滅・解散時も追加。この場合の売却・廃業時の株価で再計算し、納税猶予額が下回る場合は差額を減免
特例承継計画 不要 必要(提出期間:平成30年4月1日から5年間)
適用期間 制限期間なし 平成30年1月1日から平成39年12月31日の贈与・相続まで

 

納税猶予を受けるための手続きの流れ
特例税制の適用を受けるためには、「都道府県知事の認定」「税務署への申告」の手続きなどが必要となります。

1.承継計画の策定
まずは、「承継計画」を策定します。この計画は、平成30年4月1日から平成35年(2023年)3月31日までの間に、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成したものでなければなりません。その「承継計画」は、都道府県への提出が必要になります。
※平成35年(2023年)3月31日までに相続・贈与を行う場合、相続・贈与後の承継計画提出も可能です。

2.贈与又は相続の実行
平成39年12月31日までに、実際に相続又は贈与は行います。
※平成30年1月1日以降の相続・贈与が対象です。

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3.適用要件を満たしていることの認定を受ける
相続・贈与後は、都道府県に申請し、認定を受けます(承継計画を添付します)。

【申請期限】
●贈与税の納税猶予:贈与翌年の1月15日まで
●相続税の納税猶予:相続開始日後8か月以内

4.税務署への申告
認定書の写しとともに、贈与税又は相続税の申告書を提出します。
※贈与税の納税猶予の場合で、相続時精算課税制度の適用を受ける場合には、その旨を明記します。

5.申告後も届出等が必要
申告後についても、5年間は、毎年、都道府県への報告と税務署への届出など所定の手続きが必要になります。

【特例税制を適用した場合としない場合の比較】
簡単な計算例を使った設例をもとに、特例税制を適用した場合と適用しない場合の相続税額や猶予税額の違いを確認してみましょう。

(設例)遺産総額3億円(自社株評価額1億円・現預金2億円)
相続人 子供2人(長男・二男)
長男(後継者)→自社株1億円と現預金1億円を相続/二男→現預金1億円を相続

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<特例税制を適用>
(1)事業継承税制の適用がないものとして、相続税の総額(約6,920万円)と、各相続人の相続税額を計算します。ここで、二男の相続税額(約2,306万円)が決まります。
(2)長男の相続分が自社株1億円のみとした場合の相続税額を計算し、長男の相続税の猶予税額(約1,670万円)を求めます。
(3)上記1で計算した長男の相続税額(約4,614万円)から猶予税額を差し引いた約2,944万円が長男の実際の納税額になります。

※設例は、相続の場合ですが、贈与の場合は、適用要件等を満たせば贈与額の全額が納税猶予されます。その後、贈与者が死亡した場合には猶予された贈与税が免除され、贈与時の価額が相続があったものとみなされて相続税が計算され、さらに相続税の納税猶予を受けることになります。