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経営者が知っておきたい労働保険の基礎知識

2018年5月21日

労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の年度更新(保険料の申告・納付)の時期がきました(6/1-7/10)。事業主は、労働者(パートタイマー・アルバイトを含む)を1人でも雇用すれば、業種・規模に関わりなく労災保険の適用事業者となり、保険料を納付しなければなりません。

労災保険は経営者に代わって補償を行う制度
労災保険(労働者災害補償保険)は、業務中や勤務途中における従業員のケガ、病気、障害、死亡などの労働災害(労災)に対して、従業員やその家族に必要な保険納付を行う制度です。
従業員が労災にあった場合、労働基準法により、会社(事業主)は、療養費や休業中の賃金を補償する責任を負いますが、労災保険から従業員へ給付が行われるため、事業主は補償責任を免除されることになります。
雇用保険料が会社と従業員の両者で負担するのに対して、労災保険料が会社負担のみとなっているのはそのためです。
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労災と認められる通勤災害の判定基準
仕事中や通勤途中に被ったケガ等は、労災保険からの給付になるため、従業員自身(又は会社)が労災保険か健康保険のどちらかを選択して利用することはできません。医療機関での受診の際には、負傷した原因を伝え、労災保険扱いで診療を受けることになります。
通勤災害でよく問題になるのが、通勤途中にどこかに立ち寄った場合などです。
通勤途中として労災が認められるのは、原則として、住居と就業場所との往復で、合理的な経路と方法(最短コースである必要はない)による場合です。通勤途中に通勤とは関係ない行為(中断)や、通勤とは関係のない目的のために合理的な経路を逸した場合(逸脱)は、通勤途中と認められませんが、次のような行為は、通勤途中と認めれれるようです。

  • 子どもの保育所への立ち寄り
  • 道路工事や交通事情のための迂回
  • 日常生活上必要な行為(日用品の購入、選挙権の行使、病院での診察、親族の介護等)
  • 経路近くの公衆トイレの利用

中小企業経営者や自営業者も労災保険に加入できる
経営者自身が労災にあった場合には、その治療費等は全額自己負担になります(労災には健康保険が適用されません)。
しかし、中小企業経営者、一人親方などの自営業者でも、一定の場合は、労災保険に加入できる特別加入制度があります。労災事故等が発生しやすい業種・職種の事業主は、この制度への加入によって、万一のときに、労災保険から給付を受けることができます。

●特別加入できる「中小事業主等」とは
一定の労働者数を常時使用する事業主とその家族従業員・役員など

【中小事業主等と認められる企業規模】
・金融業、保険業、不動産業、小売業...50人以下
・卸売業・サービス業...100人以下
・上記以外の業種...300人以下

労災保険を利用しても一定規模の企業は保険料が上がらない
労災保険には、仕事中のケガ(業務災害)の場合に、一定規模を満たした事業所に対して、労働災害の多寡により労災保険料が増減する制度(メリット制)があります。そのため、「労災保険を利用すると、労災保険料が上がる」と考えている経営者もいます。
しかし、メリット制が適用されるのは、一定規模以上の企業であり、また、通勤途中のケガ等については、経営者の責任ではないため、メリット制の対象から除かれています。そのため、従業員数の少ない中小企業では、労災保険を利用しても保険料の増加を気にする必要はありません。

(注1)メリット制が適用されない事業の例
1.一般の商店・事務所など事務系企業は従業員100人未満
2.製造業や運輸業などは業種の危険度によって従業員20-100人未満
例)電気機械器具製造業...100人未満
  金属製品製造・金属加工業...43人未満
  貨物取扱事業...48人未満
  鋳物業...26人未満


様々な助成金は雇用保険加入が適用要件に
雇用保険は、従業員が退職などで失業したときに、新たな勤務先が見つかるまで、一定期間、失業給付が受けられる制度であるため、従業員側にメリットの大きい制度という印象がありますが、雇用保険には事業主を対象にした助成金も多くあります。

<主な助成金の例>

  • 雇用調整助成金(休業、教育訓練や出向によって雇用の維持を図るとき)
  • 労働移動支援助成金(離職を余儀なくされた労働者の雇入れや訓練を行うとき)
  • 特定求職者雇用開発助成金(従業員を新たに雇い入れるとき)
  • キャリアアップ助成金(労働者のキャリアアップ、人材育成を図るとき)
  • 両立支援等助成金(仕事と介護・育児の両立支援に取り組むとき)

労働保険の年度更新(保険料の申告・納付)をお忘れなく
平成30年6月1日(金)-7月10日(火)は、労働保険の年度更新です。労働保険の保険料は、4月1日から翌年3月31日までの1年間を保険年度として、年度中に支払われた賃金総額(通勤費を含む)に、その事業ごとの保険料率を乗じて計算します。
年度更新では、平成29年度末に確定した賃金総額をもとに確定保険料を算定し、前年度に納付した概算保険料との差額を精算します。そして、平成30年度の概算保険料を申告・納付します。平成30年度の概算保険料は、賃金総額に特に大きな変動がない限り、平成29年度の賃金総額をそのまま見込み額として計算します。

※「TKC戦略給与情報システム(PXシリーズ)」をご利用の場合は、「概算・確定保険料申告書」の転記資料を出力できるため、「概算・確定保険料申告書」を簡単に作成することができます。