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会社と役員の資産・経理を明確に区分する

2018年2月19日

中小企業では、会社の資産・経理と役員の資産・家計の区分が曖昧になりがちです。例えば、会社と役員の間での金銭・不動産の貸し借り、役員の個人的な支出の会社負担などは、税務、経営の面で問題となることがあります。個人保証のない融資においても、明確な区分が要件になっています。

1.金銭・不動産の貸し借りに注意
会社と役員の間での金銭や不動産の貸し借りについては、税務調査では、役員の公私混合はないか、利息や家賃は適正か、契約書等はあるか、などがチェックされます。
金銭の貸し借りについては、その必要性について、株主総会や取締役会の承認決議を得て、議事録を残すとともに、「金銭消費貸借契約書」を交わしましょう。
特に役員への貸し付けの場合、契約書において、借入金額、利息、返済条件などの具体的内容を明らかにするとともに、利息決定の際の参考書類等も保存します。

<金銭の貸し借りでの税務上の注意点>
(1)会社が役員から金銭を借りる場合
・無利息でも、原則として税務上は問題ない。
・役員の資金の出所を明確にしておく。
・役員が利息を受け取ると、所得税の申請が必要になるが、会社は利息分を損金処理できる。
・利息が高すぎると、その高すぎる部分が役員の給与になる。
・役員の貸付金は社長の相続財産になる。

(2)会社が役員に金銭を貸す場合
・無利息の場合、1.7%(平成29年中の貸付の場合)で計算した利息が役員の給与となる。
・調達金利を参考に適切な利息を徴収する。

住宅や事務所など不動産の貸し借りについては、「不動産賃貸借契約書」や株主総会等の議事録を残すことはもちろん、その対価(家賃)についても注意しましょう。

<不動産の貸し借りでの税務上の注意点>
(1)会社が役員から不動産を借りる場合
・無償でも、原則として税務上は問題ない。
・家賃が世間相場より高い場合は、高い部分が役員給与となり、過大な報酬として損金不算入とされる場合がある。
・役員が家賃を受け取ると、所得税の申告が必要になる。
・個人の土地に会社の建物を建てる場合は、税務上、借地権の権利金課税の問題が発生する可能性があるため、相当の地代を支払うか、「土地の無償返還に関する届出書」を提出するなどの対応が必要になる。

(2)会社が役員に不動産を貸す場合
・家賃が世間相場より低い場合は、低い部分が役員給与になる(社宅を除く)
・社宅の家賃には、税務上の基準がある。

また、役員に対する仮払金についても注意が必要です。長期間、未精算の状態にある役員への仮払金は、税務調査で役員への貸付金や給与とみなされる可能性があります。
仮払金の実態が、明らかに貸付金であれば、役員への貸付金として処理する必要があります。

2.金融機関は経営者のこんな所を見ている
金融機関も、融資判断にあたり、経営者の公私混同については厳しい眼で臨んでいます。

こんな所を見ている!
・事業規模に比べて役員がらみの経費が多くないか。
・事業に関係のない資産(高級車、不動産、美術品等)が多くないか。
・役員への仮払金や貸付金が多くないか。

役員の個人的な支出に充てられる資金的な余裕があるのなら、それを借入金の返済や事業資金に回し、あるいは、内部留保とすることで会社の財務基盤の強化に努めるべきだと金融機関は考えます。
融資にあたり、経営者の個人保証を求めない制度を目指した「経営者保証に関するガイドライン」では、個人保証のない融資の要件の一つとして法人と個人の一体性の解消に努めることを求めています。

法人と個人の一体性解消の例
・会社から経営者への事業上の必要が認められない貸付は行わない。
・経営者個人として消費した費用(飲食代等)について、会社の経費にしない。
・事業用資産(本社、工場、営業車等)が経営者の個人所得の場合、会社所有とすることが望ましい。

3.事業と個人的な支出は正しく区分する
中小企業(資本金1億円以下)の交際費は、税務上、年800万円までは全額を損金に算入することが認められています。
実務では、事業に関係のない役員の個人的な支出が会社の交際費や旅費などとして処理されていることがあります。次のような支出は、交際費等や経費とはならず、その役員への給与(役員賞与)に該当し、損金への算入が認められません。

・個人的なゴルフや遊興費
・家族での飲食代等
・家族が利用した会社名義のクレジットカードの代金
・家族旅行の費用
・家族の冠婚葬祭費
・役員の自宅用の家電製品等の代金 等々

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4.公私混同は会社を弱体化させる
役員の公私混同は、会社を弱体化させる要因の一つです。社内全体のモラルの低下を招き、社内不正が起こりやすい組織風土を生み出します。社員は、役員の公私混同に敏感だからです。
また、資金繰りが苦しい会社ほど、役員の公私混同が多い傾向があります。つまり、本業の業績はそれほど悪くないにもかかわらず、役員の私的流用が資金繰りの悪化を招き、経営に悪影響を与えているのです。経営者が襟を正して経営に臨むことが求められます。