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「会計」で家計を立て直した算盤侍 猪山直之

2017年8月28日

映画化された「武士の家計簿」(磯田道史著)の主人公、猪山直之は借金で逼迫した家計を立て直した"算盤侍"といわれています。猪山家がつけた家計簿には幕末から明治にかけて、37年間の収支が克明に記録されていました。

  1. 年収の2倍の借金で破綻寸前
    猪山家は代々加賀百万石の前田家に御算用者(経理)として仕えていましたが、武士身分を保つ為の費用や江戸への単身赴任等の出費がかさみ、年収の2倍の借金と、収入の3分の1は利子に消え(年利18%)、もはや破綻寸前でした。

  2. 不退転の覚悟で2つの計画を実行
    いよいよ首の回らなくなった直之は家財等の売却と家計簿をつけるという2つのことを不退転の覚悟で借金返済計画として実行しました。
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    家財を売却し、元金の4割返済
    体面を気にする武家であるにも関わらず、家財や商売道具である和算の書籍、加賀藩・溶姫ゆかりの茶器など約1,000万円分(現在価値)も売却し、返済に充てました。また、大口融資先には「元金の四割を今すぐ返済する代わりに、残りは無利子十年賦にしてほしい」と誠意をもって交渉し、了解を得ることができました。

    帳簿づけで家計を"見える化"
    家計簿は饅頭一つ買っても漏れなく正確に記帳し、お金の動きを可視化して収支を完璧に把握しました。これにより武士身分を保つ為に必要不可欠な項目と、食費や衣類費等の削減できる項目に分けてやりくりし、家計の黒字化に成功しました。その倹約ぶりは、娘の祝の席で、高値だった鯛を買わず絵に描いて代用したという逸話もある程です。
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  3. "手に職"で時代・組織を問わず活躍
    直之は長男の成之に大変厳しく算盤英才教育を施しました。成之の出仕が始まるとすぐに頭角を現し、大政奉還後には多くの武士が失業に苦しむ中、大村益次郎にその才能を買われて新政府軍の兵站を差配しました。その後は海軍省主計大監まで出世して、年収は約3,600万円程(現在価値)あったそうです。