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相続においては、遺産分割による不動産の名義変更(移転登記)、預貯金等の口座の名義変更などのために、登記所(法務局)や金融機関ごとに、戸籍関係書類を提出する必要があります。
戸籍関係書類に束に代えて、法務局の証明書1枚で、相続手続きができる「法定相続情報証明制度」が始まりました(5月29日運用開始)。
「法定相続人が誰か」を登記官が証明
近年、不動産の所有者が亡くなった際に、相続登記(所有権の移転登記)が未了のまま放置されている不動産が増加し、これが「空き家」や「所有者不明土地」の一因となっていると問題視されています。
相続手続では、相続関係を証明するために戸籍関係書類の束を、登記所や金融機関に、その都度、提出する必要があり、預金口座が複数ある場合は、その手続が大変でした。
新たに始まった「法定相続情報証明制度」は、戸籍関係書類の束に代えて、法務局から交付される「認証文付き法定相続情報一覧図の写し」(以下、「一覧図写し」)を、登記所や金融機関等に提出することで、相続手続の負担軽減を図る制度です。
「一覧図の写し」は、「法定相続人が誰か」を登記官が証明した書類ということになります。
ただし、相続に関する基本的なものにのみ対応し、遺産分割協議や相続放棄等があった場合は、別途、遺産分割協議書等の書類の提出が必要なのでご注意ください。
本制度は、遺産に不動産がなく、銀行預金だけの場合でも利用が可能ですが、預金等の払戻しについて「一覧図の写し」で良いかどうかは、金融機関によります。大手銀行や一部の地銀は、制度に対応しているので、金融機関に確認しましょう。
申出の手続は税理士による代理も可能
「一覧図の写し」を取得するには、相続人を代表して相続手続する人が、法務局へ申出を行いますが、税理士や司法書士等に申出の代理を依頼することもできます。
申出には、戸籍謄本などの必要書類の他、故人(被相続人)及び戸籍から判明する法定相続人を一覧できる「法定相続情報一覧図」を作成し提出します。登記官は内容を確認し、認証文付きの「一覧図の写し」を交付します。
「一覧図の写し」は、無料で必要な通数の交付を受けられます。
相続登記を忘れずに!~深刻化する「所有者不明問題」
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったときに、その不動産の登記名義を亡くなった人(被相続人)から、相続人へ名義変更する手続です。ところが、相続登記が未了のまま放置されたことで、所有者を把握できない「所有者不明土地」などが増加しています。
法務省の調査では、最後の登記から50年以上経過し、所有者が不明になっている可能性がある土地の割合は、22.4%にのぼります。地域・用途別では、大都市部が平均6.6%、中小都市・中山間地域では26.6%となり、用途別では、宅地8%、田・畑22.8%、山林31.2%になります。
「所有者不明土地」は、東日本大震災の復興事業において、被災者の集団移転先の用地を取得するにあたって、所有者不明の土地が含まれていたために、計画の変更や遅延を余儀なくされるケースが現れたことで、問題が大きく表面化しました。
相続登記は、法律上の制限がないため、放置していても罰則はありませんが、相続登記されずに長年放置されたままになると、子や孫の代になって相続権を持つ人がどんどん増えて、事実上、売買などができない「塩漬け」状態になる可能性があります。
相続登記をすぐに行えば、不動産の権利関係が明確になるため、相続した不動産をすぐに売却することが可能であり、担保に入れて住宅ローンを組むことができます。
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