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決算書の信頼性を高める中小会計要領

2017年8月 7日

中小企業の多くは、中小会計要領(中小企業の会計に関する基本要領)に基づいて決算書を作成しています。中小会計要領は、中小企業の実態に則したルールであり、かつ、経営者の役に立つもので、金融機関から高く評価されています。改めて中小会計要領のポイントを見てみましょう。

中小企業会計の共通ルール「中小会計要領」

社長:金融機関から「『中小会計要領チェックリスト』が添付してあり、よくできた決算書ですね」と言われました。

税理士:そのチェックリストは、御社が、中小会計要領に準拠して決算書を作成したことを確認するためのものです。
中小会計要領は、中小企業の会計の共通ルールで、多くの中小企業がこれに準拠して決算書を作成しています。

社長:会計と税務は会計事務所にすべて任せているので、会計のルールまで意識していませんでした。
中小会計要領とはどのような会計ルールなのですか?

税理士:決算書の利用が主に金融機関や税務署に限られる中小企業では、上場企業向けのような会計基準は必要なく、中小企業の実務での会計慣行を考慮し、税法による会計処理にも配慮した共通の会計ルールとして中小会計要領が作成されました。
中小企業向けなので、経営者にも経理担当者にもわかりやすい会計基準になっています。

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共通のルールだから決算書の信頼性が高くなる

社長:中小会計要領に準拠することに、どのような意味があるのですか?

税理士:毎年、業績の都合などで、規則性のない会計処理で決算書が作成されていた場合と、共通のルールに基づいて作成された決算書とを比較すれば、よくわかります。
例えば、法人税法上、固定資産の減価償却費を計上するかどうかは任意なので「赤字の年には、減価償却をしない」「黒字の年には、減価償却をする」として決算書を作成していたとすれば、どうでしょうか。

社長:過去の数値と比較しても、意味のないことになりますね。

税理士:年度によって異なる会計処理を適用すると、正しい経営判断ができないのです。いかに、共通のルールで作成することが大事か、おわかりいただけると思います。
中小会計要領では、一般的に、耐用年数にわたって、毎期、規則的に減価償却を行うとしていますから、過去数値との比較による経営判断がより的確になります。
また、社長自身が、自社の財務状況について金融機関など外部の利害関係者へ報告・説明する際にも、決算書が中小会計要領という共通のルールで作成されていれば、客観的な企業評価を行うことができるため、金融機関からの信頼性が高まります。

社長:中小会計要領に準拠することで、なぜ、金融機関の評価が高まるのかわかりました。

税理士:中小会計要領は、これまで、中小企業が実務で、普通にやってきた会計実務をルール化したものですが、ルール化されたことで、中小企業が、真面目に取り組んできたことなどが、金融機関にも理解されると思います。

「経営の見える化」によって経営課題が明らかになる

社長:決算書の信頼性が高まる以外に、中小会計要領に準拠することのメリットはありますか?

税理士:決算書が、共通のルールに準拠して作成されていれば「TKC経営指標(BAST)」との比較、10期比較、時系列比較や他社比較などが、より精度の高い数値で比較分析できるため、自社の特長、課題や問題点が見えてきます。
例えば、同業他社と比較して結果、自社は「売掛金残高が少ない」ことがわかったとします。
それなら、資金繰りは比較的楽になってもよいはずなのに、なぜか手元資金は少なくなっていました。
さらに調べると、平均よりも「在庫が多い」ことがわかったとしましょう。
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社長:つまり、資金が在庫に滞留しているので、在庫削減について検討をすればよいということがわかるのですね。

税理士:反対に、このような同業他社比較をする場合、自社の売掛金の中に不良債権が含まれていることで、売掛金残高が大きくなっていれば、正しい姿を反映させていないということになります。
少なくとも回収不能な債権は、「投資その他の資産」に区分され、貸倒引当金を計上して、決算書を作成します。
これは、会計によって「経営の見える化」ができるようになったといってもいいでしょう。

社長:なるほど、「経営の見える化」ができれば、経営判断がより的確になりますね。

経営計画書を作成するときにも中小会計要領に準拠した決算書に基づいた事業計画書であれば、金融機関からの評価を高まります。

※「TKC経営指標(BAST)」は、TKC会員(税理士・会計士)の関与先企業の約23万社超の経営成績と財政状態を分析したものです。TKC会員が毎月継続して実施した巡回監査と月次決算により作成された会計帳簿を基礎とし、そこから誘導された決算書(貸借対照表及び損益計算書)を収録データとしています。