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長時間労働を防ぐ働き方を考える<1年単位の変形労働時間制の活用法>

2017年3月27日

長時間労働が社会問題化し、政府が進める「働き方改革」においても、その是正が議論されるなど、残業や有給休暇等に対する世の中の考え方が従来と大きく変わろうとしています。中小企業も無関心ではいられません。長時間労働の改善は、生産性の向上、残業代の抑制、社員のメンタルヘルスケアにつながり、また、その取り組みを対外的に発信することで優秀な社員を確保するなど、会社と社員の双方にメリットがあります。今回は、その取り組みの一例として、「1年単位の変形労働時間制」をご紹介します。

【季節により業務の繁忙期がある場合】
労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間・週40時間となっており、例えば、これを超えて、1日10時間労働させると、2時間の時間外労働となり残業代が発生します。
しかし、曜日や季節によって仕事量が異なったり、繁忙期と閑散期がある場合には、1日8時間・週40時間の原則が馴染まないといえます。
このような事情を踏まえた柔軟な働き方の一例として、変形労働時間制があります。これは、労働時間を1日単位ではなく、月や年を単位として、平均で週40時間以内に収めることで、あらかじめ設定した労働時間内であれば、1日8時間・週40時間を超えても時間外労働になりません。


【1年単位の変形労働時間制とは?】

変形労働時間制には、1ヶ月単位(2月号に掲載)などがありますが、ここでは、1ヶ月以上1年未満で労働時間を設定する「1年単位の変形労働時間制」を見てみましょう。
この制度は、1年を通して総労働時間を計算して、祝日が多い月、年末年始・お盆休暇のある月、忙しくない月の総労働時間を減らし、その分だけ、他の月に振り分けて多くすることになります。
休日も含めて労働時間を考えるため、季節変動等の影響を受けない企業でも、上手に活用することで、無駄な残業を削減することができます。
1年単位の変形労働時間制を活用するポイントは、忙しくない時期は、思い切って休日を増やす、終業時間を早くするなどして、無駄な労働時間を減らすことにあります。これまでのように、仕事の繁閑に関係なく労働時間や休日の設定をしていては、そのメリットはあまりありません。


【労働時間・日数、休日はどう設定するのか?】

期間を1年間とする変形労働時間を採用する場合、図表1に掲げる法定労働時間の範囲内で、1日、1週間あたりの労働時間や1年あたりの労働日数、総労働時間などを計算し、次の手順で「労働時間チェックカレンダー」(図表4)等に記入します。

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  1. 各月毎の1日の労働時間を集計表(図表3)の「労働時間」欄に記入します。
  2. カレンダーの休日に◯印を付け、1日の労働時間に出勤日数をかけて、各週の労働時間をカレンダー上に記入していきます(図表2)。
    例えば、10月は、1日の所定労働時間を8時間とし、第1週と第3週、第4週を48時間、第2週を40時間と設定しています。第2週以外は、週48時間ですが、法定の1日10時間・週52時間(図表1)を超えていないため時間外労働にはなりません。
  3. 各月の休日日数を集計表「休日日数」欄に記入します。
  4. 各月の労働日数を集計表「労働日数」欄に記入します。
  5. 各月の総労働時間を計算(1日の労働時間労働日数)し、集計表の「総労働時間」欄に記入します。


【労使協定と届出が必要】

1年単位の変形労働時間制を採用するには、就業規則の改定のほか、労使協定を締結し、労働基準監督署への届出が必要になります。
会社によっては運用面において、「ワークバランス推進委員会」を立ち上げたり、「ノー残業デー」を設定して、社内に浸透させる工夫をしているところもあります。
このような制度を上手に活用することで、労働時間を管理して、残業代の抑制や長時間労働の改善をはかり、社員が元気に働くことができる明るい会社づくりに取り組むことも重要でしょう。

※変形労働時間制の導入は、専門家のアドバイスを受けながら検討しましょう。

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