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たな卸資産については、決算の際、実地たな卸を行って財産を確定するとともに、売上に対応した売上原価を確定させます。たな卸資産は、会社が販売することを目的として保有する資産です。適切な在庫管理を行い会社の業績向上につなげましょう。
【どうして実地たな卸をするの?】
経理担当者:当社では、商品受払帳をつけていますので、帳簿上の在庫は確認できています。それでも実地たな卸をする必要があるのでしょうか。
税理士:費用収益対応の原則によって期中の売上に対応する仕入原価を確定させて、残ったたな卸資産は翌期の売上に対応させるため期末在庫として繰り延べます。決算手続きでは、実地たな卸を行い、商品受払帳の帳簿残高が実際に保有してあるかどうか、その実在性を確認します。
経理担当者:帳簿残高と実際の残高に誤差があるときは、どうすれば・・・。
税理士:誤差の原因を確かめましょう。出庫時の記入ミスやもれ、現品の紛失、品違い、無断出庫などが考えられます。誤差が生じないように手当てすることも、経営をより良いものにするために必要なことです。
経理担当者:誤差が大きければ、それだけミスやもれが多いということですね。改善すべき点がないか確認してみます。
◎商品受払帳を省略している会社の場合
商品受払帳を省略している会社にとっては、実地たな卸は不可欠です。期末に限らず定期的に実地たな卸を行い、在庫管理を徹底しましょう。
【原始記録を用いて正確に!】
経理担当者:具体的な実地たな卸の方法を教えてください。
税理士:決算期末に原始記録を用いて、下記のように正確に行います。
<実地たな卸の方法>
【税務調査では「期ズレ」に注意】
経理担当者:たな卸の評価方法にはどのようなものがありますか。
税理士:たな卸資産の評価方法には、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法、最終仕入原価法などがあり、税務署に届け出た方法にによります。
経理担当者:税務調査では、期末たな卸の内容が確認されるのですか。
税理士:税務調査においても期末たな卸は重要確認事項となっています。
税務調査の現場では、期ズレがないか(前述の「実地たな卸の方法」の⑤)との視点から、「仕入→在庫→売上」の流れを決算期末日前後の取引を中心に調査されます。
仕入の請求書とたな卸表の整合性や翌期売上分の在庫などを確認し、たな卸の計上もれがないか、あるいは締め後分の売上がきちんと計上されているかの確認が行われ、所得の計上もれがないかを調査されるでしょう。
社内の実地たな卸のほかに、運送会社や外注先への預け在庫の有無なども調査のポイントになります。
引取運賃、購入手数料、関税など仕入にかかる付随費用は取得価額に含めることになっているため、たな卸額にこれらの費用を含めているかも確認の対象になります。
【在庫過多なら、管理体制を見直そう!】
経理担当者:金融機関が決算書を見るときは、たな卸資産をどのような視点で確認するのですか。
税理士:同業他社のたな卸の回転日数や売上規模からみて期末在庫が多い場合、「資産性のない不良品やデッドストックが含まれていないか」「赤字をカバーするために在庫の水増しが行われていないか」などが検討され、在庫の中に資産性のないものがあると判断されれば金融機関内部で実態修正を行って繰越利益金を減額修正した上で企業評価します。
経理担当者:在庫管理というのは、本当に奥が深いことなんですね。
税理士:在庫は、厳格な管理を怠ると増加する傾向にあり、「在庫過多=社内の管理体制に問題あり」と考えてよいでしょう。
会社にとって、たな卸資産は売上に結びつく大切な財産です。どのような品揃えをすれば得意先に喜ばれるのか、品質や数量は適切か、最も経営手腕が問われるところです。
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