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利益はどこへ消えたのか?

2016年10月24日

貸借対照表から資産の運用状態を見る
利益が出ていると言うけれど、預金は増えてないよ...。決算が近づくと、社長からよく出る言葉です。損益計算書に計上された利益(黒字)はどこへ消えたのでしょうか。

現金預金が増加しなかったのはなぜか
利益はどこへ消えたのか。その答えは、前期末と当期末の残高を比較した比較貸借対照表から知ることができます。
A社は、当期500万円の利益を計上し、貸借対照表の繰越利益が500万円増加しましたが、現金預金(資金)は増加していません。
これは、利益の増加分に見合う資金が、他の何かに使われてしまったことを意味します。
※貸借対照表の繰越利益の当期末残高と前期末残高の差額は当期利益(損失)と一致します。

(1)売掛金残高の増加
貸借対照表の借方(左側)を見ると、前期より売掛金残高が200万円増加しています。
これは、利益が売掛金の増加となって、資金として回収できていないことを表します。
正常な売掛金であれば、いずれ回収され現金化されますが、滞留債権であれば、資金を圧迫します。

<売掛金を回収するまで資金は増えない>
会計では、売上があった時点で、売上(利益)が計上されます。
しかし、売上があっても、代金が売掛債権のままであれば、それを資金として回収するまでは、会社には資金がない状態になります。


(2)在庫の増加

さらに、前期より在庫残高が200万円増加しています。これは資金が在庫を増やすことに使われたことを表し、結果として、現金預金が200万円減少したことになります。

<在庫は資金が形を変えたもの>
在庫(棚卸資産)は、資金が形を変えたものですから、在庫を売上げて、売上代金を回収して、初めて資金になります。在庫が増えると、それだけ資金を減らすことになります。


(3)減価償却費の計上

損益計算書において減価償却費200万円を計上したことで、固定資産が200万円減少しています。減価償却費は費用ですが、資金流出を伴わないため、減価償却費の計上は、資金を200万円増加させることと同じ効果があります。

<減価償却費は資金が流出しない費用>
機械・設備・自動車などの固定資産を購入すると購入代金分のお金は減ります。
しかし、会計では固定資産の購入代金分だけの利益が少なくなるということはなく、減価償却という方法で数年間に分けて費用計上していくことになります。
減価償却費は費用として計上しても、資金の流出を伴いないため、減価償却費相当分を内部留保する効果があります。

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(4)借入金残高の減少
貸借対照表の貸方(右側)の借入金を見ると、当期は残高が300万円減少しています。これは借入金300万円を返済したことで、現金預金が300万円減少したことになります。

<借入金の返済は経費にならない>
借入金を返済すると、お金を減ります。しかし、会計上は、借入金の返済は経費にならないため、利益も少なくなりません。これはもともと借りたお金を返すだけだからです(利益は経費になります)。
反対に、借入時は、お金は増えますが、売上や利益にならないことと同じです。

利益(資金)はどう使われたのか
前期と当期の比較貸借対照表から見えたことは、A社の当期利益500万円は、借入金の返済(300万円)と売掛金の増加(200万円)と在庫の増加(200万円)に使われ、減価償却費の効果(200万円)を加味しても現金預金残高を増加させることができなかったということです。

利益(資金)はどう使われたのか

当期利益500万円の計上→資金の増加要因(+500万円)
(1)売掛金残高の増加(200万円) →資金の減少要因(▲200万円)売掛金を回収するまで資金は増えない
(2)在庫の増加(200万円) →資金の減少要因(▲200万円)在庫は資金が形を変えたもの
(3)減価償却費の計上(200万円) →資金の減少要因(+200万円)減価償却は資金が流出しない費用
(4)借入金残高の減少(300万円) →資金の減少要因(▲300万円)借入金の返済は経費にならない
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