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社長が私的に使用する消耗品や提供を受けるサービスの費用が会社の経費に混入していると、税務調査で問題にされるケースがあります。会社の経費として認められないとどのような影響があるのでしょうか。
私的な費用は役員賞与などに
会社(法人)の事業活動に必要な費用は、経費として処理します。事業活動とは、お金を使って、売上や利益を得る活動を言います。
したがって、税務調査において、社長が使用する消耗品や提供を受けるサービスの費用が、社長個人の利益にしかならず、売上や利益の獲得に直接必要でないと認定されると、社長への賞与(給与)とみなされる場合があります。
<役員賞与とみなされる可能性のある例>
損金として処理していた経費が、例えば、社長への役員賞与と認定されると、新たな税負担(法人税や社長個人の所得税など)が増えることになります。
損金算入は事業活動に必要な支出に限られる
現在、中小企業(資本金1億円以下)の交際費は、年800万円までは金額を損金算入することが認められています(平成30年3月31日までに開始する事業年度に適用)。そのためか、社長の判断も甘くなりがちです。
会社の経費として損金算入が認められるのは、あくまで事業に関係ある支出に限られ、明らかに事業に関係のないもの、社長や役員の個人的な支出とみなされるものについては、損金算入が認められません。
【裁決例】
青年会議所(JC)の会議等への出席費用が社長の給与と認定された例
法人が経費とした青年会議所(JC)の会議等に出席するための交通費、宿泊費、日当を代表者に対する給与と認定した裁決がありました。
その法人は、その会議等が経営者に対する教育費用、受注活動費用としての性質を有し、国際JCが恒久的プログラムとして「ビジネスの機会」を掲げていることを根拠に、法人の事業に必要な費用である旨を主張しました。しかし、その会議等において、参加者が自身の事業内容のアピールや営業活動をする機会がなかったなどとして、法人側の主張が認められませんでした。
(国税不服審判所平成27年7月28日裁決)
私的な費用を経費に混入させない心構え
経営者や経営幹部の公私混同は、従業員のモチベーションやモラルにも影響します。経営者や経営幹部が身を律することは、不正の起こりにくい企業体質づくりのもつながります。会社からの分配は、損金となる定められた役員報酬や事前確定届出給与による賞与として受け取り、私的な費用は会社の経費に混入させない心構えが大切です。
物品の購入やサービスの利用は、「誰が、何のために、必要なのか」を明確にし、記録に残す取り組みが必要です。そのような取り組みは、会社のコスト削減に効果を及ぼすことにもなります。
<参考>
役員賞与とされた場合の税負担額1.給与とされた場合の税務処理
会社の申告
経費(福利厚生費、交際費、消耗品費、旅費交通費など)
↓
税務調査
役員報酬・役員賞与・給与手当
↓
新たな税負担
●個人所得税や個人住民税が課される。(源泉徴収漏れがあったことになる)
●役員賞与は、会社の経費にならず、法人税負担が増える。(ダブルパンチ)
●私的な支出に伴う消費税分は、仕入税額控除ができなくなり、消費税の負担が増える。
2.設例
経費としていた費用が、後日、税務調査で給与として認定された場合、税負担にどのような影響が生じるか設例で確認してっましょう。
X社は、社長家族が海外旅行した費用50万円を福利厚生費として経費処理し、法人税の確定申告書を提出しました。所得金額は750万円でした。後日、税務調査があり、海外旅行費用50万円の金額が社長個人に対する役員賞与として認定され、X社は、修正申告(所得800万円)に応じました。
X社の税負担額は、修正申告により海外旅行費用50万円を経費として処理しなかったのと同じ結果となり、さらに、社長は個人所得税と個人住民税を負担しなければなりません。つまり、海外旅行の費用は「50万円+個人の税負担額」がかかったことになります(設例では、消費税を考慮していません)。
税目 | 当初申告所得 750万円 | 修正申告所得 800万円 | 増減 |
---|---|---|---|
法人税等 | 118万円 | 125万円 | 7万円 |
事業税等 | 45万円 | 49万円 | 4万円 |
法人住民税 | 22万円 | 23万円 | 1万円 |
計 | 185万円 | 197万円 | 12万円 |
追加徴収される源泉所得税 | - | 10万円 | 10万円 |
計 | 185万円 | 207万円 | 22万円 |
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