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短期前払費用の計上時期に注意

2016年9月12日

経費の計上は、会社の利益に関係するため、特に税務調査では間違って経費が計上されていないか、それにより利益が少なくなっていないかなどが、よくチェックされるところです。なかでも前払費用は特に間違えやすい点なので注意しましょう。

費用の計上は支払うべき金額(債務)が確定してから計上する
法人が支払う費用や損失などを、法人税法では「損金」といいます。法人が所得を計算する上で、損金に算入できる金額は、次のものです。

その事業年度の売上原価や完成工事原価、その他これらに準ずる原価
販売費や一般管理費、その他の費用(ただし償却費以外で事業年度内に債務が確定しないものは除く)など
つまり販売費等で"事業年度末までに債務が確定していない費用"については、その事業年度の損金に算入してはならないことになっています。したがって、その期に発生したものはどれも損金に算入できるとは限らないのです。
ただし、短期前払費用については、一定の要件の下、支払った時点での損金算入が認められますが、その要件を満たしていないと税務調査で否認されることになります。

短期前払費用の損金算入が認められるケース・認められないケース
法人税では、前払費用とは、一定の契約により継続的にサービスの提供を受けるために支出した費用で、その事業年度終了時においてまだ提供を受けていないサービスに対するものをいいます。
原則的にはサービスの提供を受けた時に損金に算入します。
短期前払費用とは、前記の前払費用のうち、支払った日から1年以内に提供を受けるサービスに係る費用をいいます。そして、それを支払った場合、その支払った金額を継続してその事業年度の損金に算入しているときは、支払時点で損金に算入することが認められます。ただし、借入金を預金等に運用するときのその借入金にかかる支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、損金算入は認められません。
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【契約により、次のような支払を継続的に行うこととしている法人(3月決算)の場合】
<損金算入が認められる例>
期間40年の土地賃借にかかる賃料について、毎月月末に翌月分の地代月額100万円を支払う
期間4年のシステム措置のリース料について、12ヵ月分(4月から翌年3月)の24万円を3月下旬に支払う

<損金算入が認められない例>
期間10年間の建物賃借にかかる賃料について、毎年、家賃年額(4月から翌年3月)の120万円を2月に前払いする
※支払時(2月)から1年を超える期間を対価支払の対象期間としているため損金算入は認められない。

実際に短期前払費用の損金算入を否認された例をケーススタデイとして見てみましょう。

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ケース:短期の損害保険料を分割で支払った
9月決算のA社は、当期の9月20日に、保険期間が当期9月20日から翌年9月19日までの1年間の損害保険契約を締結しました。
保険料は300万円で10回の分割払いとし、保険を契約した日(9月20日)に1回分の30万円を支払いました。
経理担当者は、その契約が成立し債務が確定しているので短期前払費用に該当すると判断して、当期に300万円全額を損金経理しました。
後日、税務調査が入り、未払いの270万円は損金に算入できないとの指摘がありました。理由は以下のとおりです。

損害保険契約においては、契約を結んだだけでは債務が確定したとはならず、保険期間の経過にしたがって債務が確定すること
短期前払費用について法人税では、未払いのうち、まだサービスの提供を受けていない部分の金額までは損金算入を認めていないこと
A社はこの指摘に従い、修正申告を行うことになりました。

「債務が確定している」とは?
法人税法では、「事業年度において債務が確定している」とは、次の3つの条件をいずれも満たしている必要があります。

  1. 決算期末までに、その費用に係る債務が成立していること
    「債務が成立している」とは、契約が成立していることをいいます。この契約は、書面を交わす必要はなく、口頭でも成立します。

  2. 決算期末までに、その債務に基づいて具体的な給付原因の事実が発生していること
    契約に基づいて、注文した物品の納品やサービスの提供を実際に受けて完了していることが必要です。取引先からもらった納品書等で、納品日やサービス提供日を確認しておきます。

  3. 決算期末までに、その金額が合理的に算定することができるものであること
    納品された商品やサービスの代金が、期末までに確定し分かっていることです。
    以上の条件を満たし、請求書をもらっている場合は、未払金として計上し経費にすることができます。請求書がなくても契約書などから代金が明らかに把握できれば、経費にできます。