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中世ヨーロッパで、なぜ複式簿記は普及したのか?

2016年6月 6日

カテゴリ: コラム

現代簿記の基礎である複式簿記は、中世のイタリアで発明され、数学者ルカ・パチオリの著書「スンマ(算術、幾何、比及び比例全書)」(1494年)によってその仕組みが紹介され、たちまちヨーロッパの商人や学者の間に広く普及しました。

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基本は財産目録と3冊の帳簿
イタリアの豪商のもとで家庭教師をしていたパチオリは、主人が毎日、帳簿を付けることに興味を持ち、見よう見まねで複式簿記の仕組みを学び、それを著書「スンマ」(Summa)において紹介しました。
その仕組みは、まず「財産目録」を作り、次に「日記帳」「仕訳帳」「元帳」の3冊の帳簿に、理路整然とした仕組みによって、すべての取引内容を記帳するというものでした。
このような複式簿記の基本は、コンピュータ入力によって記帳することが増えた今日も、変わることはありません。

神の前に正当な利益を明らかにする
14~16世紀の頃は、商業で利益を上げることは、宗教的に好ましくない行為とみなされていました。
パチオリは、商人に、帳簿には十字架を付し、神の名を記すように助言しました。彼は、法の許す範囲内で、商人が適正な利益を追求することは正当な行為であり、その正当性を複式簿記(記帳)によって明らかにすることは、神の赦しを得るための神への告白であると考えたのです。また十字架を付すことで、商人の心の中に潜る悪意も逃げ出すという意味もあったようです。

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<パチオリが解説した複式簿記の仕組み>

  • 財産目録
    所有するすべての財産を、貨幣、宝石、銀など流動性の高い物から順に記録。最終的には個人の所有物や不動産を記録する(流動・固定の配列の考え方がある)。
  • 日記帳
    すべての取引について、何を、いつ、どこで、などの詳細を漏らさず記録する(記帳の網羅性)
  • 仕訳帳
    財産目録の項目を記入し、日記帳に記録された取引の詳細を、一つずつ整然と、借方と貸方のいずれにも記入する(借方・貸方の存在。複式と称される所以)。
  • 元帳
    借方と貸方に区切られた貢に、仕訳帳の取引を一つ記入するごとに、元帳の2か所(借方と貸方)に記帳する。最後に元帳残高を試算表に移して、借方と貸方の合計が一致するか確かめる。

複式簿記が普及した理由
記帳方法の一つである複式簿記が、中世ヨーロッパにおいて、商人のみならず教師や学者などの知識層にまで広く普及したのはなぜでしょうか。

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  1. 自分の間違いをチェックできる
    複式簿記の最大の利点は試算表にあるといわれています。借方と貸方が一致していることを確かめることで、商人は自分の帳簿の間違いをチェックすることができたのです。

  2. 取引を漏れなく記録できる
    普及した理由の2つ目は、複式簿記の理路整然とした仕組みによって、取引を漏れなく記録できたことです。
    また、毎日、適切に理路整然と記帳することが、商売に対する誠実さを表すことになり、このことが、数ある記帳方法の中で、複式簿記が「良い簿記」として「複式簿記を使う=道徳的に正当な仕事をしている」と認識され、広く普及する要因になったようです。

  3. 若者の精神を鍛え、創造力をつけさせる
    「イタリア式簿記の完全体系」(1751年)の著者ジョン・メイヤーは、「複式簿記の技術は、美しく、興味深いものである。若者の精神を鍛える手段として最適であり、機知と創造力を身につける良い訓練になるだろう。
    さらに、ものごとを深く正確に考えられるようになるだろう」と記しています。
    「複式簿記=良い簿記」という認識が広がり、複式簿記を学ぶことが、若者の知識を高め、品性を磨き、自己の人格形成につながるという考え方が広まったことも、複式簿記の普及につながったといわれています。

  4. 商品ごと、事業ごとの利益が算出できる
    複式簿記が、単式簿記より優れていたのは、商品ごと、事業ごとの利益を算出できることにありました。
    「複式簿記によれば、商品ごとの損益がわかるだけでなく、商売の中で注力すべきところとそうでないところを判断できる。これは商人に不可欠なことで、これがないと商売は勘と経験のみに頼らざるを得なくなる」(「会計士の託宣」1777年、ウォードハフ・トンプソン著)。

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今日においても、勘と経験だけに頼る経営から脱皮するためには、複式簿記による記帳と、その結果、算出された数字を経営に活かすことが王道といえます。