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どうする?従業員の「副業」

2024年10月21日

従業員に「副業をしたい」と言われたらどうしますか?政府は働き方改革の一環として副業・兼業(以下、副業)の普及を図るという方向性を示しています。副業についての自社の考え方や対応のルールを検討してはいかがでしょうか。

働き方改革の一環として副業できる環境は整いつつある

働き方への個人の価値観が変化する中、副業を希望する人が増加しています。その理由として、「収入を増やす」「今の仕事だけでは生活が厳しい」「スキルアップ」「自分が活躍できる場を広げる」等が挙げられます。また、就業の形態も正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営等さまざまです。政府は、働き方改革の一環として副業の普及促進を図り、「希望者が原則として副業を行うことができる社会にする」との方向性を示しています。厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」【令和4年7月改定)において、「原則、副業を認める方向とすることが適当である」として、副業に関する環境整備を行っています。具体的には、「モデル就業規則」を改定し、それまでの「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言を削除。新たに「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という副業についての規定を設けました。このような社会情勢を踏まえると、副業が当たり前となる社会は、すぐそこまで来ているといえます。

就業規則で副業に関するルールを整備しておこう

企業にとっても、従業員が副業を行うことにより「社内では得られない知識・スキルを獲得できる」「社外から新たな知識・情報や人脈を得ることで事業機会の拡大につながる」等の効果が期待される一方で、次のようなりスクが挙げられます。

●過剰労働や本業に専念できない
●業務上の秘密やノウハウが漏洩する
●競業により自社の利益が害される
●労務管理等が煩雑になるなど

副業自体への法的な規制はなく、裁判例では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である」として副業を認めています。例えば、日中は会社員として働き、夜間や休日に個人として仕事を請け負うことが可能です。その一方で、自社の業務への支障がある、業務上の秘密が漏洩するなど、企業の利益や信頼を損なうおそれがあるときは、副業の禁止や制限することを認めています。
したがって、例えば、就業規則に「原則として、従業員は副業を行うことができる」とした上で、例外的に副業を禁止、制限する場合の規定を設けるといった対応をすると良いでしょう。

具体的には「課長職以下の従業員のみに副業を認める」「家業を手伝うことは認める」「競合他社での勤務は認めない」「届出制とする」等の規定が考えられます。就業規則に副業のルールを規定しておかないと、知らないうちに従業員が副業をしていても止めさせることができないおそれがあります。就業規則は企業が独自に制定する、企業と従業員が守るべきルールですが、就業規則そのものがない中小企業も見受けられます。「副業をしたい」と従業員から申し出があったときに備えて、副業のルールを含めて、就業規則の整備を検討してはいかがでしょうか。

副業を認める場合は労働時間の管理が必要

副業を認める場合には、就業規則の整備のほか、以下の取り組みをすると良いでしょう。

(1)副業の内容を把握する

副菜を行う従業員の安全や健康に支障がないか、禁止・制限の条件に該当しないか等を確認することが望ましいでしょう。確認事項としては、副業先の事業内容、副業先での業務内容や労働時間、始業・終業時刻、労働契約の期間等があります。確認した内容については、従業員との間で「合意書」等を交わすと良いでしょう。

(2)労働時間を管理する

従業員が正社員やパート・アルバイト等として雇用される形で副業を行う場合、原則として、自社での労働時間と従業員の申告等で把握した副業先での労働時間を通算し管理しなければなりません。通算の結果、時間外労技術・ノウハウの流出×長時間労働X競争合意働が発生した場合には、割増賃金を支払うことになりますが、自社と副業先のどちらが支払うかはケースによって異なりますので注意が必要です。また、従業員の健康を確保する必要もあるため、状況に応じて、時間外・休日労働の免除や抑制を行うことが考えられます。副業の詳細、様式例等は下記の厚生労働省Webサイトを参考にしてください。

【副業時の年末調整と確定申告】

1.従業員が2か所から給与を受け取る場合
一般的に本業の勤務先を「主たる給与」の勤務先として年末調整を行います(従業員から「扶養控除等申告書」の提出が必要)。源泉徴収税額の計算は、「主たる給与」の動務先は税額表の「甲欄」、「従たる給与」の勤務先は税額表の「乙欄」で行います。「従たる給与」については年末調整ができないため、確定申告によって所得税の精算が必要です。

2.従業員が個人として仕事を請け負う場合
事業所得もしくは雑所得として確定申告が必要です(雑所得の場合は年間20万円以下であれば確定申告は不要)。