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その支出、本当に「修繕費」でいいの?

2024年7月15日

会社の資産、特に建物や機械などの固定資産は、継続使用により消耗するため修理・改良が必要になることがあります。そうした時の費用といえば「修繕費」が一般的ですが、税務上「経費」で計上できない「資本的支出」として資産計上が必要なケースもあるため、注意が必要です。

対比しながら理解しよう!「修繕費」と「資本的支出」の違い

「修繕費」のポイント

「修繕費」とは、社屋や工場の外壁塗装、機械や車両のメンテナンスなど、会社が保有する固定資産の通常の維持管理と原状回復にかかる支出のことを指します。修繕費は当期の費用として計上することができます。

修繕費に該当する支出の一般的な例

〈建物・設備関連〉
◎事業所や店舗、工場等の建物の修理費用
◎電気、空調、給水設備等の修理費用
◎エレベーターや設備機器の保守点検費用など

〈機械・備品関連〉
◎OA機器の修理、保守費用
◎バックアップデータの復旧費用
◎製造機器や装置のパーツ交換費用など

<車両関連>
◎事業用車両の修理費用
◎オイルやタイヤの交換費用など

「資本的支出」のポイント

修繕費と迷う支出として、「資本的支出」があります。こちらは支出により資産価値が付加される場合、あるいは耐用年数が延長される場合といった、資産の価値を増加させるための支出が該当します。資本的支出は固定資産として計上し、法定耐用年数の期間中に減価償却費(費用)として計上します。

資本的支出に該当する支出の一般的な例

◎社屋に耐震補強や防水加工を施したり、避難階段を取り付けたりする等、新たな機能を物理的に付加した際の費用
◎倉庫から事務所への用途変更をするために行う模様替えや改装等(壁紙やフロアの張り替え等)を実施した際の費用
◎機械の部品を、品質や性能の高いものに交換し、通常のものに取り換えた時の金額を超えた部分の費用

なお、固定資産の修理・改良にかかった支出を修繕費として費用計上できる場合については、以下のような基準もあります。あわせて確認しておきましょう。

●1回の支出額が20万円未満
●おおむね3年以内の周期の修理・改良
●修繕費か資本的支出かが明らかでない場合に、金額が60万円未満、または、金額が修理・改良を行った固定資産の前期末における取得価額の10%相当額以下
●継続的に支出金額の30%相当額と、修理・改良を行った固定資産の前期末における取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出として処理している場合

修理・改良を行う前に経費か資産計上かを検討しておこう

修繕費か資本的支出かの判断は、支出上の名目ではなく、その実質によって判断します。
そのため、修理・改良を依頼する会社から提出された見積書に「修繕費」などと記載されていても経費計上できるとは限りません。
1つの固定資産に対する1度の修理であっても、その内容を詳細に見ると、修繕費となるもの、資本的支出となるものが混在していることがあります。そのため見積書を発行してもらう際は、「作業一式」などではなく、修理・改良にかかる作業費用の明細がわかる書式にしてもらいましょう。いずれにせよ、修理・改良を行う時には、経費計上できるか事前の検討が必要です。決算に近い時期であれば、資本的支出となるような修理・改良は来期に行うことを検討しても良いでしょう。なお、税務調査では実際に修理を行った箇所を確認することがよくあります。修理箇所の作業前後の写真や、修理内容がわかる資料を保存しておくと良いでしょう。

災害で被害を受けた固定資産を修理した場合はどうなる?

災害により被害を受けた固定資産(被災資産)を修理した際の支出は、次のような場合には、修繕費として認められます。

●被災資産の原状回復費用
●被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水または土砂崩れの防止等のために支出した費用
●被災資産についての支出が、修繕費かどうかが明らかでない時は、支出金額の30%相当額(残額を資本的支出として処理している場合)

判断に迷うことが多い、修繕費の取扱い。ぜひ、当事務所までご相談ください。

【参考】
資産の取得時にも注意!その支出は「経費」になるか?

建物や機械装置、器具、備品等、減価償却が必要な資産(減価償却資産)は、原則として、取得した事業年度から法定耐用年数に従って、その取得価額を按分して、減価償却費として費用計上することになります。
ただし、次のような取得価額が少額な減価償却資産については、事業に使用した事業年度に取得価額の全額を費用として計上(損金算入)することができます。

●取得価額10万円未満の減価償却資産(使用可能期間が1年未満のものを含む)
●取得価額30万円未満の減価償却資産(中小企業者、農業協同組合等が対象。ただし、年間で合計300万円未満が限度)

なお、「取得価額」は、1台、1番、1組、1セットなど、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。例えば、応接セットはテーブルと椅子を1組として判定、カーテンやプラインドは1つの部屋で数枚が組み合わされて機能するため、部屋ごとにその合計顔で判定します。

※上記のほか、取得価額20万円未満の一括償却資産の3年間均明償却制度もあります。