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令和4年10月からの社会保険の適用拡大は政府の社会保障の支出の増加に伴い、1人でも多くの人に加入してもらうことが立法趣旨です。また、次代の日本を担っていく子ども・子育ての手当を厚くするため、その拠出金の財源としても欠かせません。さらに、コロナ禍で雇用調整助成金の支出が激増し、雇用保険料の年2回という異例の引き上げが行われます。
企業が福利厚生のために支払う費用のうち、法律で義務付けられているものを法定福利費といいます。具体的には社会保険料・労働保険料の事業主負担分のことで、下記6種類が該当します。
(1)健康保険料
(2)介護保険料
(3)厚生年金保険料
(4)子ども・子育て拠出金
(5)雇用保険料
(6)労災保険料
令和4年7月31日現在の各種保険の料率や料額は図表1を参照してください。
このうち、健康保険料と介護保険料については、地域、加入している健康保険組合などによって料率が異なります。ホームページなどで、料率.料額を確認しましょう。
健康保険料・厚生年金保険料の支払額は、標準報酬月額によって等級分けされており、各等級には1-6万円ほどの幅があります。
子ども・子育て拠出金は標準報酬月額に拠出金率を乗じて、雇用保険料・労災保険料はそれぞれ賃金総額(基本給と諸手当を合わせた額)に各保険料率を乗じて決定されます。
社会保険料 | 健康保険料 | 標準報酬月額の4.905%(健康保険)、0.82%(介護保険) (協会けんぽ•東京都の場合) |
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介護保険料 | ||
厚生年金保険料 | 標準報酬月額の9.15% | |
子ども・子育て拠出金 | 標準報酬月額の0.36% | |
労働保険料 | 雇用保険料 | 賃金総額の0.65%~0.85% (令和4年10月からは0.85%~1.05%) |
労災保険料 | 賃金総額の0.25%~8.8% |
※子ども・子育て拠出金と労災保険料は事業主だけの負担となります。健康保険料、介護保険料は従業員も事業主と同額を負担します。雇用保険料は、雇用安定事業、能力開発事業のための保険料が事業主のみの負担となっているため、従業員負担は賃金総額の0.3%または0.4%です。
社会保険は、令和4年10月に従業員101人以上、令和6年10月に従業員51人以上の企業を対象に適用拡大が行われます。
適用拡大の対象となった企業では、
①所定の労働時間が週20時間以上
②月額賃金が8.8万円以上
③2か月を超える雇用の見込みがある
④学生ではない
という4つの条件を満たす、すべての従業員が社会保険の加入対象となります。
政府は将来的にすべての勤労者が社会保険に加入するよう制度改革を進める方針で、今後、従業員規模や月額賃金に関する条件がさらに改められる可能性もあります。
~3/31 | 4/1~9/30 | 10/1~ | |
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一般の事業 | 6.0/1000 | 6.5/1000 | 8.5/1000 |
農林水産・清酒造の事業 | 7.0/1000 | 7.5/1000 | 9.5/1000 |
建設の事業 | 8.0/1000 | 8.5/1000 | 10.5/1000 |
※園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については一般の事業の率が適用されます。
令和4年には、2段階にわたる雇用保険料の引き上げが行われます。その理由となるのが、コロナ禍で特例措置が設けられた扉用調整助成金です。
令和2年4月1日の特例措置開始から令和4年6月10日までの間に、支給が決定した分だけでもおよそ5.7兆円もの支出になり、財源の確保が喫緊の課題になっているのです。
改定後の料率は、過去最高というわけではありませんが、失業率の高かったITバブル崩壊後の水準に近づきます。
法定福利費は、従業員が多ければ多いほど支払額が多くなります。一見すると労働者を雇用するときのコストに思えますが、機械化や合理化、IT化、DXの推進によって従業員の労働生産性を高めることで、実質的に法定福利費の負担を軽減することができます。
また、法定福利費は会社の売上や利益ではなく、従業員の給与と連動しています。賃金は、最低賃金の引き上げ、人材の確保などで上昇する可能性があります。その上昇分を賄うには、業績を伸ばして、限界利益(粗利)を増加させる必要があります。
法定福利費の上昇が予想される今こそ、労務について見直す機会です。貴社の現在の経営状況と、法定福利費の負担額などを考慮して、この機に労務の最適化を図りましょう。
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