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"経営者保証のない融資"に向けた3つのポイント

2020年5月11日

中小企業の融資では、経営者個人による保証(経営者保証)をつけることが慣行です。しかし、経営者保証が重荷となって、新事業展開、事業承継、事業再建が進まないなどの弊害が問題視され、経営者保証のない融資を目指した「経営者保証に関するガイドライン」が公表・運用されています。経営者が、同ガイドラインへの理解を深めることで、経営者保証のない融資の可能性が開けます。

「経営者保証ガイドライン」は、経営者の個人保証について、中小企業・経営者・金融機関の自主的なルールを定めたもので、平成26年2月から運用されています。
昨年12月に金融庁が公表したデータによれば、民間金融機関における「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」は21.4%となっており、実績は多いとはいえませんが、経営者保証のない融資の道が開けつつあります。
※「経営者保証ガイドライン」の対象は、新規融資のほか、既存融資の保証の見直しや事業承継時の対応、事業再生や廃業に伴う保証債務の整理手続きも含まれます。


企業・経営者に必要な対応3つのポイント
「経営者保証ガイドライン」では、経営者保証のない融資に向けて、企業と経営者に次の3つの対応を求めています。

  1. 会社と経営者の関係を明確に区分・分離する。
  2. 財務基盤を強化する。
  3. 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等によって経営の透明性を図る。

(1)会社と経営者の関係を明確に区分・分離する
経営者が自律的に会社と個人の資産・経理を明確に区分することや、資金のやりとりを社会通念上適切な範囲で行うことなどが求められます。「会社から経営者へ事業に関係のない貸付けをしない」「私的な飲食代やゴルフプレー代などを会社経費と混合しない」などがあげられます。

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(2)財務基盤を強化する
「会社の資産と収益力のみで借入金の返済が可能である」と金融機関が返済能力を判断できる財務状況が求められます。
そのため、業績向上を図り、利益を確保し、内部留保を潤沢にする努力を継続して行こなうことで、自己資本比率を高めて財務力を強くする必要があります。

(3)財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等によって経営の透明性を図る
日々の正確な会計処理に基づいた信頼性の高い決算書によって「会社と経営者の資金関係が明確に区分されていること」と「自社の経営状況」を経営者自らが説明して、金融機関からの信用を高めましょう。
説明は、年に1回の決算時だけでなく、月次決算によって作成された正確な試算表、資金繰り表などを毎月開示しましょう。

税理士等の検証によって開示内容の信頼性が高まる
3つの対応が充足されていることや開示された情報の信頼性を向上させるため、「経営者保証ガイドライン」では、税理士等の外部専門家による検証とその結果の報告を求めています。会計事務所による月次巡回監査や税理士法第33条の2による書面添付の実施なども検証と結果報告の一つと考えられます。

適時・正確な決算書を作成する経営者に融資の道
金融機関は、上述の企業の取り組みを評価し、融資にあたり経営者保証の必要性の有無を検討することになります。3つの条件すべてを満たしていない場合でも、将来的に条件を満たすことを示せる会社であれば保証を求めない例もあります。
月次決算を行い、会計事務所の指導を受けて適時・正確な決算書を作成し、経営計画によって経営に取り組み、現況を金融機関に開示・説明する企業、いわば真摯に経営に向き合う企業が評価され、各金融機関の判断により経営者保証のない融資が受けられる可能性があります。

<参考事例>
建設工事及び建材卸売業のA社は、近年の建設ラッシュに伴う受注工事の増加によって、短期資金の借入れと経営者保証ガイドラインに則った経営者保証のない融資についてB銀行に相談した。
B銀行は、A社の以下の点を検証し、新規融資にあたり経営者保証を求めないことにした。

  • 中小会計要領に則った決算書を作成し、かつ会計事務所による検証が行われていることなどによって、会社と経営者の区分・分離が図られていること
  • 増収基調が続き、内部留保が確保されており、財務内容が良好であることから、償還において問題がないこと
  • 四半期ごとに決算書の提出があり、業況が継続的に確認できること

B銀行は、A社の業況の把握に留まらず、経営管理体制の強化を助言していく方針である。
※「"経営者保証に関するガイドライン"の活用に係る参考事例集」(金融庁)をもとに作成。

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