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知らないと損する「相続と不動産の基本」

開催日:2026年7月25日

category : セミナーレポート

2026年7月25日(土)、T&A税理士法人主催のセミナー「知らないと損する 相続と不動産の基本」を開催しました。
講師は栢沼博史税理士が務め、相続財産の中でも特に判断が難しい「不動産」をテーマに、評価方法の基本から実際に起きた相続トラブル、実家を売却するタイミング、令和8年度税制改正まで、具体的な事例を交えながら解説しました。

不動産は「金額がわかりづらく、分けづらい」財産

相続財産には、預貯金、不動産、株式・投資信託、生命保険、事業用資産、自社株、借入金などさまざまなものがあります。その中でも今回のセミナーでは、不動産に焦点を当てました。

預貯金であれば残高、株式であれば時価を確認できますが、不動産は「今いくらなのか」がすぐには分からず、さらに相続人が複数いる場合には、現金のように簡単に分けることもできません。栢沼税理士は、不動産について「金額がわかりづらい」「分けづらい」という二つの特徴を挙げ、実家一つだけを所有している家庭でも同じ問題が起こり得ると説明しました。

「売れる金額」と「相続税評価額」は同じではない

実際の相談事例をもとに、不動産の売却価格と相続税評価額には差が生じることがあると解説しました。

土地には、実勢価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額など、目的の異なる複数の価格があります。相続税の計算で用いる評価額が、そのまま市場で売却できる金額になるわけではありません。

この違いを把握しないまま遺産分割や納税計画を進めると、「想定していた財産価値と違う」といった問題につながる可能性があります。具体的な事例を通して、それぞれの価格の役割と、不動産を評価する際の注意点が紹介されました。

自宅の評価を大きく下げられる「小規模宅地等の特例」

土地の相続では、一定の要件を満たした場合に評価額を大きく減額できる「小規模宅地等の特例」も重要です。

亡くなった方の自宅の土地を配偶者や一定の親族が相続する場合には、一定の面積まで評価額を80%減額できる場合があります。また、アパートや駐車場など貸付事業に使用している土地についても、一定の要件のもとで50%減額できる場合があります。

一方で、適用要件は複雑です。栢沼税理士からも、自宅だから必ず80%減額できるわけではなく、個別の状況について慎重に確認する必要があることが強調されました。

実際の事例から考える、不動産相続のトラブル

不動産相続では、財産の金額だけでなく、家族それぞれの認識やこれまでの関わり方が、話し合いを難しくすることがあります。

介護や不動産の管理を担ってきた人が「自分が引き継ぐのが自然だ」と考えていても、ほかの相続人が同じように受け止めているとは限りません。生前に意思を共有していなければ、相続が始まってから、それぞれの考え方の違いが表面化することもあります。

また、不動産を公平に分けるために共有名義とすると、その場では話がまとまりやすい一方、将来の売却や活用、持分の整理が難しくなる可能性があります。共有者が増えるほど、全員の意見をそろえることも難しくなります。

実例を通して、「とりあえず平等に分ける」ことが、必ずしも将来の安心につながるとは限らないという点を確認しました。不動産を誰が使い、誰が管理し、将来どうするのかまで見据えて決めることが重要です。

実家は相続前に売るべきか、相続後に売るべきか

「誰も住む予定のない実家を、相続前に売った方がいいのか。それとも相続後まで残しておいた方がいいのか」というテーマについても、双方のメリット・デメリットが整理されました。

相続前に売却すれば、現金になるため相続人で分けやすくなり、誰も住んでいない住宅の維持管理からも解放されます。一方、売却後の現金はそのまま相続税の対象となるため、不動産として相続する場合と比べて相続税負担が増える可能性があります。

反対に、相続後まで不動産として保有すれば、不動産の相続税評価や小規模宅地等の特例によって相続税負担を抑えられる可能性があります。しかし、相続時に財産を分けづらいことや、相続後の売却手続、相続が発生するまでの維持管理といった負担も考えなければなりません。

このテーマについて、セミナーで示された結論は明確でした。

「正解はない。税金は重要な要素だが、税金だけでは決められない」

税負担だけを比較すれば有利な選択が見える場合でも、維持管理の手間、相続人の生活環境、家族の感情や今後の利用予定まで含めれば、最適な判断は家庭によって異なります。栢沼税理士も「それぞれ家族の形で何をメリット、デメリットと感じるかは違う」とし、家族で事前に話し合う重要性を伝えました。

令和8年度税制改正 ── 貸付用不動産に「5年ルール」

最後に、令和8年度税制改正として、貸付用不動産の評価方法の見直しについて解説しました。

不動産には、市場で売買される価格と相続税上の評価額に差が生じることがあります。さらに貸付用不動産では、所有者が自由に利用・処分できないことなどを踏まえ、相続税評価額が低くなる仕組みがあります。その価格差を利用し、相続直前に貸付用不動産を購入して相続税・贈与税を大幅に圧縮する事例への対応として、評価方法が見直されることになりました。令和9年1月1日以後の相続・贈与から適用される内容としてセミナーで紹介されています。

いわゆる「5年ルール」により、相続直前の駆け込みによる不動産対策は従来より難しくなります。一方、一定期間を経過した不動産については従来の評価方法が適用される仕組みであるため、栢沼税理士は「早めの対策がより重要になる」と説明しました。

今回のセミナーを通じて繰り返し浮かび上がったのは、不動産相続は税金だけを計算しても答えが出ないという点です。

評価額を知ること、税制や特例を理解することはもちろん重要です。しかし、不動産には「誰が住むのか」「誰が管理するのか」「将来売るのか」「どう分けるのか」といった、家族ごとに異なる問題があります。

だからこそ、相続が起きてから初めて考えるのではなく、元気なうちに財産の状況を把握し、不動産を将来どうしたいのかを家族で共有しておくことが大切です。その準備が、税負担だけでなく、相続後の手続きや家族間のトラブルを減らすことにもつながります。

T&A税理士法人では、相続税対策・相続税申告をはじめ、事業承継や法人税務など、さまざまなご相談を承っています。相続や不動産について気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。

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