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お茶一杯から始まった『はとバス』の経営改革セミナー

開催日:2017年4月29日

category : セミナーレポート

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11月16日(水)、「経営支援セミナー2016」が開催されました。今回は第1部、2部に分かれ、2つのセミナーを開催。多くの中小企業経営者にお集まりいただきました。


第1部は「スキャナ保存制度」についてのセミナーです。10年前に制定された「電子帳簿保存法」が、平成27年に改正、緩和されたことについて詳しく解説するセミナーです。実は平成17年に電子帳簿保存法が施行された後も、電子データを保存するための要件が厳しく、要件を満たしてスキャナ保存を利用している企業も百数十件にとどまっているのが現状でした。今回の法改正に伴って、いったいどのくらいの規制が緩和されたのか、スキャナ保存を利用するメリットとリスク管理などについて、企業の立場に立った視点からお話しいただきました。

経営者の皆さんが気になる一番の点は「いったいどのくらい緩和されたのか」「自社でスキャナ保存制度を利用する利点はどんなものか」の2点だったのではないでしょうか。
具体的にどのような法改正がなされたのか、というスキャナ保存の概要の項目では、真剣にメモを取る姿が多くみられました。やはり一番は「3万円以下の領収書」も今回スキャナ保存の対象になったことが大きな違いになり、スキャナ保存がより身近に感じられる部分だったようです。さらにスキャナ保存によるメリットについて、監査分野、税務分野、保管・運搬コストの削減までは想像がつきやすいのですが、最後のリスク対応のメリットについては注目が集まりました。

スキャナ保存制度の一番の懸念として、皆さん「リスク管理」を挙げていました。データの改ざんなどスキャナ管理のリスクばかりに気を取られますが、実はスキャナ保存制度はリスク管理の点においてもメリットがあるというお話です。これは、皆さんの心配どころが一気に安心材料へと変わった部分ですから、非常にインパクトがあり、それぞれスキャナ保存の導入について、ぐっと身近に感じられたのではないでしょうか。

次のセクションでは具体的にスキャナ保存制度を活用する要件や業務の流れについて解説がありました。領収書など紙でのやり取りとは大きく違い、チェック制度、タイムスタンプ制度など聞きなれない用語が続きます。この辺りは講師の方も慎重に、メモを取る時間を十分に取りながら1つ1つ丁寧に解説していき、会場もペンで記入するサラサラという音が続きました。先ほどまでの和やかな雰囲気とは違い、皆さん良い緊張感をもって真剣に「今日聞いた成果を持ち帰るぞ!」という気概が感じられ、こちらも身が引き締まるような思いでした。

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さらに講義は続きます。ここからは具体的な例を挙げ、スキャナ保存導入の際の流れを紹介していきます。
解かりやすいイラスト付きの冊子に沿って紹介していくので、多少複雑な部分でも2,3の質問の後、問題なく理解していただけたようでした。特にスマホやアイパットで出先から撮影した領収書を、画像データとして本社に送ることができるなどのあたりでは「すごい!」「なるほど!」など参加者の皆さんから思わず声が漏れており、会場は経営支援セミナーの醍醐味ともいうべき活発でフランクな雰囲気に包まれます。このような雰囲気になると参加者と講師の距離が縮まり、質疑応答のしやすい活発なセミナーになり、私もレポートを忘れセミナーに集中してしまうこともあります。最後にスキャナ保存の申請手続きについての流れや、国税関係帳簿書類の保存について注意するべき点などに触れて終了となりました。

今回の経営支援セミナーは、テーマが固めであったにもかかわらず、「いつかは自社に取り入れたい」と思う事柄でもあったのか、活発な意見交換や質問などが飛び交う活気あるセミナーとなりました。多くの皆さんの本音として「真剣にスキャナ保存制度導入に取り組めば、業務がスムースになるだろうけれども、内容の複雑さからなかなか手を付けられない」という気持ちがあったように見受けられました。セミナー後に感想を伺うと「思ったより複雑ではなかった」「帰ったらさっそく自社に取り入れを検討したい」など前向きな意見が多数を占め、今回の経営支援セミナーのテーマが皆さんのお役に立てたのではないかと思います。

第2部は企業経営論のセミナー「お茶一杯から始まったはとバスの経営改革」を、元はとバス代表取締役社長 宮端 清次さんにお話しいただきました。

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宮端清次さんは平成10年に破綻寸前の「はとバス」の社長に就任し、たった4年で見事に再建された敏腕経営者です。はとバスの経営を任されたとき、4年連続赤字継続中で破綻寸前。そのような状態から引き継いだ経営の中、一番最初に着手したのは「意識改革」「徹底した合理化」「サービス向上」という基本方針を打ち出すことと、リストラはせずに昇給ストップなどの緊急対策を講じること。厳しい判断が続いたといいます。

そんな中、宮端さんは自ら現場に出、声に耳を傾け、現場を大切にした経営に舵を取っていきます。一番上にお客様、次に乗務員やガイドなどのスタッフなどがきて、一番下で社長、役員が従業員を支える「逆ピラミッド」の形を作ったといいます。現場のスタッフを大切にし、働きやすい環境を作り、賃金カットなどの負担を別の形で還元していく。休憩所などを整備し、やりがいや達成感を感じられる職場作りをしていったそうです。

宮端さんははとバスの経営を立て直すために、月に3回奥様とはとバスに乗車し、ツアー参加者の生の声や、実際に自分で感じたことなどを次々に生かしていきました。「安かろう悪かろう」を徹底的になくすためだそうです。まずは利用者の目線で。これはどんな経営にも通じる基本的なことだと思います。セミナーに参加されている経営者の皆さんは非常に熱心にうなずいたり、メモを取ったりされていました。

そんな中、会議でガイドの方から「ツアーで出すお茶の葉の質が落ちて肩身が狭い」との意見が出され、経費削減の一環でサービスの質を落としているという事実に気づかされます。その時まで経費削減に条件を付けることを忘れていた宮端さんは、現場のガイドさんの一言によってこの事実に気づくことができた、現場の声というのはなによりも重要視するべきだということを改めて再確認できたそうです。

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今回のセミナーでは経営戦略の一環としての「経費削減」のお話が主でしたが、長期的に見て削減してはならないものがあること、大切なのはむやみに経費を削減することではなく、投資するものとその効果、つまり費用対効果を考えて効果があるものに関しては投資を惜しまないことなどのお話が非常に参考になりました。さらには、賃金カットを断行した後、経営が上向いた年に従業員の家族にあてて商品券1万円と宮端さん直筆の手紙を贈ったくだりも、経営者と従業員の信頼関係が、いかに会社経営に大きな影響を及ぼすかについても目から鱗が落ちるような気持ちで拝聴させていただきました。

参加者の皆さんも盛んにメモを取る姿が見られ、終了後「思った以上に良かった。経営者の在り方について考えさせられた」などの声も多く聞かれ、非常に有意義なセミナーになりました。ありがとうございました。

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