開催日:2020年12月26日
category : セミナーレポート11月12日(木曜日)経営支援セミナーが開催されました。今回は業種の違うお三方の講師をお招きして、それぞれの経営戦略、会社の危機をいかに乗り切ったかなど興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。
【プログラム】
まずはは、最近何かと話題の「マイナンバー制度【実践編】」です。このセミナーは経営者や、これから会社を興す参加者にとってはぜひ聞いておきたい内容だと思います。お話いただくのは当T&A三宅会計事務所の大谷蘭子です。
まず、知っているようで知らなかった「マイナンバー制度」を詳しく解説していただきました。マイナンバー制度が施行されることで国民の生活はどう変わるのか、どんな点が便利になるのかなど、今まで「何となく」知っているようなつもりになっていたマイナンバーも、案外よく知らなかったんだと実感しました。
さらに参加者の皆さんが一番興味のある、事業者向けのマイナンバーの話。このお話が始まったときには参加者の皆さんが身を乗り出して真剣に聞き入っていました。事業者として従業員のマイナンバーは収集する必要があるのだろうと漠然と思っていましたが、それに加え従業員の家族、社労士や税理士など報酬の支払先、配当を払う必要のある株主など、マイナンバーの収集対象だけでも多岐に渡ります。しかも事業者の責任において厳重に管理する必要があり、漏洩した場合には罰則も設けられているそうです。会場内にはメモを取るサラサラという音が切れ間なく続きます。大谷さんはメモを取る時間を十分にとりながらゆっくりと解説してくれました。
従業員や家族のマイナンバーを記載する書類についてや、その書類の保管期間、安全管理、マイナンバーの転記や印刷についてのお話などは、こういった機会に専門家から説明を受け、リスクについても熟知していないと社員も会社も守ることができないと痛感しました。マイナンバー制度導入にあたり企業、特に中小企業はシステムの改善や改革のためのコストが重くのしかかります。スムーズな切り替えに向けての注意点や、絶対に怠ってはいけないことなどを念頭に置くだけでも相当な負担軽減となるのではないかと思いました。
参加者の皆さんは最後までメモを取りながら熱心にお話に耳を傾けていたようです。セミナーに参加した皆さんは自信を持って新制度に挑んでいけるのではないでしょうか。
次のセミナーは「あるといいなをカタチに!」というセミナーで、講師は一般社団法人「なれっじネットワーク」代表の向井さん。
なれっじネットワークは在宅の利用者に訪問看護サービスを提供する法人で、市場の絞込みを行い、レアな専門性の高いスタッフを雇用することなどにより順調な経営を続けてきたそうです。しかし、訪問看護に加え、新しくデイサービス事業を展開することになり、それまで信頼しあって仕事をしてきたスタッフと信頼関係が揺らぎ、大きな危機が訪れました。セミナーでは人材をいかに生かすか、どのように信頼関係を構築していくかなど興味深いお話をいただきました。
訪問看護に加えデイサービス事業に向けて事務所を拡張したり、申請の手続きをして向井さんが不在がちになると、それまで水面下にあったスタッフの不満や不安が放出。続いて激務と職場のストレスからか、頼りにしていたスタッフが長期間ダウンしてしまいます。さらに、信頼していた訪問看護の主任の無責任な行動により、向井さん自身がスタッフを全く信頼できなくなってしまうという大きな危機が訪れたそうです。
それらの危機をいかにして乗り切ったか。逆効果だった対応など失敗談も含めながら、新事業のデイサービスが順調に動き出すまでのたくさんのエピソードを楽しく聞かせていただきました。
向井さんのお話には危機に直面せずとも、企業経営において忘れてはならない教訓が各所にちりばめられています。職場といえど基本的にはスタッフ一人一人との「人間関係」であり、いくら素晴らしい理念でも振りかざしたり押し付けたりしない。どんなに素晴らしいスタッフでも企業と同じ方向を見ているわけではなく、またそれが当たり前なこと。
女性らしい細やかな対応もすばらしいですがそれ以上に、スタッフの適材適所、信頼して一任し役割を与え、スタッフの不満や不平には真摯に耳を傾ける、こういった姿勢が企業の一番の財産である「人材」をより良く生かし、順調な経営を続ける糧になっているのだと実感することができました。
「ドラッカーに学ぼう!経営戦略編」では「経営学の巨人」といわれるピーター・ドラッカーの経営学に則して、企業の成長には欠かせない「利益」の本質と、長期的に見た企業の成長のお話を聞かせていただきました。
セミナーは、利益の本質について「利益を大きくすること」を目的にしてはならず、リスク(不定確性)への対応をし、「確実に根拠ある最小限度の利益を死守し続けること」が本当の企業成長につながるという、実際の企業経営の常識を覆す内容から始まりました。企業にとっての利益とは酸素と同じようになくてはならないものであるが、酸素も体に取り込みすぎると健康被害を起こす。利益が出すぎると顧客がコストを負担せねばならなくなり、結果的に他社に顧客を奪われることになりかねないといいます。参加者の興味をぐっと惹きつけたのがわかりました。
さらに興味深かったのは、経営をマラソンに例えた話です。目先の利益にとらわれすぎてはいけない理由として、経営はマラソンで利益はラップタイムだというのです。ラップタイムにとらわれすぎてマラソンを完走できずにリタイアしてしまえば意味がありません。長距離のマラソン(長期的な経営)を通して得られたキャッシュフローにこそ注目するべきということでした。この例えには大きくうなずかれる参加者も多く、私自身も非常にイメージしやすい、思わずなるほど!と納得してしまう内容でした。
他にも中小企業が経営戦略として組み込むべきいくつかのニッチ市場を挙げ、中小企業が生き残っていくためどこに着目していくかという数々のヒントをいただきました。細部まで想定した緻密なアクションプランを作り、目標=今日の成果 ゴール=将来 に置き、事情が変われば柔軟にプランを変更し修正していくことが大切だとおっしゃいました。
セミナーの最後に講師の方がおっしゃった言葉に「正しい答えを探そうとするのではなく、正しい問いを発するのが大切。」というのがありました。私はこの言葉が非常に印象に残っています。正しい問いを発し続けていくことは簡単ではないけれども、企業経営の大きな理念の一つになる野では、と思います。企業成長のためのヒントが数多くちりばめられた大変有意義なセミナーでした。
<セミナーの感想>
今回の経営支援セミナーでは3人の講師の方に、それぞれ違った視点で会社経営のノウハウを教えていただきました。全てのお話に実際に講師の方が経験した実体験が盛り込まれ、失敗談なども交えながら時々笑いが出るような、和やかな雰囲気の中での講習会でした。やはり経営者の方々の実際に体験したエピソードなどは、聞いていて非常に臨場感があり、それぞれ自分の立場に置き換える場面などもあるので、参加者それぞれの大きな力となったのではないでしょうか。
参加者からは「経営のヒントがたくさん詰まっていた。」「次の支援セミナーにも必ず参加したい。」などの声がたくさん寄せられました。中には、「あと2倍も3倍も、もっとたくさんお話を聞きたい!」など嬉しい要望も。それだけ有意義な経営支援セミナーであったのだと思います。多くの参加者達とともに大変充実した時間を過ごせました。